呆れ驚いた ビッグモーターの保険金不正請求 | 笑う門には福来るのブログ

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【売上高5千億円以上の業界トップ企業で】

 いやはや驚いた。昨日突然開いた中古自動車販売修理の業界トップ、ビッグモーターの記者会見。経営者達は、1ヶ月前発表された調査報告書を見るまで、保険金不正請求の実態を全く知らなかった、「こんなことまでやるのかと愕然とした」と言い切ったのにだ。

 

 修理車にわざとドライバーなどで傷をつけたり、不要な部品交換をしたり、サウンドペーパーで塗装をはがしたり、ヘッドライトのカバーを割る・・・。それを損保会社に水増し保険不正請求を行う。

 

 テレビで、新品のバッテリーを交換したらすぐにダメになり、他の業者に見てもらったら新品ではないと言われた、というのを見て、背筋が寒くなった。

 

 自社の調査で過去8ヶ月間の8427件の保険金申請を調べたところ、既に15.1%の1275件(4995万円)で何らかの不適切行為が見つかった、と発表した。

 

 テレビCMでお馴染み、全国260店舗、従業員6千人、売上高5千億円以上の業界トップ企業。連日の報道で、マイナンバーカード問題を影の薄いものにしてしまった。

 

【調査報告書を読んで】

 同社は、会社法が求める取締役会を全く開かず、議事録も残っていないという。会社のていをなしていない典型的な創業者による放漫経営に思える。

 

 HPでは社員の好待遇ぶりが示され、「実力のある人を抜擢」し、実力次第で3000万円以上稼ぐことができるとする。例として、営業職・年収2237万円、営業職(店長)・年収4607万円、整備士(工場長)・年収1494万円・・・などと並ぶ。

 

 損保会社から強く求められ、外部の弁護士により調査された42ページからなる「調査報告書」(2023年6月26日付)を私も目を通してみた。そこには驚きの事実認定の数々があった。

 

 自動車板金・塗装部門の経験者にアンケートを行った。回答者382名のうち、104名(27.2%)が不正な作業に自ら関与していて、68名(17.8%)は他の者による不正な作業への関与を見聞きしたと回答。

 

 不正な修理では、ドライバーで車体を引っ搔いて傷をつける、ローソク・サンドペーパー等で擦過痕様の痕跡を付ける、実際には損傷がないのにあるかのように写真撮影する、高機能塗装をやっていないのに施工したように装う・・・などリアルな不正の様子が続く。

 

 降格処分による脅しの指摘も強烈だ。社長の息子の副社長の判断で、頻繁に工場長などの降格処分が行われていた。直近3年間でも、20年20名、21年15名、22年12名の工場長がフロントへの降格処分を受けている。

 

 被処分者には弁明の機会が与えられず、理由さえ明確に伝えられず、一方的に通告される。全社的にイントラネットに掲示され通告された。基本給の大幅減額は当然で、転勤も伴うこともある。

 

 「経営陣による有無を言わせない降格処分の頻発によって、全社的に従業員らを過度に委縮させ、経営陣の意向に盲従することを余儀なくさせる企業風土が醸成されていった」と報告書にある。

 

 アンケートでも、382名中167名(43.7%)が「上司からの不正な指示に逆らえない雰囲気があったから」と答えている。

 

 作業ノルマも深刻だ。修理の工賃と部品の交換から得られる車1台あたりのもうけの合計額を「@(アット)」と呼ばれ、14万円前後にするノルマを整備工場に課してきた。車の故障状況により千差万別のはずだが、ノルマが達成されないと容赦ない処分が下る。

 

【明らかな刑事事件】

 事件は、単なる保険金の過剰請求に留まらず、明らかに刑事事件の詐欺罪であり、器物損壊罪などだ。刑事上の責任が当然経営陣に向かうはずだが、昨日の記者会見では他人事で、すべては工場長他現場が悪いと言い切っていた。

 

 明らかな不正を現場レベルで日常的に行えるはずはなく、経営陣からの構造的な圧力・指示があったからに違いないのだが。深く提携していた損保会社の責任も重い。