小林 太樹 『風・遊・記』 ショートシナリオストーリーブログ   -54ページ目

『 勝 』


小林 太樹  『風・遊・記』  ショートシナリオストーリーブログ  -MY書道「勝」



「宇宙」に勝ち負けはない


但し 単独で 確固たる信念の基に


自身の生き様を築いて行かなければならない


それがいつか唯一の光となり 輝きを放ち


「地球」に舞い降りる


「大地」にしっかりと脚を着け 歩く


理想と現実の試行錯誤を繰返し


ひとつひとつが繋がっていく


覚悟を決め


挑戦し続け


信じた道を邁進する


人生に「勝」






『十五の春へ -サクラサク-』

春の訪れを知らせるような青空。


穏やかな風が吹く。


国道を一台のトラックが走る。


トラックを運転する男。


ケイタイのメールを気にしている。


落ち着きがない。


国道を真っ直ぐに進むトラック。


国道沿いにある駅前。


受験生が大勢行き来している。


合格発表帰りの受験生。


笑顔が見える。


足取り軽く帰路を急ぐ子もいる。


信号待ちでその様子を見ているトラックの男。


男 「・・・合格したんだな。」


微笑む男。


男、何かに気付く。


駅前に止まる一台の乗用車。


助手席で泣いている女子受験生。


運転席で娘を見守る父親。


トラックの男、複雑な表情。


男 「・・・・・」


信号が青に変わり走り出すトラック。


男の横顔。


男 (いつかはサクラがサク・・・必ず)


真剣な表情になる男。


メールを気にする。


男 「何やってんだ・・・アイツは・・・」


だんだん心配顔になって来る男。


国道を走っていくトラック。


信号待ちで窓の外を見つめる男。


バス停にも合格発表帰りの受験生。


その中の男子受験生と母親をじっと見ている男。


男 (あの日の受験生と母親だ)


母子の素晴らしい笑顔。


男 「・・・合格したんだ。」


母子を見ながら笑顔になるトラックの男。


走り出すトラック。


バックミラーで母子を見送る。


男 (・・・よかった)


国道を走るトラック。


メールの着信音が鳴る。


トラックを止める男。


ゆっくりと緊張した面持ちでメールを見る男。


メール画面の「合格」の文字。


男、じっと画面を見つめる。


大きく息を吐く。


運転席から見える青空を見上げる。


男 「よかった・・・」


全身の力が抜け、安堵の表情。


走り出すトラック。


穏やかな表情の男。


男 「よく頑張った・・・

    でもまだまだ・・・

     これからだ・・・」


表情を引き締める男。


国道を真っ直ぐ走っていくトラック。


トラックを運転している男の横顔。


満足気な父親の顔。


きれいな青空が果てしなく広がっている。









『十五の春へ』


見渡すかぎりの銀世界。


雪景色の彼方から陽が昇る。


トラックのタイヤにチェーンを装着する男。


吐く息が白い。


トラックを運転している男。


雪の国道を走るトラック。


雪景色の上には晴れわたる青空。


前方に注意を払いながら運転している男。


何かに気付く。


国道沿いの雪上を歩いている男子中学生とその母。


その母子の様子を見つめる男。


ゆっくり通り過ぎるトラック。


サイドミラーに目をやる男。


ミラーに映る母子。


トラックがゆっくり止まる。


母子がトラックの横を通る。


男 「どこまで行くんですか。」


母 「・・・〇〇高校です。」


男 「受験ですね・・・」


母 「はい。」


男 「通り道ですから乗って下さい。」


母 「・・・あっ、いいんですか。」


男 「どうぞ。」


母 「すいません、じゃお言葉に甘えて・・・」


走り出すトラック。


運転席の男と横に座る母子。


母 「バスが雪で動かなくて・・・助かりました。」


男 「間に合いますから安心して下さい。」


母 「本当にありがとうございます。」


男 「受験の日に雪はかわいそうですよね。」


母 「はい・・・」


雪の国道を真っ直ぐに進むトラック。


運転している男の横顔。


男 「私の息子も今朝歩いて受験に行きました。」


母 「あっ・・・そうだったんですか。」


男 「うちは近くの高校ですから・・・」


母 「そうなんですね。」


男 「受験というのは本人も親も大変ですね。」


母 「本当ですね・・・今も私の方が緊張しています。」


男 「私も今朝息子に声を掛けた時、涙が出そうになりました。

    歳をとると涙もろくなって困ります。」


母 「息子さん頑張ったんですね。お気持ちよく分かります。」


男 「いやー・・・実は前期の面接試験で受からなくて

    本人は相当落ち込んだんです。

    同じ中学校の半分は受かったのでつらかったんでしょう。

    でも・・・翌日から立ち直りました。

    本気で勉強するようになりました。

    半数は高校が決まった子たちがいる環境で、

    よく踏ん張ったと思います。

    あっ・・・すいません・・・」


母 「・・・そうですか。本当によく頑張ったんですね。」


男 「・・・私は結果よりもこの経験が大切だと思うんです。」


母 「結果もいいと、さらに素晴らしい経験になりますね。」


男 「ごめんなさい・・・自分のことばかり話してしまって・・・」


母 「いいお話を聞かせていただけて良かったです。」


男、照れ隠しに苦笑い。


男 「もう着きますよ。」


母 「はい。」


トラックが高校の手前でゆっくり止まる。


母 「本当にありがとうございました。」


男 「いえ。(受験生に向い)頑張ってな。」


受験生 「はい。ありがとうございました。」


男、微笑む。


母 「では、お互いにいい春を迎えることが出来ますように。」


男、頭を下げる。


母、感謝の気持ちを込めてお辞儀をする。


校門に向って歩いて行く母子。


それを見送り、トラックを発信させる男。


すがすがしい表情で運転する男。


雪景色の中一本道を真っ直ぐ進むトラック。


白銀の世界の中をトラックが走って行く。


広がる冬晴れの空。