昨年11月のコロナ禍での来日が大きな話題となったウィーン・フィル。今年はリッカルド・ムーティさんと来日しました!そのオープニング・コンサートを聴きに行きました。

 

 

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

(サントリーホール)

 

指揮:リッカルド・ムーティ

 

シューベルト/交響曲第4番ハ短調「悲劇的」

ストラヴィンスキー/ディヴェルティメント~バレエ音楽『妖精の接吻』による交響組曲~

メンデルスゾーン/交響曲第4番イ長調「イタリア」

 

 

 

リッカルド・ムーティさんとウィーン・フィルの演奏は、ありがたいことに、これまで何度も聴く機会に恵まれました。その中でも特別な思い出が、2018年年始に聴いたウィーン・フィルのニューイヤーコンサートと、2017年夏にザルツブルク音楽祭で聴いたヴェルディ/アイーダ(オペラ公演)。ムーティさんとウィーン・フィルの長年に渡る信頼関係のもと、いずれも最高の演奏でした!今日も楽しみでなりません。

 

(参考)2018.1.1 リッカルド・ムーティ/ウィーン・フィルのニューイヤーコンサート

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12347172207.html

 

(参考)2017.8.19 ヴェルディ/アイーダ(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12323104468.html

 

 

 

まずはシューベルト。交響曲第4番は、第7番(未完成)、第8番(グレート)を差し置いて、個人的にシューベルトで最も好きな曲。2007年のユベール・スダーン/東響、そして昨年の鈴木雅明/N響の演奏が強く印象に残っています。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2020.10.28&29 鈴木雅明/N響のシューベルト2番&4番

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12634740488.html

 

 

第1楽章は4拍子(あるいは8拍子とも)の切迫感のあるリズムが特徴ですが、そのことをほとんど感じずエレガントで温かい。第2楽章は途中の魂の飛翔を感じる伸びやかな場面が大好きですが、逆にごく弱音に抑えていたのが印象的。優雅ですが、諦めの境地すら感じる長調と思いました。

 

美しい第3楽章の後、第4楽章もそんなには追い込まずに悠々と進みます。途中、弦が刻んで切迫感を感じさせる場面も一定のリズムをキープ。デモーニッシュかつニヒルな雰囲気を帯びた木管がよく聴こえてきました。ユベール・スダーンさんの時はここでオケを抜群に追い込んでいましたが、ムーティさんは左手でよく歌うように、と促していたのが好対照。

 

主題が長調に転じる前の高なるフルート、畳みかける場面でのトランペットの強調と、聴き応え十分でしたが、最後まで悠然と進めたシューベルト!鈴木雅明さんとN響の演奏とは正反対の、あたかも別の曲のように感じた4番でした!

 

 

実は、ムーティさんとウィーン・フィルのシューベルト4番は、過去に聴いたことがあります。2014年のザルツブルク音楽祭での公演です。

 

(参考)2014.8.17 リッカルド・ムーティ/ウィーン・フィルのシューベルト&ブルックナー(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11918024782.html

 

 

その時には、「ややゆっくり目のテンポ」「自然体で素直に曲の魅力が感じられるような演奏」「何か特別なことをやっている訳ではないのに、終わってみると『素晴らしい曲を聴いた!いい演奏だった!』と思うような」と感想を書いていますが、今日も大枠の感想は変わりません。

 

何か悠久のウィーン・フィルのシューベルト4番の演奏史を感じるような、特別な時間でした!と同時に、私の脳裏に深く刻まれた、ユベール・スダーン/東響、鈴木雅明/N響の演奏もまた素晴らしい。いろいろな演奏を楽しめて、本当にありがたいことだと思います。

 

 

 

続いてストラヴィンスキー。ムーティさんこの曲大好きなんでしょう。御年80歳の身体をよく使って、踊りながらのノリノリの演奏!ウィーン・フィルのホルンやトロンボーンが抜群に上手く、チェロ→ハープ→クラリネットの温かいリレーも素晴らしい!

 

この演奏を聴いて、ムーティさんはつくづく劇場の人なんだなと感じました。そして、ウィーン・フィルはさすがオペラを得意とする楽団とも。それにしても、なぜか2年連続でウィーン・フィルのストラヴィンスキーを聴いた件!笑(昨年は「火の鳥」) ストラヴィンスキー没後50周年の良い記念となりました。

 

 

 

後半はメンデルスゾーン。実は私はこの交響曲第4番「イタリア」が苦手…。これまで、この曲がメインのコンサートに行った試しがありません。

 

短調から始まり、長調で輝かしく終わる第3番「スコットランド」は大好物ですが、「イタリア」は弾けるような長調で始まるのはいいなと思うものの、短調で終わることも含め、何となく「イタリアの良さ」をあまり感じないからです…。果たしてムーティさんとウィーン・フィルの演奏だと、どう聴こえるでしょうか?

 

 

第1楽章は弾けるような、というよりはしっとり優雅な演奏。途中の短調の場面の構築感が見事でした。第2楽章は厳かなウィーン・フィルの演奏に、古(いにしえ)のイタリアの教会を思い描きます。第3楽章は弱音を駆使して、つましさを大いに感じました。

 

第4楽章はイタリアの踊り、サルタレロの音楽。いよいよきた!という感じで速いテンポになり、劇的な展開を見せます。細かい旋律を吹く、ウィーン・フィルの木管のみなさんがまた上手いこと!

 

この劇的な短調の音楽を聴いているうちに、これはヴェルディの音楽にシンクロする部分があるな、この曲はイタリアの陽光だけでなく、パンフレットのオットー・ビーバさんの解説のように、「イタリアの影」の部分も描いているのでは?という印象を持ちました。

 

さすがはムーティさんの指揮。まだ十分開眼できた訳ではありませんが、これまでになく、この曲をぐっと身近に感じることができました。

 

 

 

そして、第4楽章にはヴェルディの音楽を思わせるものがある、と思っていたら…、何と!アンコールはそのヴェルディのオペラ「運命の力」序曲!ウィーン・フィルのアンコールの定番はヨハン・シュトラウスなので、これには意表を突かれました!

 

冒頭のトロンボーンによる運命の動機、3音の連呼の迫力!そして第4幕のドン・アルヴァーロのアリアの旋律を奏でる切ないクラリネットと、その後に湧き上がる弦楽によるレオノーラの祈りの音楽の繊細さ!何もかもが素晴らしい!

 

そして、最後、レオノーラの祈りの音楽が盛り上がるシーンでは、ムーティさん渾身のフォルテ&迫力の追い込み!それを抜群に音にするウィーン・フィル!これです、これ!鳥肌立ちまくり、めっちゃ感動しました!

 

 

 

リッカルド・ムーティさんとウィーン・フィルのコンサート、とても感動的なコンサートでした!よくよく考えてみれば、ムーティさんとウィーン・フィルの長年の関係を祝う、ウィーンの音楽(シューベルト)とイタリアの音楽(イタリア交響曲&ヴェルディ)の組み合わせのプログラムでしたね。

 

さらには、私には、コロナ禍を感じさせる音楽(オットー・ビーバさんの解説によれば、シューベルト4番の副題「悲劇的」は、1815年のインドネシアの火山の大噴火による、1816年のヨーロッパの凶作・飢饉・大規模な物価上昇に由来。そして、イタリア交響曲の影の部分)と、コロナ禍からの解放を予感させる音楽(レオノーラの祈りから最後に輝かしい長調で終わる「運命の力」序曲)の組み合わせにも思えました。

 

今年の年始のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートも振ったムーティさんは、その時に、「音楽は、精神を健康に保つのに必要なのです」というメッセージも発しました。コロナに負けない力強いメッセージ。今日のコンサートでも、しかと受け取りました!

 

 

 

(写真)そして、フランツのお約束、笑。このコンサートに合わせて、オーストリア料理を食べて来ました。合鴨クヌーデル入りさつまいものクリームスープとグリューナーフェルトリナー(オーストリアの白ワイン)。ゼンメル(オーストリアのパン)を見ると、テンションが上がります!

 

(写真)モーツァルトトルテ。素晴らしい音楽に素晴らしい食事とお酒。これに勝るものはありません!