ビル・エヴァンスとジム・ホールの1962年録音のデュオ作。エヴァンスは"Portrait In Jazz"などの一連のリバーサイドでの名盤を生み出した相棒のラファロを交通事故で亡くし、失意の中でトリオという形式から離れあえてギターとピアノのみというシンプルな構成で録音したアルバムである。
今でこそJazzという音楽が即興のアドリブやメンバーの相乗効果によって生み出されるインタープレイを重視した音楽であるという認識は広く一般的になっているが、Jazzにとっての激動の1950年代が明けたばかりの19622年当時はまだビッグバンドの集団による予定調和の世界であったり、機械的なビバップ理論が一般的であり、このアルバムのようなその90%がインタープレイで成立しているような音楽は衝撃的で画期的なものであったようだ。
ピアノトリオというスタンダードなフォーマットで自己の音楽スタイルを確立したエヴァンスが、3者の体等な緊張感でびスタイルから、ラファロの死による精神的な落ち込みを見せる一方で、ピアノとギターという完全に1対1の密度の濃い世界へ挑むのはかなりの危険性があり冒険でもあった。だが、もともとセンシティブな演奏を得意とするエヴァンスと、同じくチャーリークリスチャン直系のゴリゴリの速弾きギタリストが多い中で、独自のボイシングを生み出し、繊細なフレージングを個性的なギタリストであるジム・ホールとは相性も抜群に良く、結果としてはこのデュオによる企画はこの新たな名作を生み出した。
ギターとピアノはどちらもコード楽器で、デュオで演奏されることはそれほど多くない。ここでの二人の演奏は、どちらもコード楽器であることを前提に、あえてコードを最小限に絞っている。シングルトーンの応酬によるインタープレイは、スリリングとリリシズムの両方を兼ね備えたまさに二人だけの濃密な音楽である。特に人気のスタンダードバラードである"My Funny Valentine"の高速にアレンジされた熱い緊張感が張り詰めながらも、原曲の持つ繊細でロマンティシズム溢れる雰囲気を壊さない彼らのインタープレイはJazz史に残る名演といえる。
このアルバムによってインタープレイという手法が定着し、それ以前のトリオのアルバムにおいても実践されていた即興によるインタープレイが再評価されるようになった。ジャケットのデザイン含めてエヴァンスとジム・ホールの邂逅による深くて濃い音楽は他者を寄せ付けないほど崇高なものであり、いわゆるリラックスさせるムードジャズとは対極に位置している。このアルバムでの2人のプレイはその後現在に至るまで多くの音楽に大きな影響と衝撃を与え続けている。








