先週のドイツ・プロが素晴らしかったヘルベルト・ブロムシュテットさんとN響。今日はステンハンマルとブラームスのプログラムを聴きに行きました。

 

 

NHK交響楽団第1925回定期演奏会Apro.

(NHKホール)

 

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

ピアノ:マルティン・ステュルフェルト

 

ステンハンマル/ピアノ協奏曲第2番ニ短調

ブラームス/交響曲第3番ヘ長調

 

 

(参考)2019.11.6&7 ヘルベルト・ブロムシュテット/N響のベートーベン&R.シュトラウス&ワーグナー

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12543250582.html

 

 

 

前半はステンハンマル。当初の予定では大好きなレーガー/ピアノ協奏曲でしたが、ピアノのピーター・ゼルキンさんが健康上の理由により、キャンセルとなりました。ピーター・ゼルキンさんの一日も早い回復を祈っております。

 

レーガーのピアノ協奏曲のような巨大な作品をレパートリーにしているピアニストは限られるのでしょう。ピアノがマルティン・ステュルフェルトさんに代わるとともに、曲目もステンハンマル(1871-1927/スウェーデン)に代わりました。でも、ステンハンマルもとても良さそう。というのも、昨年のブロムシュテット/N響のステンハンマル/交響曲第2番が非常に素晴らしかったからです。第3楽章のリズミカルな音楽に、91歳にしてブロムシュテットさんが踊るように指揮をしていたお姿が、未だに脳裏に浮かびます。

 

(参考)2018.10.25 ヘルベルト・ブロムシュテット/N響のベートーベン&ステンハンマル

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12414460652.html

 

 

 

そして、そのステンハンマル/ピアノ協奏曲第2番を予習で聴いてみたところ…、

 

何この名曲!!!めちゃめちゃロマンティック!!!

 

こんな素敵なピアノ協奏曲がまだあったのか!すぐに虜になって、20回くらい聴いてコンサートに臨みました。生のピアノとオケで聴くのが、楽しみ楽しみで仕方ありません!

 

 

 

第1楽章。叙情的なピアノのソロで始まります。途中にはジャズのような旋律も。その後のラフマニノフに似た、ダイナミックでロマンティックなピアノが堪らない!マルティン・ステュルフェルトさんのニュアンス溢れるピアノに魅了されます。

 

その後は、オケによるベートーベンを思わせる運命的な主題も聴こえ、葛藤の音楽が続きます。オケとピアノががっぷり四つで聴き応え満点!この辺りは曲想的には、プログラムにもあったようにブラームスのピアノ協奏曲を連想しますね。

 

オケの嵐が過ぎた後、まるで悲しみを引きずりつつ、覚悟を持って進んで行くようなオクターブのピアノ!そこに突き刺すように差し込む、N響の厳しい弦!何という印象的な音楽!

 

 

第2楽章。軽快で逃げていくような音楽。巻き上がるような旋律は、N響の木管のみなさまの名人芸が素敵。その後に、スクリャービンばりの半音階の和声のメランコリックな音楽が、うねるように続いて素晴らしい!後奏のピアノもスクリャービンを思わせました。

 

 

第3楽章。寒さに震える中、希望の訪れを待つようなピアノの叙情的な独奏が素敵。ためらうように入るステュルフェルトさんのピアノのニュアンスに痺れます。途中、第4楽章の明るい主題が一瞬顔を出し、期待を抱かせる瞬間が素晴らしい!

 

ブロムシュテットさんの指揮のもと、N響のニュアンスに溢れた伴奏が素晴らしく、オーボエの印象的なソロも心に響きます。ラストの第4楽章になだれ込む場面の、長調がだんだん差し込む音楽!何という期待感!ライヴを聴く醍醐味!

 

 

第4楽章。希望に満ちあふれた冒頭!印象的なピアノによる鳥が喜び鳴くような主題。メシアンをも彷彿とさせます。この楽章のピアノのキラキラ感、めくるめく展開、これでもかと盛り上がる祝福の音楽は、言葉を失うほどの素晴らしさ!

 

リスト/エステ荘の噴水や、サン=サーンス/交響曲第3番第2楽章第2部のピアノにも似ているような気がします。最後の方のピアノのきらびやかな高音の連続は、一体どうやって弾いているんでしょうか?最後に第3楽章の短調の主題が金管で回帰するのも味わい深い。ラストは軽やかに終わりました!ブラボー!!!

 

 

 

いや~、予習の段階でもかなりの手応えを感じていましたが、ステンハンマルのピアノ協奏曲第2番、マルティン・ステュルフェルトさんの抜群のピアノ、ヘルベルト・ブロムシュテットさんとN響の万全のオケで、大変見事な、極めて感動的な演奏でした!

 

 

アンコールは1日目がステンハンマルの幻想曲、2日目がブラームスの間奏曲。とても雰囲気たっぷりの素敵な演奏でした。ステンハンマルは独特な和声、ロマンティックだけどもの悲しい。非常に魅力的なピアノ曲。こうなってくると、ステンハンマルのピアノ曲も、何か弾きたくなってきます。おっと、今は寄り道せずに、ハノンの練習に集中しましょう~!(笑)

 

 

 

(写真)ステンハンマルの故郷、ストックホルムの王立公園にあった素敵な彫刻の噴水。私は秋に訪れましたが、春の陽光に照らされた噴水が、第4楽章のきらきら感に合うような気がします。

 

 

 

後半はブラームス。非常に格調高く、構築感もあり、メリハリやニュアンスも十分。ものの見事なブラームスでした!

 

何よりブロムシュテットさんの指揮が素晴らしい!それこそ、枯淡の境地のブラームスを聴かせてもいいお年になってきていると思いますが、全く枯れることなく、活き活きとして瑞々しさを感じさせる指揮には本当に驚かされます。

 

N響もよく鳴らして、充実の響き、聴き応え十分でした。指揮者とオケの一体感を大いに感じた演奏でしたね。

 

 

それにしても、ブラームス3番は私にとって難しい曲です。なかなかイメージが掴めないので、一昨年には、作曲の地ヴィースバーデンに行って、3番が作曲されたブラームスの家も訪れました。

 

(参考)2017.8.11 ヴィースバーデン観光(ブラームス交響曲第3番ヘ短調&ラインガウ・ワイン祭り)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12304111187.html

 

しかし、ペルチャッハに行って2番への理解が大いに深まったのとは異なり、ヴィースバーデンに行っても3番のイメージはいま一つ湧かず…。だからこそ、この時期、50歳のブラームスが魅了されていた26歳のアルト歌手、ヘレミーネ・シュピースの存在が鍵なんだと思います。

 

今回はそのことを意識しながら、注意深く聴いたところ、各場面で様々な感情が思い浮かんできて、いろいろと収穫を得ることができました。特に第4楽章の最後の最後、長調になる場面は、ブロムシュテット/N響の神々しいばかりの演奏がとても印象に残りました。まだまだ3番は私にとって手強い曲ですが、こうして素晴らしい実演に触れることで、理解も深まっていくことでしょう。

 

 

 

ヘルベルト・ブロムシュテットさんとマルティン・ステュルフェルトさんとN響のコンサート、ステンハンマルの名曲との出逢い、しみじみ味わい深いブラームス、非常に充実のコンサートでした!

 

実は土曜日に1日目を聴いて、当初、日曜日は他の公演に行くことを考えていましたが、結局、リピートしてしまいました(笑)。素晴らしい公演を2回聴けて大いなる喜び!特にステンハンマルは二度と聴けないかも知れませんからね。

 

観客のみなさまも、かなりの手ごたえを感じられていたようで、盛大な拍手で迎えていました。そしてコンマスのマロさんがいつにも増して、オケを立たせずにブロムシュテットさんを讃えていたのは胸の熱くなるシーン。

 

1日目はそれにブロムシュテットさんが感激されてか、何と、N響では非常に珍しいアンコール(第3楽章)までありました!最後、2人がハグしていたのは感動的。アーティストがお互いを讃え合う光景は本当に美しいものです。