甦る 浦添型
Rebirth of urasiigata

伊差川洋子 紅型工房を訪ねて
Part1

沖縄県豊見城市 小高い丘の上にある
伊差川洋子染色工房を訪問しました 





伊差川洋子さんは染織家 浦野理一に師事し帰沖
した後「びんくらふとギャラリー」を創設 紅型の
製作と失われていた浦添型の復興に努めました 




伊差川洋子さんは残念ながら 2015年に逝去され
ましたが、実の娘さんである仲本のなさんが工房
を引き継ぎ 更に共に尽力してきた失われた古紅型 
「浦添型(うらしいがた)」の研究復興を継承しています 





琉球紅型は古来 「城間」 「知念」 そして現在途絶えて
しまった 「澤岻(たくし)」家を三宗家としていました。
「浦添型」 は紅型宗家 澤岻家のみに伝わる唯一の
技法であり紅型の祖型です。他の紅型に見られない   
浦添型の特徴は柄に深みを与える墨摺りの技法です   
通常の琉球紅型は顔料に豆汁を加え固着させますが  
浦添型は墨 顔料に沖縄自生のこんにゃく糊を混ぜて   
膠着させます。桐油を合わすと固着度が上がります 
その固着性ゆえ「古金加」と呼ばれた印金加工の小紋  
も浦添型で染められたとの記録も残されています。 
伊差川洋子さんは坂東玉三郎の舞台衣装として 
浦添型の印金小紋を再現復刻製作しています。

   



浦添型は明治の初めに途絶え以来百年以上ほぼ
忘れ去られてきた古紅型です。数少ない記録が
人間国宝 鎌倉芳太郎が遺した「鎌倉ノート」 に
記載される 「コンヤクガタ」 だと思われます 。




浦添型復刻再現はほぼ鎌倉芳太郎研究と等価であり
伊差川さんは同列同時に進めてきたと思われます。
仲本のなさんも鎌倉芳太郎については思い入れ強く
文献研究 原材料生育栽培の苦労を語ってくれました  




現在 沖縄本島ではコンニャク芋の栽培自生種は皆無で
沖縄県内では粟国島で唯一自生する「ヤマゴンニャク」
のみです。絶滅危惧種ゆえに本島へ持ち込む手続きと 
採取の許可を得るのになんと三年かかったそうです。 
 




【ヤマゴンニャク糊】

貴重なヤマゴンニャクから生成した蒟蒻糊です
桐油を混ぜてさらに固着性を高めてゆきます。





藍棒から抽出した藍色や山吹色の顔料に直接
蒟蒻糊を入れます。墨摺り型の墨にも蒟蒻糊
を直接投入。墨・顔料共に蒟蒻糊を入れます。




【墨摺り型】

墨摺り型は浦添型独自の墨を摺り染めるための
型紙です。浦添型は都合三枚以上の型紙を使い 
ます。一枚目の型が墨摺り型とは意外な気がし 
ました。そもそも紅型の型紙は糊を置くための  
型であり摺り染めるための型は非常に特異です。





【防染糊型】

墨摺りした布に防染糊(モチ粉 米ヌカ粉)を防染糊型
で置きます。混乱しやすいのですが防染糊は蒟蒻糊  
ではありません。墨摺りと白ぬきの部分に糊置き。

【色挿し】  

蒟蒻糊を混ぜた顔料を挿し刷毛を使って手で暈し 
ながら染めてゆきます。手挿し紅型の醍醐味です   
   




【糊伏せ型】

さらに色挿し部分を伏せるために糊伏せ型で糊を
置きます。伏せ糊はやはり防染糊(モチ粉 米ヌカ粉) 

【地入れ 地染め】

顔料を豆汁で溶き刷毛で数回に分け地染めします  

【蒸し 水洗い】

蒸し器で三十分ほど蒸し水洗して
防染糊を落として干して完成です。





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