短編小説 真夏のトライアングル
作:NaNa
★15
優真とのキスは、コーラのねっとりした甘みに、かすかなスパイスの刺激と、めまいがしそうなバーボンの香りがした。体の芯でゆらゆらと燃え始めた火が、蝋燭を熱するように私を溶かした。
ゆっくりと唇を離してから、優真が言った。
「俺、彼女は作らない主義なんだけど、それでもいい?」
彼の言葉に、私はたちまち凍りついた。じっくりと温めた空気を、一瞬にして冷やす言葉だった。けれども、私の熱はこの瞬間もじわじわと高まり、もう後戻りできないほどになっている。力を込めて抱きしめられたい。繋がりあいたい。心の中には欲しい欲しいと両手と両足を伸ばしてじたばたしている自分がいる。
「…いいよ」私は笑みを浮かべて見せた。