短編小説 真夏のトライアングル
作:NaNa
★14
私はこの部屋で、望んで亡き人の面影と暮らしながらも、同時にその気配に怯えていた。出口の見えないその毎日から、逃れるように飛び出したベランダの向こうで、彼は私を受け止めた。
死んだ麗子さんにぬくもりを求めても、それは到底無理な話で、私の肌は、寂しさと恐怖で冷え切ってしまっている。この肌を温めてくれるとしたら彼しかいない。いつからか、そう思っていたのだ。
私の心の声に気づいたかのように、優真は私を引き寄せて抱きしめた。肌から発する熱に包まれて、私の体を覆う見えない殻が、溶けだす氷のように消えていった。顔が近づくにつれて、息が苦しくなる。