◯表現から学んでいく
歌うために、音楽から入らず、語りから入ることをお薦めしています。メロディがついても、そこに表現力、説得力がなくては伝わらないからです。心に残らないということです。
極端に言うと、表現があれば音声がなくてもステージは保てるのです。表現として与えなくては、誰も見向きもしてくれないということです。
声でのメリハリやフレージングの方が、音楽の三要素(ことば、メロディ、リズム)よりも基本です。
誰かのステージで感動して歌い手になりたいと思ったあなたが、汗一つかかない退屈なトレーニングをしているとしたら、その先に何が見えますか。
毎日のトレーニングで本当に何か大きなもの、世界に通用するものに結びついているものを手に入れているという実感がありますか。
誰かのステージを見て、自分もそのようになりたいと思ったら、常にその原点を省みるべきです。ステージから始めるというのではなく、そこで実感したパワー、魅力、緊迫感、それと同じ密度のものを、今やっているトレーニングのなかに持ち込むことです。そういうことが味わえるようなトレーニングを目指してください。
トレーニングの多くは、自分のベストを引き出せない反復練習になっています。ここをはっきりと理解し、トレーニングを進化させることです。
枝葉ばかりを伸ばすのでなく、幹を太く強くし、たくましく伸ばしていくことです。
プロとは、いつもアマチュアのベストを出せる人です。それは年月だけの差ではありません。経験の質、トレーニングのやり方の差です。いつも、自分のベストを目指しトレーニングしてきた人が、常にベストのベストを出せるようになるのです。