自民党“人材標語”列伝 | 新労社 おりおりの記

自民党“人材標語”列伝

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自民党は毀誉褒貶著しい保守政党。また政権与党です。共産党以外の他が変貌著しいのに比べると、大所帯にもかかわらず、消えることなく、分派は出ても新しい考えを取り入れて絶妙の政治バランスで政権を失ってもまた復帰し、保ち、今日まで持っています。

 

その原因は分裂に至らない人材の幅が大きく、包容力があるのが一因です。派閥の長でも族議員とも限らない、優秀なヒトをまとめた「標語」が多いのが自民党の特徴の1つです。そんな標語をまとめてみました。自民党の前身(吉田自由党と鳩山民主党)も含みます。(敬称略。カッコ内は代表的な地位肩書)

 

👤 安倍派5人衆・・・安倍元首相亡き後の集団指導体制の立役者

 

松野博一(官房長官)、西村康稔(経産相)、萩生田光一(政調会長)、高木毅(国対委員長)、世耕弘成(経産相)

 

「裏金事件」ですっかり“元”になりましたが、他派閥首相のもとでも要職を歴任できる人々です。総裁候補、また統一教会などウラの政治問題で名前が挙がったことのあるヒトもちらほら。経済通、IT通と専門家もそろっているのです。

 

 

👤 小石河・・・新しい時代の政治家同盟

 

小泉進次郎(環境相)、石破茂(幹事長)、河野太郎(外相)

 

岸田首相誕生前後にささやかれた「政治家像」この3人でツルんだこともあるのですが、確かに総理・総裁はうかがうものの、また2世3世議員ではあるものの「永田町の論理」を突き崩すような新しい観念で行動している政治家のイメージです。「体制派」と違うのですが「反体制」でもない、かつてのYKKを思わせる人々です。
 

👤 河泉敏信・・・ポスト安倍首相と言われた人

 

河野太郎(外相) 小泉進次郎(環境相) 茂木敏充(幹事長) 加藤勝信(厚労相)。

 

岸田さんや菅さんは俎上に上らなかったころは、この4人でした。しかし国民的人気と永田町の論理とはかみ合わないことが多いのです。上に昇るヒトはやっぱり欠点をつつかれて、マスコミの“餌食”になることも多いのです。

 

 

👤 細田派四天王・・・これも安倍さん、菅さんの後継者

 

萩生田光一(政調会長)、下村博文(政調会長)、西村康稔(経産相)、松野博一(官房長官)

 

生前の安倍さんが名前を挙げた、ポスト菅首相の面々。岸田さんが首相になって、あまりマスコミには取り上げられず、目立ちませんでした。稲田朋美(防衛相)や福田達夫(政調会長)が挙がったこともあります。

 

👤 岸破義信・・・これはちょっと前のポスト安倍首相

 

岸田文雄(首相) 石破茂(幹事長) 菅義偉(首相) 加藤勝信(厚労相)。

 

長期政権では、誰がそれを引き継ぐのか?よほどのヒトでないと後釜にはなれまい、という期待感と不安の入り混じった感情のもと、この予測は当たりました。

 

 

👤 麻垣康三・・・ポスト小泉首相

 

麻生太郎(首相) 谷垣禎一(総裁) 福田康夫(首相) 安倍晋三(首相)。

 

この予測も当たりました。民主党政権も含めて、この4人で「小泉劇場」の修正、14年間の「アベノミクス」時代を作りました。これまでの自民党領袖と比べて、別派閥ですがお互いに仲が良く、トップを退いても副総理や法相としてあとの首相を支えたりしたのです。

 

👤 YKK・・・20世紀末の有望な若手政治家

 

山崎拓(副総裁) 加藤紘一(幹事長) 小泉純一郎(首相)

 

派閥から総理総裁が出るものですが、中には実力者同士が集まった勉強会のような小集団が力を持つこともあります。政策通の山崎拓さんや加藤さんも首相になってもおかしくない人材でした。森喜朗元首相を加えたMYKKに高村元副総裁を加えMY3Kと称されることもありました。ミレニアム(西暦2000年)でネオ・ニューリーダーの中から誰が先んじるか期待されていた時代でした。

 

 

👤 ネオ・ニューリーダー・・・ニューリーダーのお鉢を継ぐ若手政治家

 

小沢一郎(幹事長) 橋本龍太郎(首相) 羽田孜(首相) 森喜朗(首相) 

三塚博(幹事長) 藤波孝生(官房長官)河野洋平(衆議院議長) 海部俊樹(首相)

 

1990年代の実力者。首相もゾロゾロ出ています。派閥や分裂した新党を率いるトップの器が多かったのです。もとの「総裁が出る派閥」竹下派、(お父さんの)安倍派、中曾根派、宮沢派、河本派から出ていました。

 

👤 安竹宮≒ニューリーダー・・・「三角大福中」の後継実力者

 

安倍晋太郎(幹事長) 竹下登(首相) 宮澤喜一(首相) 渡辺美智雄(副総理)

 

この人たちも田中角栄や福田赳夫などの実力者の後を継いで、首相になる器でした。ただ安倍さん、ミッチーさんは国民の輿望も高かったのに、健康に恵まれず、涙をのみました。

 

 

👤 金竹小・・・1990年前後の自民党トロイカ体制。

 

金丸信(副総理) 竹下登(首相) 小沢一郎(幹事長)

 

コンチクショーと、ちょっとダークなイメージで語られたリクルート事件当時の実力者たちの名称。「おカネ儲けがうまい」とたたく材料になりました。

 

👤 竹下派七奉行・・・竹下さんの後は誰が継ぐか?

 

小渕恵三(首相) 梶山静六(幹事長) 橋本龍太郎(首相) 

渡部恒三(衆議院議長) 羽田孜(首相) 奥田敬和(運輸大臣) 小沢一郎(幹事長)。

 

当時一世を風靡した竹下派。どの人も一派を率いるカリスマ性があり、田中元首相の影響を色濃く受けています。首相のみならず、派閥の長や新党の党首クラスばかりです。

 

👤 安倍派四天王・・・安倍晋太郎派の後継者たち。

 

森喜朗(首相) 加藤六月(政調会長) 塩川正十郎(財務相) 三塚博(幹事長)。

 

竹下派に対抗する40年前の安倍派(元首相のお父さんの派)も負けてはいない。親分の安倍晋太郎元外相は首相になれませんでしたが、これら弟子の人々が21世紀以降安倍派の時代になる下地を作り、息子は最長期政権を維持しました。晋三総理のころは「細田派四天王」が擬せられましたがこのころの「四天王」をマネたのです。

 

👤 大中小・安竹小・・・ポスト田中角栄

 

大平正芳(首相) 中曽根康弘(首相) 小坂徳三郎(運輸大臣)

安倍晋太郎(幹事長) 竹下登(首相) 小坂徳三郎(運輸大臣)

 

若くして首相になった角さんのようにドンドン世代交代という意味で挙げられた若手政治家です。70歳になろうとしていた次々期首相の福田さん、田中後継になった三木さんは外されています。首相になったのは3人でした。

 

👤 三角大福・・・佐藤長期政権の中、大派閥を率いる実力者たち。

 

三木武夫(首相) 田中角栄(首相) 大平正芳(首相) 福田赳夫(首相)。

 

佐藤栄作の一強支配のあと、出てきた実力者。すべて首相になり、第2次田中内閣ではすべてのヒトが顔をそろえました。1つにまとまると、分裂し、また分かれることを繰り返して、派閥内で分裂を収めてきた自民党ですが、この4人の派閥抗争で国鉄改革や消費税の問題、IT化に至るまで、高度成長以後の施策が遅れたことが一番の憾みでした。三角大福中と中曽根康弘元首相を付け加える場合もあります。

 

(前列左から中曽根通産相、三木副総理、田中首相、福田蔵相、大平外相)

 

👤 佐藤派五奉行・・・長期政権を支えた実力者。

 

田中角栄(首相) 保利茂(衆議院議長) 

橋本登美三郎(幹事長) 愛知揆一(蔵相) 松野頼三(総務会長)。

 

7年8か月の長期政権、佐藤栄作の身内でトップを継ぐのは誰か?しかし当の佐藤首相の本意は違ったのが深いところでした。佐藤首相の後は、派閥より保守的政策で共通する岸信介の後継者、福田赳夫が擬せられ、田中角栄は後年の竹下登と同じように、自力で総理・総裁の座を勝ち取りました。

 

👤 8人の侍・・・吉田茂多数派に属しなかった気骨ある政治家。

 

三木武吉(総裁代行) 河野一郎(副総理) 松田竹千代(衆議院議長) 松永東(衆議院議長 )

中村梅吉(衆議院議長) 山村新治郎(行政管理庁長官) 池田正之輔(科学技術庁長官) 安藤覚(衆議院外務委員長)

 

バカヤロー解散の結果、吉田茂の自由党はまずまずの成果で、反吉田派の切り崩しを行いました。切り崩されなかった8人が新党「日本自由党」を結成したのです。どん底かと思われましたが、この1年数か月後、反吉田の政権ができました。三木武吉の政治技術の賜物だったでしょう。折から黒澤明監督の「7人の侍」が上映中でした。

 

(自民党発足の功労者:三木武吉)

 

👤 吉田13人衆・・・吉田茂長期政権を支えた「吉田学校」の弟子たち。

 

益谷秀次(衆議院議長) 林譲治(衆議院議長) 周東英雄(農水相) 小金義照(郵政相) 

池田勇人(首相) 佐藤栄作(首相) 保利茂(衆議院議長) 大橋武夫(運輸相) 橋本龍伍(文相) 愛知揆一(蔵相) 福永健司(衆議院議長) 小坂善太郎(外相) 田中角栄(首相)

 

いわゆる「吉田学校」戦後政治の主流をなす政治家が大勢出ました。現在の岸田さんと麻生さんは池田勇人の系統ですが、安倍さん、小泉さん、福田さんは吉田学校でない岸信介系でした。今の政界は吉田派と戦前からの岸派の末裔たちのせめぎあいになっています。

 

個々の議員でなく、議員のある集団としてみると、戦後政治史がより立体感が増して見えてきます。「集団の歴史」を紐解けば、派閥とかえこひいきとかエゴとか権力にしがみつくとか、マイナス面も含め、賛美されがちな個人史よりも、現実のカネや人脈にまつわる政治力学が見えてくるところが面白いのです。