ヤクブ・フルシャさんがN響に客演するコンサートを聴きに行きました。ヴェロニク・ジャンスさんのベルリオーズも楽しみです!

 

 

NHK交響楽団第1909回定期演奏会

(NHKホール)

 

指揮:ヤクブ・フルシャ

ソプラノ:ヴェロニク・ジャンス

 

R.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」

ベルリオーズ/叙情的情景「クレオパトラの死」

ヤナーチェク/シンフォニエッタ

 

 

 

まずはR.シュトラウス。とても立派な演奏でしたが、今日のプログラムの中では目的意識が薄かったためか、4月に入って連日の残業の疲れが出たのか、それ以上の感想は思い浮かんできませんでした、ごめんなさい。

 

 

続いてベルリオーズ。これはヴェロニク・ジャンスさんの美しいフランス語の歌に大いに魅了されました!N響も好サポート。ベルリオーズ26歳の作品ですが、しっかりベルリオーズしているところに萌えました(笑)。ベルリオーズ・イヤーに貴重な曲が聴けてありがたい限り。ナイル、ファラオ、イシス、オシリスという単語を聴くと、アイーダや魔笛を連想しますね。

 

 

後半はシンフォニエッタ。この曲は昨年9月のサー・サイモン・ラトル/ロンドン交響楽団による最高の金管の演奏が印象に残っています。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2018.9.24 サー・サイモン・ラトル/ロンドン交響楽団のヤナーチェク/シンフォニエッタ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12408007757.html

 

 

注目の冒頭のファンファーレ。N響の金管のみなさまによる素晴らしい演奏!広いNHKホールに見事に響き渡らせます!決まった!そして、「城」「王妃の修道院」「街路」「市庁舎」と音楽が進んで行きますが、ロンドン交響楽団の音の饗宴の演奏に対して、N響はどこかしっとりとして陰影に富んだ、とにかく曲想に馴染む演奏です。

 

それもそのはず。この曲はブルノのまちをイメージしてヤナーチェクが書いた曲ですが、指揮者のヤクブ・フルシャさんはブルノのご出身なんです。つまり、フルシャさん以上にこの曲を上手く振れる人は世界にいない、と言っても過言ではないでしょう。ブルノは一度まち歩きをしただけですが、プラハとは対照的に、どこかひなびた雰囲気のところなど、心に沁みた演奏でした。

 

最後のファンファーレもN響は見事に決めました!やったー!金管のみなさん、最高!おそらく日本のオケによる最高峰の演奏と思われるシンフォニエッタ、存分に楽しめました!

 

 

 

さて、ホールに入って、プログラムを受け取ったら、今月はずしりと分厚い内容。2018年の最も心に残ったコンサートの結果発表があったからです。私はランキングには興味がありませんが、その他の感想が興味深かったので、いくつかご紹介します。


 

◯数年ぶりに(東京に)帰ってきてひさびさに生演奏を聴けたときは、全身が感動で震えたのを覚えています。

⇒これは本当によく分ります。

 

◯今年の収穫は、広上さんのアメリカ音楽プロ、ヴェデルニコフさんのロシア音楽プロです。

⇒全く同感!両プログラムとも本当に素晴らしかったですね。そして、私はこれらに加えて、10月のブロムシュテットさんのステンハンマルも隠れた名曲を教えてくれた素晴らしいコンサートだと思いました。

 

(参考)2018.10.25 ヘルベルト・ブロムシュテット/N響のステンハンマル2番

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12414460652.html

 

(参考)2018.11.25 広上淳一/鈴木優人/N響のバーバー&コープランド&アイヴズ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12421585090.html

 

(参考)2018.12.1 ヴェデルニコフ/コロベイニコフ/N響のスヴィリドフ&スクリャービン&グラズノフ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12423242832.html

 

◯《ウエスト・サイド・ストーリー》は私の期待をはるかに凌駕する演奏だった。(中略)その感動は途中で涙を抑えることができないほどだった。

⇒私もバーンスタイン生誕100周年に聴けて感激して、涙が溢れて仕方なかったコンサートでした。涙を流す理由は人それぞれ。聴衆の数だけ、ストーリーがありますね。それにしてもレニーの音楽は感動的。先週9日のエリーザベト・クールマンさんの公演でのサムウェアもめっちゃ感動的でしたね。なお、昨年YouTubeで見つけた動画の中でも、特に感動的だったものを改めてご紹介します。

 

(参考)2018.3.4 パーヴォ・ヤルヴィ/N響のバーンスタイン/ウエスト・サイド・ストーリー

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12357596920.html

 

(参考)レナード・バーンスタイン/ウェスト・サイド・ストーリーより「ア・ボーイ・ライク・ザット」「アイ・ハヴ・ア・ラヴ」

https://www.youtube.com/watch?v=UEqM5tsbgzg (6分)

※Gabrielle Howarthさんの公式動画より。Gabrielle Howarthさんのアニタ、Kristina Coiaさんのマリア。アメリカの高校生の公演とは思えない超感動的なシーン!

 

◯7月のN響松山定期演奏会でのブラームス《第1番》。ホルンセクションの音圧に圧倒されました。(中略)私もホルン頑張ります!

⇒ホルン、頑張られてください!応援しています!
 

◯亡き父が長年定期会員であったN響の公演に、父の年代になった私も通うようになりました。(中略)幼い頃から慣れ親しんだN響をこれからも楽しんでいけたらと思っております。

⇒いいお話ですね。ウィーン・フィルの定期演奏会は全然空きができないことで有名ですが、親から子へと会員券が受け継がれていくからだそうです。N響の定期演奏会の場合は適度に空きがありますが、逆に学生さんなど若い方々が沢山聴きに来られるといいなと思っています。
 

 

 

そして、プログラムの後ろの方には「シリーズ オーケストラのゆくえ」の記事の中で、ライナー・キュッヒルさんのお話がありました。さすがはウィーン・フィルの元筆頭コンマス!現代の指揮者のことをかなり厳しくおっしゃっていますが(笑)、私が特に興味を持って読んだのは以下の部分でした。

 

 

◯日本の多くのオーケストラがすでに十分な発展を遂げ、いくつかの団体は世界のトップクラスに比してまったく遜色のない演奏水準を備えています。国外には依然、「日本のオーケストラは音の個性に乏しい」といった指摘あるいは先入観がありますが、私の耳には日本各地の祭りの伝統や、宮中の儀式のエコーがはっきりと聞こえます。これは明らかに、ウィーン・フィルとは異なる響きの個性です。

 

◯いくつかの名門楽団は世界の優秀な音楽家を獲得しようと、国際オーディションを繰り返した結果、かつて固有だった響きの個性を失いつつあります。この点、日本のオーケストラは言語や地政学の問題もあって、日本人の割合が多いままに構成され、世界的にみても優れた奏法の一体感があります。

 

◯ウィーンから来た私が予言するのも何ですが、21世紀はN響をはじめ、日本のオーケストラが一段と強い個性を発揮して、世界に羽ばたく時代といえるでしょう。

 

 

これは近年、私が感じていることと似た内容だったので、あのキュッヒルさんがそう思われている!と聞いて、本当に嬉しくなりました。私は東京のオケの良さや個性は、先日のニューヨーク・フィルの記事の中でも書いたように、日本人の和の心ならではのハーモニー、指揮者の意図をしっかり音楽に表わそうとする順応性や真面目さ、と思っていますが、キュッヒルさんはその響きの中に、「日本各地の祭りの伝統や、宮中の儀式」まで聴き取られているとは!本当にさすがだなと思いました。

 

日本のオーケストラが、シングルモルトウイスキー山崎のように世界に羽ばたく時代となるかどうかは、オーケストラのより一層の切磋琢磨はもちろんですが、それを温かく見守る聴衆の役割も大きいように思います。東京のオケの一人のファンとして、今後も東京の素晴らしいオケを盛り立てていくことに、少しでも尽力できれば!と改めて強い気持ちを持ちました。