腰で声を捉えること
「腰で打て」「腰で投げろ」「腰を入れろ」など、腰を含めた言葉はたくさんあります。「腰を据える」ことがなくては、ものごとはうまく成し遂げられません。「腰が引ける」とか、へっぴり腰、逃げ腰であるとうまくいかないでしょう。
人間の活動の中心は腰にあります。腰を据え、腰で歌わなくては、歌も腰くだけになってしまうのです。
のどやあご、口、舌に力の入っているときは、しぜんに体をうまく使えるときの状態を忘れています。
腰から声の出るイメージを思い浮かべてください。そのしぜんのつながりでの働きを邪魔しないように訓練していくのがヴォイストレーニングと言えましょう。
管楽器は、音色をラッパ口の方で形を変えたり、大きさを変えて調節するわけではありません。同じようにヴォイストレーニングでも、上半身、胸から上にいくほど動かさないことです。
肩やあごがあがるのはよくありません。顔も前に出ないように首を真っ直ぐにします。そうしないと声が邪魔されると思うことです。
野球の打者にたとえると、ボールが捉えられないからと、手先でバットを泳がせていたらどうなります。仮にボールが捉えられてもヒットにはなりません。ストライクゾーンのあらゆるボールを想定しての何百回もの素振りで腰がピタッと定まるだけの筋力や感覚がついたとき、バットはイメージと寸分違わず円を描き、ボールは空へ吸い込まれていくのです。
ヴォーカルも然り。体が動いてしぜんに息が出る、息が出たらしぜんと体が動くまで、イメージづくり、体づくりに励むことです。
・正しく導くイメージが大切です。
・急にできることではないので、力で固めないようにしましょう。
[腰を感じる]
息を吐いて、お腹に空気を入れます。そして、息を吐きます。
そのときに、骨盤が少し前にいくように感じてください。
お腹を前につき出すのでなく、腰、骨盤を前に入れるのです。
お尻をきゅっとつぼめる感じです。
わからない人は、椅子に浅く腰かけ、背筋をピンと伸ばし、胸をやや持ち上げてください。
そのときの腰の感覚を覚えておきます。
次に、両手を思いきって上に伸ばしてみましょう。
腰の周辺にちょっとした緊張が感じられたでしょう。その感じも覚えておいてください。