私は表向きは普通の男の子を装って生きてきましたが、ずっと何かが違うと思っていました。性同一性障害や性別違和というものを知って、これだ!と思いましたが、否定されるのが怖くて両親には言い出せませんでした。
高校を卒業して実家を離れることになり、私は行動を起こすことにしました。大学に通う傍らジェンダークリニックに通院し、医師の診断を得ることができました。しかし、内気な私は周囲の人に打ち明ける勇気はありません。それでも少しでも女性に寄せたくて、誰にも言わずにこっそり女性ホルモン治療を始めました。
急激な変化はありませんが、容姿は少しずつ変わっていきました。脂肪の付き方が変化し、皮膚がふわふわとしてきました。お尻や太ももに脂肪がついて女性体型になってきたり、顔もふっくらとして柔らかい雰囲気になった気がします。そして小さいながらも胸が出てきました。体毛はかなり薄くなりましたが、髭はなかなかなくなりません。
こんな調子でゆっくり変化していたので、毎日会っている人には気付かれず、今まで通り男性として接していました。髪型を少しずつ女性的なショートカットにしていくと、初めて会う人には女性と思われることがありました。女性と思われたことの喜びは計り知れず、もっと女性的になることを望むようになりました。
いつか性別適合手術を受けたいと思い、費用を稼ぐため、男性として企業に就職しました。もちろん、性別違和の件は話していません。
数年働きお金を貯め、有給休暇を利用して性別適合手術を受けることにしました。手術後、女性用の下着が綺麗に履けるようになったのと、立って排尿できなくなったことで、女性としての実感が湧きました。それでも、服で隠れる部分なので、他の人にはわかりません。
希望すれば名前や戸籍の性別も変更できますが、両親にも周囲にも言っていない手前、変えていません。
昼間は男性として普通に働き、オフの時間は密かに女性としての生活を楽しむ…これが周囲に波風を立てたくない、目立ちたくない、私の生き方です。
※この物語はフィクションです。ホルモンの効果、術後の経過には個人差があります。また、不可逆な変化を伴いますのでホルモン投与や手術は慎重に。何があっても自己責任となります。