<過去問分析 教育原理(ジェンダー・バイアス)>
【令和5年(後期)教育原理 問8】
次の小学校における教師の指導のうち、潜在的カリキュラムとしてジェンダー・バイアスを助長する恐れのあるものとして、適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 道徳の授業で、性別にかかわらず協力し助け合うように指導した。
B 誕生日のお祝いに、いつも女児には赤のカードを、男児には青のカードを渡している。
C 体育の授業で、思春期には内分泌の働きによって生殖に関わる機能が成熟し、体形に性差が表れることを教えた。
D 授業中に泣いている男児に対して、「男なのだから泣くのはやめなさい」と言って注意した。
E いつもズボンを履いてくる女児に対して、「もっと女の子らしい服装をしましょう」と優しくアドバイスをした。
(組み合わせ)
1 A B C
2 A D E
3 B C D
4 B D E
5 C D E
【解答・解説】
ジェンダー(gender)とは、生物学的な性別(sex)を前提に、社会的・文化的に形成された性別のことをいいます。
服装や髪形、言葉づかい、職業選択、家庭や職場での役割や責任の分担など、「男らしさ」、「女らしさ」などとして、それぞれの人が所属する社会や文化から規定され、つくり上げられた性別です。
バイアス(bias)は、偏見(先入観)という意味なので、ジェンダー・バイアスとは、社会的・文化的に形成された性別による偏見という意味となります。
そして、潜在的カリキュラム(隠れたカリキュラム)とは、学習指導要領などの顕在的カリキュラム(目に見えるカリキュラム)に対して、教育する側の意図の有無に関わらず、子どもが暗黙のうちに、学校や社会の文化としての価値、態度、社会規範などを身につけていく働きをいいます。
ですので、ジェンダー・バイアス自体が、そもそも潜在的カリキュラムの一つになっているので、この問題は、ジェンダー・バイアスの観点だけから考えればよかったことになります。
なお、この問題では、本来「不適切」な指導である「ジェンダー・バイアスを助長する恐れのあるもの」が「適切」ということになるので、少し注意が必要です。
A 不適切
「道徳の授業で、性別にかかわらず協力し助け合うように指導した。」
「性別にかかわらず」が少し引っ掛かりますが、他の記述との関係で、「ジェンダー・バイアスを助長する恐れのあるもの」には当たらず、「不適切」と判断することになります。
B 適切
「誕生日のお祝いに、いつも女児には赤のカードを、男児には青のカードを渡している。」
正に「社会的・文化的に形成された性別」による固定的な区別であり、「ジェンダー・バイアスを助長する恐れのあるもの」には当たり、「適切」と判断することになります。
男女で区別するのではなく、「好きな色(赤・青以外を含む)」をあらかじめ聞いておいたり、その子どもが「好きそうな色」を考えてみたりすることが必要です。
C 不適切
「体育の授業で、思春期には内分泌の働きによって生殖に関わる機能が成熟し、体形に性差が表れることを教えた。」
これは、「生物学的な性別(sex)」を教えているだけなので、「ジェンダー・バイアスを助長する恐れのあるもの」には当たらず、「不適切」と判断することになります。
D 適切
「授業中に泣いている男児に対して、「男なのだから泣くのはやめなさい」と言って注意した。」
生物学的にみて、男性と女性とで「泣きやすさ」に違いがあるのかどうかは分かりませんが、例え違いがあったとしても、「男なのだから」は「社会的・文化的に形成された性別」による固定的な区別であり、「ジェンダー・バイアスを助長する恐れのあるもの」には当たり、「適切」と判断することになります。
E 適切
「いつもズボンを履いてくる女児に対して、「もっと女の子らしい服装をしましょう」と優しくアドバイスをした。」
正に「社会的・文化的に形成された性別」による固定的な区別であり、「ジェンダー・バイアスを助長する恐れのあるもの」には当たり、「適切」と判断することになります。
以上より、正解は4となります。
【コメント】
上述のとおり、「ジェンダー・バイアス」自体が、そもそも「潜在的カリキュラム」の一つになっているので、「ジェンダー・バイアス」の観点だけから考えればよかったことになります。
もっとも、「ジェンダー・バイアス」の意味がよく分からなくても、保育士試験の「教育原理」における頻出重要基本事項である「潜在的カリキュラム」の意味が分かっていれば、各記述の比較、消去法で、何とか正解できたのではないでしょうか。
★ 保育士試験科目別対策教材の決定版!「保育士試験科目別リベンジセット」等販売中!
【ふくしかくネット公式ホームページ】
【Amazon.co.jp:ふくしかくネット】
【Yahoo!ショッピング:ふくしかくネット】
にほんブログ村