小林 太樹 『風・遊・記』 ショートシナリオストーリーブログ   -59ページ目

『秀吉 -山崎の戦い-』

京の夜空に赤々と炎があがる。


闇夜の中、炎上する本能寺。


炎が燃え広がっていく。



梅雨空の下、水に浮かぶ備中高松城。


その人工湖上に小舟。


小舟の上で切腹の所作に入る清水宗治。


覚悟を決めた、その表情。


その様子をじっと見つめる羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)。


見事に腹を斬る宗治。


高松城を見上げ、倒れる。


切腹を見届け、大きく頷く秀吉。



曇り空の中、山陽道を駆け抜ける秀吉軍二万の大軍。


その先頭集団の中にいる馬上の秀吉。


真っ直ぐ前を睨み、駆け抜ける。


狭い街道を、縦長の大行軍が続いて行く。


必死に駆ける秀吉軍。



梅雨空から激しい雨が降る。


暴風雨の中、峠を行く秀吉軍。


前を睨みつけ、進む秀吉。


峠を駆け抜ける、秀吉軍。



夜空が広がる。


暗闇の中、駆け抜ける秀吉軍。


前方を睨み、駆け抜ける秀吉。


朝焼け空。


朝日を浴び、駆け抜ける秀吉軍。


前を睨みつけ、駆ける秀吉。



京に向かって駆け続ける秀吉軍。



雨が降りしきる中、山崎の地になだれ込む秀吉軍四万。


その中心に馬上の秀吉。


獲物をようやく捕らえたその表情。


川向こうに陣取る、光秀軍二万。


その中心に馬上の明智光秀。


落ち着いた表情。


秀吉 「狙うは明智光秀の首なり!かかれ!」


襲い掛かる秀吉軍四万。


光秀 「迎え撃て!」


迎え撃つ、光秀軍二万。


一進一退の攻防。


次第に秀吉軍が押してゆく。


秀吉 「押せー!押せー!

     謀反人、明智光秀の首を取るのじゃー!」


鬼気迫る表情の秀吉が叫ぶ。


さらに押してゆく秀吉軍。


引き始める光秀軍。


光秀 「・・・・・」


三方から攻められ総崩れとなる光秀軍。


光秀、家臣にうながされ戦線後方の山中に退却する。


その光秀の行動を見つめる秀吉の眼。


山中、数人の家臣と逃げる光秀。


覚悟がうかがえる、その表情。


山中をさまよう光秀の眼に、秀吉が映る。


数人の家臣と共に、光秀の前に立つ秀吉。


対峙する秀吉と光秀。


光秀 「・・・・・」


秀吉 「・・・なぜに信長様を裏切った・・・」


光秀 「・・・信長殿に天下を取らせてはならぬと思ったからだ・・・」


秀吉 「・・・・・」


光秀 「・・・この光秀が謀反を起こさなければ、

     信長殿が天下人となられたであろう。

     ・・・しかし、戦は続き、多くの人々が犠牲となり、

     戦乱の世は治まらぬ。

     ・・・私は、信長殿の意志を受け継ぐ者が、

     真の天下統一を成し遂げることが、

     この国の民のためと考えた。

     ・・・たとえ後世に逆賊の汚名を残してでも。」


秀吉 「・・・・・」


光秀 「・・・秀吉殿、覚悟は出来ている。謀反人を討たれよ。」


秀吉、じっと光秀を凝視する。


空を見上げる秀吉。


秀吉 「・・・潔い最期を。」


光秀 「・・・・・」


秀吉、家臣と共に去って行く。


光秀、じっと秀吉の後ろ姿を見送る。


光秀 「かたじけない・・・天下人となられよ・・・。」


秀吉の後ろ姿、大きくなって遠ざかって行く。


天下を目指すその表情。












『信長 -桶狭間の戦い-』

今にも雨が降り出しそうな、曇り空。


山々が不気味な静けさを放っている。


その中を進軍して行く、二万の大軍勢。


悠々、堂々と進む。


行列の中央に総大将の輿が見える。


尾張領内を進軍して行く、今川義元の大軍勢。



屋敷の一室。


薄暗い部屋の片隅に佇む、一人の武将。


暗闇の中に眼だけがギラギラ光っている。


じっと一点を見つめる、鋭い眼光。


その瞬間を待つ、織田信長。



空一面を覆った雲から雨が降り出す。


輿を止め、雲行きを見つめる今川義元。



雷鳴が轟く。



鋭い眼光が前方を睨む。


立ち上がる信長。


信長 「出陣!」


飛び出して行く信長。



雨の中、急ぎ足で進む今川軍二万。


輿の中の義元、真っ直ぐ前を見つめる。



雨の中、駆ける織田軍二千。


その先頭に騎馬の信長。


眼光の鋭さが増す。



桶狭間に激しい雨が降り続く。


今川軍二万、桶狭間に近づく。


織田軍二千、桶狭間が間近に見下ろせる高台に待機。


先頭に信長、じっと桶狭間を睨む。


今川軍二万、桶狭間に入る。


それを確認する鋭い眼光。


信長、号令を発する。


信長 「かかれー!」


一気に高台から桶狭間に駆け下りる織田軍二千。


信長、凄まじい勢いで先頭を行く。


鬼の形相。


雨の中の急襲で意表を突かれ、足並みが崩れる今川軍二万。


輿の中の義元、わずかに驚きの表情。


今川軍二万の大軍を、わずか二千の織田軍が切り崩して行く。


その先頭を行く信長、死神の如く。


引いて行く今川軍。


逃げ出す者もいる。


劣勢の大軍、既に大軍ではない。


輿の中でじっと耐える義元。


押して行く織田軍。


全員死に物狂いで戦う。


覚悟を決めた強さ。


どんどん押して行く織田軍。


信長の眼に、義元の輿が映る。


今川軍を蹴散らし、輿に近づく信長。


義元 「輿を降ろせ!」


降ろされた輿から、姿を現す今川義元。


信長をじっと見つめ、抜刀する義元。


身体中から殺気があふれる。


馬から降りる信長。


じっと義元を見据え、刀先を向ける信長。


一触即発の空気が流れる。


間合いを計る二人の戦国武将。


凄まじい気合と共に、斬りかかる信長。


その刀をしっかり受け止め、払う義元。


また斬りかかる信長。


受け止め、払う義元。


何度も斬りかかっていく信長。


何度も受け止め払う義元。


その「間」が少しずつずれていく。


攻め続ける信長が、一瞬の「間」をものにする。


切っ先が義元の肩口に食い込む。


義元 「・・・・・」


食い込んだ刀を手で握り締め、必死に耐える義元。


一瞬、信長の心の中に迷いが生まれる。


義元 「・・・どうなされた。戦国の世に情けは無用。」


信長 「・・・・・」


義元 「・・・この戦乱の世を治めるためには、非情に徹しなければならぬ。

     ・・・そなたには出来るかもしれぬ、天下統一が。

     ・・・そのために、非情なまでに想いを遂げられよ。

     ・・・わしはここまでだ・・・後は頼む!」


信長 「・・・・・」


信長、決意の表情、そして非情な眼差しとなる。


叫びと共に、義元にとどめを刺す信長。


ゆっくり大地に倒れてゆく今川義元。


仁王立ちの信長、義元を尊敬の眼差しで見つめる。


眼を閉じる信長。


真っ直ぐ前を向き、歩き出す信長。


その眼は天下を見据え、非情な織田信長となってゆく。


雨があがり、雲間から太陽が顔をのぞかせている。











『攻』


小林 太樹  『風・遊・記』  ショートシナリオストーリーブログ  -MY書道「攻」



アグレッシブに生きる。


攻撃的に。


積極的に。


攻撃は最大の防御。



攻める心。


その形は「動」であり「静」でもある。


最後まであきらめず、


アグレッシブな心で、


攻め続ける。