声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
プロ、トレーナーも含め、トップレベルのヴォイトレ論を展開します。

さらに学びたい人は、一流になるための真のヴォイストレーニング https://vccarchive.hateblo.jp/

ブレスヴォイストレーニング研究所 https://www.bvt.co.jp/
 

○胸にひびくところから、始めよう

 

 「ブレスヴォイストレーニング」では、胸部の共鳴をマスターするなかで、

「声の芯」や「声のポジション」というイメージを用い、

身体から声の出る感覚をつかまえます。

 

極端にいうと、喉から上(首や顔)がついていようがなかろうが、

声は出るし、ことばは話せるというイメージです。

つまり、喉に負担をかけないトレーニングによって、

喉を開いた状態の発声を覚えさせるのです。

 

このとき、喉から胸に押しつけずに、身体(フォーム)を利用して、

深い息で深い声を胸部に共鳴させていれば、

喉もとよりも下で発声できるようになってきます。

 

肩や胸から上の筋肉は弛緩し、喉に力を入れなくても声は出ます。

上半身の力が抜けるのです。声がしぜんに頭部にひびいてくるのです。

あとは、そのひびきをせりふや歌へ応用するなかで調整すればよいのです。

 

○共鳴していれば悪声でも魅力的

 

小さな声でも、そこに感情表現やその人の音楽的センスがうまく表れているのなら、

声の使い方がよいのです。声の共鳴を調節することはできますが、

共鳴そのものを直接、私たちはつくり出せません。

共鳴をうまく利用するためには、まず身体や息のコントロールが充分にできるかが、

問題となるのです。

 

逆にいうならば、身体や息のコントロールがうまくできていると、

声はしぜんと共鳴するのです。

それを、ヴォーカリストなら、音楽的に調整すればよいのです。

 

声のプロにも、声の悪い人はたくさんいます。

それがどうして心地よく聞こえるかというと、声としてこなれているからです。

充分に共鳴をして、それを完全に身体でコントロールしているからです。

 

プロでも、生の声のよさ、発声のよさ、声の使い方のよさ、

せりふ、音楽のくみたてのよさなど、それぞれの勝負所が違います。

 

歌は、総合点で問われるのですが、ヴォイストレーニングは、

確実に、まず声から、差をつけようということなのです。

 

たとえば、声の終止で、小さくとも、ひびきが集まっているかなどでも、チェックはできます。

ブツと切れたり、かすれたりするのは、共鳴のコントロールを失っているのです。

 

○パワーの差は、共鳴の差から

 

頭部に共鳴させるためには、肩や首、喉、舌などの筋肉の余計な力を抜かなくてはなりません。

身体や息をコントロールできない人はうまく共鳴させられません。

泳いだことのない人に力を抜いて泳げといっても無理でしょう。

 

しかし、共鳴させることは誰にもできます。力をできるかぎり抜いて、

息をわずかに吐き、どこにも力を入れずに「あー」と言ってみてください。

弱々しくても、その声はかなり遠くまで伝わります。

蚊の鳴くような音であるにもかかわらず、

よく伝わるのは共鳴しているからです。

 

逆に、どなっても喉をしめたような声で力を入れていては、

共鳴しないので思ったほど遠くに聞こえないのです。

力を入れて歌っている気持ちとは裏はらに、

そういうときの声にはノイズが多くなり、

マイクにうまく入らなくなります。

結果として、カラぶかしに終るのです。

 

なぜ、マイクに入って聞こえる声のパワーが違うのかというと、

この共鳴の差であるといえます。

ただ、せりふや歌での最終的な答えは、感覚の鋭さとそれを可能とする身体の差に加え、

音楽的想像力、イメージの構築力の差なのです。

 

○共鳴

 

音が空気中を伝わるのは、音の波、つまり音波となるからです。

音の出てくるところは音源です。

ピアノでは、鍵盤を弾いたとき、

ピアノの中でその小ハンマーが弦を叩いて、音を出します。

バイオリンは弦を弓ですります。

トランペットは、マウスピースがついています。

ヴォーカリストで、その役割を果たしているのは声帯になります。

 

この声の原音(喉頭原音)は、鈍く音楽に使いようもないのですが、

これを楽器の本体である身体(声道)が共鳴させます。

そこで美しい音色が出るわけです。

 

ピアノも、バイオリンも、トランペットもドラムも楽器は、

共鳴する空間があります。

その音が、空気中に波となって伝わり、私たちの耳に届くのです。

ピアノ、バイオリンやギターのボディのなかに布をつめてみると、

ひびかなくなってしまいます。

 

ところが、多くの人は、声に対して、平気でこれと同じようなことをしているのです。

力をいれることは、共鳴を妨げます。

喉、あご、舌、頬、肩、首、このようなところに力を入れると、

声帯がうまく共鳴しなくなります。いわゆる喉声になってしまうのです。

 

簡単にいうならば、声がうまく出ないというのは、

この共鳴が妨げられているということです。

(もうひとつは、声帯そのものの問題がありますが、

これは日常会話に不自由しない人には、ほとんど関係ありません。

むしろ「声のポジション」の維持の問題の方が大きいでしょう)

 

会話はしっかりとした声でできるのに、歌になると、

途端に声がうまく使えなくなる人は、歌うことを一時忘れてください。

歌声よりMCの声の方が大きい人は、基本をやり直しましょう。

 

1分間に200回から400回も振動して声帯がつくりだす音をどう活かすかは、

理屈ではありません。

ですから、最初はあまり発音とか音高にこだわらず、

声をしっかりと出すことに専念してみるべきです。

○頭を使うな!身体と神経を使え!

 

頭で考えて、高い声を出そうとすると、喉から上で声になりそうなところに

声の出るところを変えてしまって、つけ焼き刃的な声をつくってしまいます。

口を大きくあけたり、舌に力を入れたりすると、確かに一瞬、高いところまで出るものです。

ただ、そのときの声の質は高くか細く、身体とのつながりは切れています。

 

これは、身体や感覚がその音を出せるところまでできていないので、

喉や舌など動きやすいところが働いて、それらしくしているだけなのです。

これが、くせをつける大きな原因となります。

(それを高音発声技術とする人もいますが、そういう方法は、

気づきのきっかけになる人もなかにはいるというくらいのもので、

高いレベルでの実践には、とても使えません。

後でそのくせをとる方が難しくなります。)

 

このようにつくると、この音から2~3音から上が、

いつまでたっても声としてできてこないようになります。

さらにくせを固めることでは、自分の首をしめることになるのです。

最初は、声にならなくてもよいから、声を身体から切り離さないことです。

 

今の自分の感覚と身体が対応できるだけのものなら、

すでに歌でもできているはずです。

そうならないとしたら、それは方法を知らないのではなく条件が足らないのです。

それを方法のせいにすることがおかしいのです。