基本は、声の線を捉えること
基本というのは、一般的には、型のことです。型を何度も繰り返し学んでいくと、実が伴ってきます。ヴォーカルとしてのフォームが身についてくるのです。その充分な基本の力の上に、歌いこなすという応用の力がつきます。
歌うということは、応用の力の上に成り立ちます。自分の基本の力の上に、状況に応じて用いられる力、最大の力を発揮させていくのが、すぐれたヴォーカリストです。
これは、歌によっても、歌う場所や客層によっても違います。歌う人の根本にあるものはイメージと心です。これが基本的な声です。それを使う技術の上に、自分の世界をつくり上げていくのです。
力といっても、これは強引な力ではなく、理にかなった力、自分の体が最も使いやすいフォームにおいて自在に発揮される力のことです。ですから、力そのものよりも、フォームやタイミング、躍動感・声と体が一つになる感じを重視することです。
これを一言で言うと、声の線を大切にするということです。フォームが整っており、そこに声を捉え、うまく送り出すタイミングが兼ねられれば、声の芯から声の線が出てきます。この線を自由に感情のおもむくままに表現できて、初めて歌が歌として聞こえるのです。歌は声の線に、体の線上にのるのです。
[声の線を感じる]
ゆったりと何回か深呼吸したあとに、静かにしぜんにその息が声になるようにしてみましょう。
弱い声で構いません。声にするのではなく、声になるのを待つように、ゆっくりと静かに呼気に身を委ねるのです。発声の震えが空気を振動させるのを待ちます。
[ハァ----- ----- -----]
このとき、胸のまんなかに手をあてて、振動を感じましょう。
この振動が空気を伝わり、物理的にも心理的にも相手の胸を震わせるのです。