星の輝き、月の光 -13ページ目

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

 

三人が帰ってくるのは夜遅い。ミニョは先に夕飯を食べるとリビングでテレビを観ていた。

 

「あーコホン・・・ミニョ、膝が寒いんじゃないか?」

 

ミニョの隣、ぬいぐるみには大きすぎるソファーに座っているテギョンが聞いた。

 

「いいえ、寒くないです」

 

「そうか・・・あーコホン、手が、暇そうだな」

 

「手、ですか?」

 

ミニョは自分の手をまじまじと見た。テレビを観ながら手を使って何をするんだろうと小首を傾げた視界にリモコンが入る。

 

「別の番組がよかったですか?」

 

ミニョが観ていたのはバラエティー番組で芸人がコントをしていた。

 

「いいや、違う、そうじゃない、そうじゃなくて、えーっと・・・」

 

腰を浮かせテーブルの上にあるリモコンに手を伸ばしたミニョは、はっきりとしないテギョンの声にプッと小さく吹き出すと、テギョンを膝の上に乗せた。そして転がり落ちないように両腕を前に回ししっかりと抱きかかえた。

 

「はい、これで膝もあったかいし手も暇じゃなくなりました。もう、抱っこしてほしいならそう言ってください」

 

「ばか、そんなこと言えるわけないだろ、小さな子どもじゃあるまいし」

 

焦った声はツンと尖っているが内容を否定はしていない。ミニョはくすくすとこみあげる笑いが止まらなかった。

 

「おい、いい加減に笑うのをやめろ。・・・お、ジェルミが帰ってきたみたいだぞ」

 

「もう、ごまかさなくてもいいですよ」

 

「違う、本当に帰ってきたんだ、ジェルミのバイクの音がした」

 

しかししばらく待っても誰も家に入ってこない。

 

「本当に本当だ」

 

疑いの目を向けられたテギョンがウソじゃないと抗議する。

ミニョが玄関のドアを開けるとそこにはポーチでうろうろと歩き回っているジェルミの姿があった。

 

「ほら、俺の言った通りだろ」

 

「ジェルミおかえりなさい。どうしたんですか?そんなとこで歩き回って、何か探し物ですか?」

 

「え?あ、別に何でもないよ。ミニョこそどうしたの、こんな時間にどっか出かけるの?」

 

「いいえ、オッパがジェルミのバイクの音がしたって言うんですけど、全然中に入ってこないからどうしたのかなと思って」

 

ねー、とミニョは抱きかかえているテジトッキに笑顔を向けた。

 

「ったく、どうして俺がジェルミの帰りを出迎えなきゃならないんだ」

 

表情を変えることができないテギョンはくりっとしたつぶらな瞳でブツブツと文句を言う。

 

「そ、そう、テギョンヒョンが・・・・・・」

 

「ご飯あっためますね」

 

「あ、いいよ、俺自分でやるよ。シヌヒョンとミナムももうすぐ帰ってくるみたいだから、一緒に食べるよ。片付けは俺たちがやっておくからミニョはもう休んで」

 

すぐに食べれますよーと踵を返したミニョの背中を、いいからいいからとジェルミが押す。二階へと上がっていくミニョを階段の下から見送ると、ジェルミは身を投げ出すようにソファーに崩れこんだ。

 

「あーやっぱりミニョ、まだテジトッキのことオッパって呼んでる。どうしよ~」

 

ミニョがテジトッキをオッパと呼ぶようになり、否定することも話を合わせることもできず、数日が経っていた。顔を合わせてもぎこちない会話しかできない。玄関でうろうろと歩き回っていたのもシヌとミナムがまだ帰ってないと判り、自分一人ではどう対応したらいいのか判らず、なかなか中に入れなかったから。

 

「でもミニョ、何かすごく元気になったみたい。こないだまで笑顔がぎこちなかったけど、さっきは今までのミニョに戻ったみたいだったし。テギョンヒョンがそばにいるって思うだけであんなに変わるなんて、本当にヒョンのことが好きなんだな」

 

それなのにまだテギョンは見つかっておらず、ミニョはテジトッキをオッパと呼び・・・・・・

 

「あー、俺はどうしたらいいんだ-」

 

ジェルミは頭を抱えた。

 

 

 

 

 

「それってそんなに重かったっけ?」

 

ソファーに身を沈め大きなクッションを抱えているジェルミからうなるような声が聞こえ、ミナムは首を傾げた。

 

「ミニョはまだあのぬいぐるみのこと、オッパって呼んでるのか?」

 

「おかえり。そうなんだよシヌヒョン、もしかしてずっとこのままなのかと思ったら、もうどうしたらいいのか判んなくて・・・」

 

テギョンが見つかったという連絡はまだない。それは明るい知らせも暗い知らせもどちらも。ただ、生きているならとっくにその連絡は入っていてもおかしくないくらいの日数は経っていた。

 

 

 

                  

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「ねぇねぇ、ミニョどうしちゃったのかな。テジトッキはぬいぐるみなのに話しかけてたよ、それにオッパって・・・」

 

事務所の一室でうろうろと歩き回るジェルミは不安な面持ちで爪を噛んでいた。

 

「事故現場の映像見てかなりショック受けてたし、見つかったっていう連絡はないし・・・ミニョの心が耐えられなくなったのかも」

 

「どういうこと?」

 

「あのぬいぐるみをテギョンヒョンだと思いこんでるんだよ。一応ぬいぐるみだって認識はしてるみたいだけど、ミニョにはテギョンヒョンに見えて、声も聞こえる」

 

「幻覚とか幻聴ってやつ?」

 

「よく判んないけど、脳の防御反応みたいな?俺たちの前じゃわざと明るく振る舞ってたけどずっと夜も寝れてなかったみたいだし、身体も心も限界だって脳が判断したんじゃないかな。昨日はぬいぐるみ抱いてぐっすり眠ってただろ」

 

ジェルミは昨夜のミニョの顔を思い出した。泣きはらしたのかまぶたと鼻は赤くなっていたが、テジトッキをしっかりと抱きしめている寝顔は穏やかで幸せそうに見えた。

 

「どうしよう・・・どうしたらいいのかな」

 

立ち止まっていた足が再び忙しなく動き出す。

 

「俺にも判んないよ。でもあのぬいぐるみがミニョの支えになってるなら、俺にはそれを否定なんてできない」

 

「それって、俺たちもテジトッキをテギョンヒョンとして扱えってこと?しゃべりかけたりするの?」

 

「それは・・・・・・俺だって判んないって」

 

楽しそうな顔でぬいぐるみに話しかけている姿は本当にテギョンを前にした時のミニョそのもので、ミナムもどう声をかけていいのか判らず、思わず目を逸らせてしまった。

もう出かけなきゃと半ば逃げるような形で合宿所を後にした三人だったが、これからミニョとどう接したらいいのかと頭を悩ませていた。

 

「こんなに役に立たないとはな」

 

二人の会話に耳を傾けていたシヌが周りには聞こえないくらい小さな声で、ポツリと呟いた。

毎日ミニョを慰め励まし、少しでも力になれたらと心を砕いてきたのに、ミニョが助けを求めたのがぬいぐるみだという事実にやるせない気持ちでいっぱいになる。自分たちには涙を見せようとせず、ぬいぐるみを抱きしめ大粒の涙を流していたのかと思うと、そんなに自分は頼りない、役に立たない存在なのかと情けなくて悔しかった。

どうしてミニョは自分を頼ってくれないんだろうか、そんな思いが心に広がる。しかし純粋にミニョの力になりたいという気持ちの奥に、特別な感情が潜んでいることに気づくと、それを振り払うかのようにシヌは頭を振った。

 

 

 

 

 

「フン、フフン、フンフン、フフン・・・」

 

鼻歌を歌いながらミニョが料理を作っている。それをテギョンはちょこんと座ったカウンターの上から眺めていた。

もしかしたら朝には消えてしまっているかもと思った意識は夜になってもテジトッキの中にしっかりとあり、その身体を自力で動かすことはできないが今もミニョと会話はできる。

何の前触れもなく人生の終焉を迎えてしまった身としては、たとえ身体が動かせなくてもミニョと会話ができるだけで幸せなのかもしれない。そう思うともっと何か話をしなければとは思うが、こんな姿でどんな話をしたらいいのか判らない。それに言葉は交わさなくてもこうしてミニョの姿を見ているだけで心が満たされていく。

とは言え、気にくわないこともある。それはまさに“今”だった。

ミニョは嬉しそうに料理を作っている。そのことはいい。問題はそれが他のメンバーたちのためだということだ。

 

「やけに楽しそうだな、俺は食べれないのに」

 

それはテギョンの身近にいる人間なら一度は聞いたことのある、誰でも判るくらい不機嫌な時の低い声。

 

「はい、オッパがそこにいますから。それだけで嬉しくてウキウキしちゃうんです」

 

しかし少し嫌みを含ませたテギョンの言葉に対する返事は、明瞭でストレートなものだった。

そのミニョの笑顔を見てテギョンは嫉妬なんて無意味だと思った。時間を無駄にしたくないとも。

 

「ミニョ、今日からは俺の部屋を使え」

 

「え?いいんですか?」

 

「そのかわりこれから毎晩一緒に寝るんだからな」

 

「はい!うふふっ、寝るまでずっとおしゃべりできるなんて楽しみです」

 

それはミニョの本心だった。

テジトッキの中にテギョンがいる。その意味を考えれば取り乱してしまいそうになる。

だから考えないことにした。

考えずに目の前のありのままを受け入れる。

見た目は変わったけど、やきもち焼きなところや時々少し意地悪になる口調は変わらない。優しいところも。

幸せだった。

他の人からは、そんなのはウソで自分をごまかしているだけだと言われるかもしれない。ただの現実逃避だと。

けれどミニョは今この“時”をこれ以上ないくらい幸せに感じていた。

 

 

 

。.:*゜゜*:..☆ 。.:*゜゜*:..☆ 。.:*゜゜*:..☆ 。.:*゜゜*:..☆ 

 

 

 

前回の記事の最後に、ブログ村のランキングポイントについてちょこっと呟いたんですが・・・

 

 

ビックリです!

見たことのない数字が😲💦

 

 

みなさん、ありがとうございます <(_ _)>

 

 

                  

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はぁ・・・

吸った息を吐くという動作は普通の呼吸と同じなのに、ため息というのはどうしてこうも暗い気分になるんだろう・・・とその日の朝、シヌは憂鬱な面持ちでお茶を淹れていた。いや、逆か、気分が沈むから、ただの呼吸がため息になってしまう。しかしそれが判っても明るい気分にはなれない。

 

「シヌヒョンがため息なんて珍しいね・・・って、理由も気持ちもよく判るけど。俺が代わりに言おっか?」

 

「いいや、俺が言うよ」

 

墜落事故から二週間。まだテギョンは見つかっていない。

光の見えない報告をアン社長から聞きそれを夜ミニョに伝えるのが年長者であるシヌの役目となっているが、昨夜はそれができなかった。

 

 

 

 

 

三人が帰ってきた時、家の中は暗かった。いつもなら起きて待っているミニョ。もし先に寝たんだとしても家中真っ暗なのはおかしい。ミナムが部屋をのぞいてみたがミニョの姿はなく、三人は顔を見合わせると家中を捜し始めた。

練習室、ピアノ室、一階のシャワールーム。リビング、キッチン、ぬいぐるみ部屋、音楽鑑賞室、テラス、屋上。

しかしどこにもミニョはおらず、ジェルミの目にうっすらと涙がにじみ出てきた時、そういえばまだあそこは捜してなかったとドアを開けたテギョンの部屋でミニョを見つけた。

ミニョはベッドで眠っていた。まぶたは赤く、頬には涙の痕が幾筋もあり、しっかりとぬいぐるみを抱きしめて眠っているミニョ。そのぬいぐるみがテジトッキという名前で、テギョンとミニョにとって特別な意味を持つものだということは三人も知っていた。その姿を見た瞬間、ジェルミの目から涙がこぼれ落ちた。

 

「ずいぶん泣いたみたいだな」

 

「俺たちの前では気を張ってるんだろう」

 

「くっ・・・ミニョがかわいそうだよ」

 

テギョンの夢でも見ているんだろうか、穏やかな顔で眠るミニョに三人は胸を痛めた。

 

 

 

 

 

ミニョが起きてきたら昨夜できなかった報告をしなければならない。たとえ前日と同じ内容でも・・・

そう思うと気が重かった。テジトッキを抱きしめテギョンのベッドで眠るミニョを見てしまったから尚更。

シヌはお茶をひと口飲み、暗く重い息を長く吐いた。

 

「おはようございます。ごめんなさい、昨日はいつの間にか寝ちゃったみたいで」

 

シヌのため息がミナムとジェルミにも伝染し、三人が無言でため息をついていると、ミニョが慌てた様子で二階から下りてきた。

 

「寝坊もしちゃったし・・・」

 

朝ご飯作れなくてごめんなさいと、しゅんとした顔で駆け下りてきたミニョはどこか昨日までとは違って見えた。

昨日までは笑顔を見せていても心の中を映し出す瞳は精彩に欠け陰りがあったのに、今はそこにわずかだが光が戻ったように見える。それはシヌの観察眼からそう思っただけだったが、他の二人にもはっきりと判る変化はミニョの腕の中にぬいぐるみがいたことだった。

ミニョはまるで小さな子どもがお気に入りのぬいぐるみを持ち歩くかのように、大事にテジトッキを抱えていた。

 

「気にしなくていいよ、たまには俺の作ったご飯食べて」

 

「わぁ、おいしそう。昨日寝ちゃったからご飯食べてなくて、起きたらすごくお腹すいてたんです」

 

「おかわりあるから」

 

「いただきます」

 

テーブルの上を見て顔を輝かせたミニョはテジトッキを壊れ物でも扱うかのようにそっと自分の隣に座らせると、そのテジトッキに向かって話しかけた。

 

「オッパも食べますか?」

 

三人がミニョを振り返った。

 

「この身体でどうやって食べろと言うんだ?」

 

「それもそうですね」

 

「それに腹はへらないみたいだから大丈夫だ」

 

「便利なんですね。じゃあ私がオッパの分も食べます」

 

「俺の分じゃなくてもいつもたくさん食べてるだろ」

 

「そんなことないですよ」

 

ニコニコしながらスプーンを口に運ぶミニョ。

三人はその様子をぎょっとした顔で見ていた。それはミニョが話しかけている相手がぬいぐるみだったから。そしてただ話しかけているだけでなく、ぬいぐるみをオッパと呼び、そこに向けられている眼差しはまぎれもなくテギョンを見ている時の目だったから。

三人は顔を見合わせた。お互いの顔には動揺の色がはっきりと浮かんでいる。

ミニョにはぬいぐるみがテギョンに見えていて、そのテギョンと会話をしているのか・・・?

 

「ねえミニョ・・・誰と、話してるの?」

 

他の二人が聞けずにいることをジェルミが聞いた。

 

「あの・・・すぐには信じられないと思うんですけど・・・この子はオッパなんです。私も昨日声をかけられた時はすごく驚きました」

 

「こんなこと普通じゃないし、ありえないとは思うが現実だ。みんなも受け入れてくれ」

 

ほんと、びっくりしたんですよとテジトッキに話しかけ、その後も何やらテジトッキと会話を続けているミニョを、うろたえた六つの目が見つめる。

三人にはテギョンの声は聞こえていなかった。

 

 

 

。.:*゜゜*:..☆ 。.:*゜゜*:..☆ 。.:*゜゜*:..☆ 。.:*゜゜*:..☆ 。
 

 

 

やったー、やっと10になったー

 

て、お話のことじゃなくて・・・

ランキングポイントのことです💦

 

 

私が参加してるカテゴリーは小説ブログの二次小説です。

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どうやら、長期間更新してないと入るポイントが減るみたいです。(知らなかったー)

しばらく更新を続けてたら、6、7、8・・・と徐々に増えていき、先日やっと1クリックが10ポイントになりました。

やったー😆

 

 

と、いうわけで・・・

 

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