先週ハンス・ロットが素晴らし過ぎたパーヴォ・ヤルヴィさんとN響。今日はアレクサンダー・ガブリリュクさんを招いてのロシア・プロです。

 

 

NHK交響楽団第1907回定期演奏会Cpro.

(NHKホール)

 

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

ピアノ:アレクサンダー・ガブリリュク

 

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番ハ短調

プロコフィエフ/交響曲第6番変ホ短調

 

 

このコンサートはもともとはカティア・ブニアティシヴィリさんが出演予定でしたが、健康上の理由によりキャンセルとなりました。ブニアティシヴィリさんのご回復を心よりお祈りします。

 

しかし、その代役がアレクサンダー・ガブリリュクさんとは凄い!今をときめく伸び盛りの若手の実力派、N響はよく掴まえましたね。奇しくも昨年の浜松国際コンクールの歴代優勝者のガラ・コンサートでもラフマニノフ2番を聴いたばかりです。今日はどんな演奏でしょうか?

 

(参考)2018.9.17 覇者たちによるコンチェルトの饗宴(第10回浜松国際コンクール開催記念)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12405914868.html

 

 

 

前半はそのガブリリュクさんによるラフマニノフ2番。第1楽章。冒頭のアルペジオはガツン、ガツンという音とともに最低音の大迫力!演奏前の調律で、低音部の調律が綿密になされていた理由がよく分りました(笑)。しかし聴き進めると、ガブリリュクさんは浜松で聴いた時よりも全般的にに叙情的な雰囲気の演奏です。

 

第2楽章。ここもプロコフィエフの2番を得意とするガブリリュクさんの豪腕一直線のピアノ、というよりは、そこここでニュアンスを感じるピアノ。ただし中間部の盛り上がりは一直線に進んでいく清々しさ。ガブリリュクさんのピアノは本当に聴き応えがあります。

 

第3楽章。前半はピタピタッと決まる完璧なアルペジオが頼もしいピアノ。そして最後に主題が帰って盛り上がる前の大アルペジオ&同音連打で高まる場面は、ほとんど史上最速で突っ切りました!最後も華々しく盛り上がって終了!大いに魅了された素晴らしいピアノ!

 

 

アンコールのヴォカリーズも、硬質のタッチの中に叙情的な歌、高音の装飾音のきらめきが本当に見事。ガブリリュクさんのピアノの成熟を思わせた、素敵な客演でした。

 

 

 

後半はプロコフィエフの6番。私はプロコフィエフの7つの交響曲の中では、鉄と鋼でできていて、フォルテが炸裂しまくる2番が最も好きで、あとは3番・5番・7番辺り。6番は実演も何度か聴いていますが、今ひとつ散漫で乗り切れない曲。加えてもっと探求してみよう、という気すらおきない曲です(笑)。

 

第1楽章。う~ん、N響の演奏自体は見事ですが、私にはやはりとりとめがなく、支離滅裂な音楽に聴こえてきます。ショスタコーヴィチの音楽の方がより渋くて和声も厳しめ、それでも何度も聴いて探求してみたいという意欲を持ちますが、この6番の第1楽章は私には残念ながら全く縁のない音楽に聴こえます。第2楽章はプロコフィエフらしい叙情的な音楽。ハープとコントラ・ファゴットが印象的に現れて魅了されます。

 

第3楽章。明るくリズミカルな音楽ですが、何か素直に喜べない雰囲気。最後にトーンクラスターばりの不協和音の咆哮!ショスタコーヴィチを思わせる瞬間!プログラムには、この曲は「戦争の犠牲者への哀悼と過ぎ去った悲劇を描いたもの」と位置づけられている、とありましたが、今日のパーヴォさんとN響の演奏で聴くと、戦争に勝利しても、変わらないロシアの暗い将来を暗示する音楽、という印象も持ちました。

 

 

パーヴォさんとガブリリュクさんとN響のコンサート、プロコフィエフの6番は安定のさっぱり(笑)でしたが、N響の見事な演奏を引き続き堪能したコンサートでした!またメインがプロコフィエフ6番という渋いプログラムでありながら、広~いNHKホールが満席になるのが凄い!友人から1日目も満席だったと聞きました。目下、絶好調のN響を象徴する現象のように思います。

 

 

 

ところで。ピアニストのアリス=紗良・オットさんが多発性硬化症と診断されたことを公表されました。多発性硬化症は神経細胞を守る部位がリンパ球などによって障害させる自己免疫疾患の一種で、症状の現れ方は人によって様々と聞きます。

 

アリスさんの症状がどのようなものかは分りませんが、同じく多発性硬化症を発症されたチェリストのジャクリーヌ・デュプレさんの時とは異なり、今は様々な治療法があると聞きます。

 

アリスさんは今後もコンサートにご出演されていく予定とも伺っています。私は今回のアリスさんの勇気ある告白を支持し、そして、今後のアリスさんの活動を大いに応援できればと思います。アリスさんの病気からのご回復、そして素晴らしいピアノをいつまでも聴くことができるよう、心よりお祈り申し上げます。

 

(参考)私がアリス=紗良・オットさんを聴いた時の記事。ベートーベン1番(上)とラヴェル(下)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11921357256.html

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12418022244.html