私は普通の会社員でしたが、ある時期からうつ状態になり、次第に仕事以外では家に引きこもるようになりました。ネットばかりして過ごす中で、性同一性障害や性別違和というものを知り、何故かとても共感しました。SNSで見る女性たちは皆キラキラして見え、あんな風に生まれたかったと思ったからです。徐々にこの鬱の原因は性別の違和感から来るものだと思うようになりました。思えば昔から男らしくなかったような気もします。また、可愛いニューハーフや女装子を見ては自分もああなりたい、という思いが募りました。思い切ってジェンダークリニックへ行ってみると性別違和と診断され、治療を開始しました。
女性ホルモンを投与すると、睾丸が萎縮して性欲が減退し、男性機能が低下していきました。自分の男性機能が破壊されていくことに喜びを感じると同時に、自分を傷つけているような気がして少し罪悪感を覚えました。しかし、男性的な要素がなくなることが嬉しかったので、積極的に髭や体毛を脱毛しました。次第に胸が膨らんできたり、皮脂が減って肌がきめ細かくなったり、顔つきが柔らかい雰囲気になったり、女性的な変化に気付く度に罪悪感を感じつつも嬉しい気持ちでいっぱいになりました。こんなに嬉しいのだから間違いなく私は女性だと思い、性別適合手術を受けることを決意しました。
会社には隠して男性のまま勤務していましたが、このまま務め続けるのは難しいと思い、手術を前に退職しました。そして私は性別適合手術を受け、ついに男性の象徴を失いました。スッキリした股間を見る度に嬉しく清々しい気持ちになると同時に、本当にやってしまった、これで良かったのだろうか、という気持ちも少し脳裏にありました。その後戸籍を変更し、私は晴れて女性になりました。
しかし、全てが終わった後、やはり元のうつ状態に戻ってしまったのです。メンタルクリニックでのカウンセリングの結果、性転換のプロセスはある種の自傷行為だったのかもしれないことが判明しました。自傷により興奮を感じたりストレスを開放していたのを、希望の性別になっていく喜びと錯覚していたようです。性別違和は誤診でした。
誤診であれば、裁判で訴えれば書類上は元の性別に戻すことはできます。しかし、手術まで終えてしまった今、もう元の体に戻ることはできません。これ以上手術で体を傷つけることもしたくありませんし、ホルモンは一生外部から補充し続けなければいけません。それに、女性になったことでの違和感や辛さはほとんどありません。女性の格好をするのは嫌いではないですしね。私はこのまま女性として生きてくことを決意しました。
※この物語は実話を元にしたフィクションです。女性ホルモンの効果には個人差があり、全員がこの主人公のような変化をするわけではありません。また、不可逆な変化を伴いますので投与は慎重に。何があっても自己責任となります。