『秀吉 -山崎の戦い-』
京の夜空に赤々と炎があがる。
闇夜の中、炎上する本能寺。
炎が燃え広がっていく。
梅雨空の下、水に浮かぶ備中高松城。
その人工湖上に小舟。
小舟の上で切腹の所作に入る清水宗治。
覚悟を決めた、その表情。
その様子をじっと見つめる羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)。
見事に腹を斬る宗治。
高松城を見上げ、倒れる。
切腹を見届け、大きく頷く秀吉。
曇り空の中、山陽道を駆け抜ける秀吉軍二万の大軍。
その先頭集団の中にいる馬上の秀吉。
真っ直ぐ前を睨み、駆け抜ける。
狭い街道を、縦長の大行軍が続いて行く。
必死に駆ける秀吉軍。
梅雨空から激しい雨が降る。
暴風雨の中、峠を行く秀吉軍。
前を睨みつけ、進む秀吉。
峠を駆け抜ける、秀吉軍。
夜空が広がる。
暗闇の中、駆け抜ける秀吉軍。
前方を睨み、駆け抜ける秀吉。
朝焼け空。
朝日を浴び、駆け抜ける秀吉軍。
前を睨みつけ、駆ける秀吉。
京に向かって駆け続ける秀吉軍。
雨が降りしきる中、山崎の地になだれ込む秀吉軍四万。
その中心に馬上の秀吉。
獲物をようやく捕らえたその表情。
川向こうに陣取る、光秀軍二万。
その中心に馬上の明智光秀。
落ち着いた表情。
秀吉 「狙うは明智光秀の首なり!かかれ!」
襲い掛かる秀吉軍四万。
光秀 「迎え撃て!」
迎え撃つ、光秀軍二万。
一進一退の攻防。
次第に秀吉軍が押してゆく。
秀吉 「押せー!押せー!
謀反人、明智光秀の首を取るのじゃー!」
鬼気迫る表情の秀吉が叫ぶ。
さらに押してゆく秀吉軍。
引き始める光秀軍。
光秀 「・・・・・」
三方から攻められ総崩れとなる光秀軍。
光秀、家臣にうながされ戦線後方の山中に退却する。
その光秀の行動を見つめる秀吉の眼。
山中、数人の家臣と逃げる光秀。
覚悟がうかがえる、その表情。
山中をさまよう光秀の眼に、秀吉が映る。
数人の家臣と共に、光秀の前に立つ秀吉。
対峙する秀吉と光秀。
光秀 「・・・・・」
秀吉 「・・・なぜに信長様を裏切った・・・」
光秀 「・・・信長殿に天下を取らせてはならぬと思ったからだ・・・」
秀吉 「・・・・・」
光秀 「・・・この光秀が謀反を起こさなければ、
信長殿が天下人となられたであろう。
・・・しかし、戦は続き、多くの人々が犠牲となり、
戦乱の世は治まらぬ。
・・・私は、信長殿の意志を受け継ぐ者が、
真の天下統一を成し遂げることが、
この国の民のためと考えた。
・・・たとえ後世に逆賊の汚名を残してでも。」
秀吉 「・・・・・」
光秀 「・・・秀吉殿、覚悟は出来ている。謀反人を討たれよ。」
秀吉、じっと光秀を凝視する。
空を見上げる秀吉。
秀吉 「・・・潔い最期を。」
光秀 「・・・・・」
秀吉、家臣と共に去って行く。
光秀、じっと秀吉の後ろ姿を見送る。
光秀 「かたじけない・・・天下人となられよ・・・。」
秀吉の後ろ姿、大きくなって遠ざかって行く。
天下を目指すその表情。
『信長 -桶狭間の戦い-』
今にも雨が降り出しそうな、曇り空。
山々が不気味な静けさを放っている。
その中を進軍して行く、二万の大軍勢。
悠々、堂々と進む。
行列の中央に総大将の輿が見える。
尾張領内を進軍して行く、今川義元の大軍勢。
屋敷の一室。
薄暗い部屋の片隅に佇む、一人の武将。
暗闇の中に眼だけがギラギラ光っている。
じっと一点を見つめる、鋭い眼光。
その瞬間を待つ、織田信長。
空一面を覆った雲から雨が降り出す。
輿を止め、雲行きを見つめる今川義元。
雷鳴が轟く。
鋭い眼光が前方を睨む。
立ち上がる信長。
信長 「出陣!」
飛び出して行く信長。
雨の中、急ぎ足で進む今川軍二万。
輿の中の義元、真っ直ぐ前を見つめる。
雨の中、駆ける織田軍二千。
その先頭に騎馬の信長。
眼光の鋭さが増す。
桶狭間に激しい雨が降り続く。
今川軍二万、桶狭間に近づく。
織田軍二千、桶狭間が間近に見下ろせる高台に待機。
先頭に信長、じっと桶狭間を睨む。
今川軍二万、桶狭間に入る。
それを確認する鋭い眼光。
信長、号令を発する。
信長 「かかれー!」
一気に高台から桶狭間に駆け下りる織田軍二千。
信長、凄まじい勢いで先頭を行く。
鬼の形相。
雨の中の急襲で意表を突かれ、足並みが崩れる今川軍二万。
輿の中の義元、わずかに驚きの表情。
今川軍二万の大軍を、わずか二千の織田軍が切り崩して行く。
その先頭を行く信長、死神の如く。
引いて行く今川軍。
逃げ出す者もいる。
劣勢の大軍、既に大軍ではない。
輿の中でじっと耐える義元。
押して行く織田軍。
全員死に物狂いで戦う。
覚悟を決めた強さ。
どんどん押して行く織田軍。
信長の眼に、義元の輿が映る。
今川軍を蹴散らし、輿に近づく信長。
義元 「輿を降ろせ!」
降ろされた輿から、姿を現す今川義元。
信長をじっと見つめ、抜刀する義元。
身体中から殺気があふれる。
馬から降りる信長。
じっと義元を見据え、刀先を向ける信長。
一触即発の空気が流れる。
間合いを計る二人の戦国武将。
凄まじい気合と共に、斬りかかる信長。
その刀をしっかり受け止め、払う義元。
また斬りかかる信長。
受け止め、払う義元。
何度も斬りかかっていく信長。
何度も受け止め払う義元。
その「間」が少しずつずれていく。
攻め続ける信長が、一瞬の「間」をものにする。
切っ先が義元の肩口に食い込む。
義元 「・・・・・」
食い込んだ刀を手で握り締め、必死に耐える義元。
一瞬、信長の心の中に迷いが生まれる。
義元 「・・・どうなされた。戦国の世に情けは無用。」
信長 「・・・・・」
義元 「・・・この戦乱の世を治めるためには、非情に徹しなければならぬ。
・・・そなたには出来るかもしれぬ、天下統一が。
・・・そのために、非情なまでに想いを遂げられよ。
・・・わしはここまでだ・・・後は頼む!」
信長 「・・・・・」
信長、決意の表情、そして非情な眼差しとなる。
叫びと共に、義元にとどめを刺す信長。
ゆっくり大地に倒れてゆく今川義元。
仁王立ちの信長、義元を尊敬の眼差しで見つめる。
眼を閉じる信長。
真っ直ぐ前を向き、歩き出す信長。
その眼は天下を見据え、非情な織田信長となってゆく。
雨があがり、雲間から太陽が顔をのぞかせている。
