「大切なものは何?」
「えっ?」
「わからないのなら、近くにあるものを大切にしてみるといい」
「いきなり何の話?」
何の脈絡もなく、こんな話をされても確かに困りますよね。ただ、これが『主語と動詞の数の一致』についての話だと言われたらどうでしょうか。
前回同様、この段階でピンときている方は、続きを読む必要はありません。何のことだかわからないというあなたは、是非次の問題を解いてみて下さい。この記事を読み終わる頃には、最初の三行の意味がわかるはずです。この説明が時制の解説の途中に割り込んでいる理由も。
問1
All his books, as well as the only precious photo of his late mother, ( ) burned to ashes five years ago.
1. was
2. were
3. has
4. have
「まだ完了のことは習ってないから、わからないよ」
「そうかな?確かに完了についてはまだ教えてないけど、能動と受動なら…」
「あっ、目的語がないから受動?」
「そう。完了の受動態は<have> been Vp.p.だから、これだけで選択肢3と4は消せる。他にももう教えたことが…」
「ago!」
「いいね。agoはどんな言葉だった?」
「『今より前』だから過去!だから答えは2のwere」
「へぇ、すごい、正解。でも何で1のwasじゃないの?」
「だって、主語はAll his booksでしょ」
「それは何でわかったの?」
「だって、カンマに挟まれたものは挿入だから…」
「あぁ、まぁ今回は正解だけど…。じゃあ、この問題はどう?」
問2
( ) is optimistic about the outcome of the new project.
1. Both the employees and the president
2. Not only the employees but also the president
3. The employees as well as the president
4. Either the president or the employees
「うわ、カンマがなくなった。意地悪」
「いや、大学が実際に出しているだけで、勝手に消したのではないよ。それに挿入と言ったって、そこに文法的な役割がないわけではないから、カンマに挟まれているというだけで飛ばすのは、やめた方がいい。下の表の『組み合わせ(数の一致)』を見てごらん」
【従位接続詞の表はこちら】
「う~ん、both A and Bは『AとBの両方』って意味だから、A+Bで複数っていうのは何となくわかるけど…。こんな、Aに一致とかBに一致とかだけ書かれても覚えられないよ」
「確かにね。でも大丈夫。別に丸暗記するものではないから。」
「じゃあどうするの?」
「それぞれの表現の意味の強弱に注目する」
「強弱?」
「そう。AとB、どちらが意味上大切かということを考えるんだ」
「not only A but also Bだと、『AだけではなくBも』か…」
「わかりにくければ、AとBに具体的なものを入れてみるといい」
「え〜と、問題文は『従業員だけではなく社長も』…」
「問題文に限らず、身近なものでもいいよ。例えば『傘だけではなく合羽も持ってきて』だったら?」
「傘は元々もってくる予定だけど、それに加えて合羽もってこと?」
「そう。つまり大切なのは合羽でB。だからBに一致。」
「じゃあ正解は2だね」
「その通り。他も見ておこう」
「選択肢3のA as well as Bだと『Bと同じようにAも』だから、Bは前提でAが大事ってことか。あ、だから問1はAll his booksに合わせたんだ」
「そういうこと。じゃあ4のeither A or Bは?」
「『AかBかどちらか』…、『コーヒーか紅茶か』…。あれ?どちらが大事というわけではないよね」
「そうだね。そういう時には動詞に近い方、つまりBに合わせるんだ」
「ってことは表のneither A nor Bも?」
「そう、近い方でB。表の最後のnot A but Bはnot only A but also Bと同じパターン。onlyとalsoがないだけだからね。『AではなくB』となって、Bが大切だから、Bに一致」
主語が等位接続されている時には、まずそのAとBのどちらが意味の上で大切かを考え、大切な方に動詞の形を合わせて下さい。もし、どちらとも言えなければ、動詞に近い方のBに合わせるだけです。今回の問題のように、時制と組み合わせて出題されることが多いですし、作文でのミスも目立ちますので注意して下さい。
「大切なものは何?」
「えっ?」
「わからないのなら、近くにあるものを大切にしてみるといい」
(接続詞第1講に続く)
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