素晴らしかった先週金曜日のシルヴァン・カンブルランさんとポール・メイエさんと読響のモーツァルトやドビュッシー。引き続き、アイヴズとマーラーの回を聴きに行きました。

 

 

読売日本交響楽団第577回定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:シルヴァン・カンブルラン


アイヴズ/ニューイングランドの3つの場所

 第1曲 ボストン・コモンのセント=ゴードンズ

 第2曲 コネティカット州レディングのパトナム将軍の兵営

 第3曲 ストックブリッジのフーサトニック川

マーラー/交響曲第9番ニ長調

 

(参考)2018.4.13 シルヴァン・カンブルラン/ポール・メイエ/読響のモーツァルト&ドビュッシー

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12368189218.html

 

 

アイヴズとマーラー、どうしてこの2人の作曲家?と思われる方もいらっしゃると思います。プログラムには共通点として、伝統的な管弦楽の素地に、しばしば軍楽や俗謡のたぐいを「闖入(ちんにゅう)」させる。異質な音楽が、同時に、しかも多くの場合、拍子や調を違えて響くので、印象は非常に多層的で現代的、とありました。今回の2曲は作曲年代が近いことも、また共通します。

 

それに加えて、私は読響の年間プログラムが発表された時に、このアイヴズとマーラーの並びを見て、即座に、これはレナード・バーンスタインへのオマージュではないか?と思いました。どちらもバーンスタインが得意とした作曲家、しかもマーラー9番は書かれたのはドロミテ山脈のトブラッハですが、既にマーラーがウィーン国立歌劇場を辞めて、年間の多くをニューヨークで過ごしていた時期、曲を完成させたのも実はニューヨークなんです。

 

カンブルランさんがレニーと何か関係があるのかどうかは分かりませんが、私的にはバーンスタイン生誕100周年の今年、とても大切なコンサートです。

 

 

前半はアイヴズ。第1曲は冒頭から神秘的な響き、しかし後半は力強い明快な長調も聴かれます。第2曲は陽気な音楽が続いた後、最後にアイヴズ得意の不協和音の咆吼きた~!第3曲は優しい雰囲気の祈りの音楽、最後の大団円の後の静謐な弦!

 

全体的には、マーラーより不協和音の多用を感じ、調性的には進んだ音楽、という印象を持ちました。アイヴズは4曲の交響曲しか聴いていないので、もっと探求してみたい作曲家の一人です。(でも、忙しくて聴いている時間がない~泣)

 

 

後半はマーラー9番。3番と双璧で好きな曲、そして疑うことなくマーラーの最高傑作だと思います。マーラーに深い見識を持たれていた作曲家の柴田南雄さんは、「第9交響曲」はマーラーにおける交響曲の完結であり、頂点である。どの楽章のどの主題も、高い音楽的表現力を保有しており、平易凡俗の影は全くない、と述べられています。私は特に第1楽章にそのことを強く感じます。

 

その第1楽章。カンブルランさんは冒頭から比較的ゆっくり目の指揮。しかし、たっぷりというよりは楷書体の趣きで、印象は意外とあっさりしています。調性にしろ、旋律にしろ、楽器の使い方にしろ、非常に複雑で、でも彼岸の雰囲気に満ち満ちた美しい曲。久しぶりに聴いて、大いに堪能できました。

 

第2楽章は素朴な雰囲気。カンブルランさん、ここは楽器の響かせ方をいろいろ工夫して、とてもユニークな響き。牧歌的な音楽の中、可笑しみと哀しみ相半ば、という印象を持ちました。第3楽章はゆっくりなテンポ。合わせるのが非常に難しい音楽だとは思いますが、ここは少しもたれたように感じました。

 

そして第4楽章。第1楽章と並んで大好きな楽章です。ここは冒頭から読響の重厚な弦楽の大きなうねりに包まれて感動的!4月10日(火)に聴いた都響の弦は非常に精緻で透明な印象を持ちましたが、読響はもっと骨太で重厚な響きです。

 

聴き進めると、ゆったりしたテンポでスケールは大きいものの、生との別れの葛藤や郷愁の念のようなものはなく、既にこの世にお別れを告げた後で、人の気配をあまり感じない、純粋に美しい音楽が聴こえてくるような印象です。

 

イメージとしては、主人公が亡くなった後、映画のエンドロールで祈りに満ちた美しい音楽が流れてくるような感じ。逆に、短調の場面は、死後の世界の気配に満ちて、ショスタコーヴィチへの接近を感じました。でも、決して即物的で冷たい訳ではなく、温かさを感じる、とても不思議な印象の演奏でした。

 

 

カンブルランさんの読響の常任指揮者として総決算とも言えるコンサート、非常に聴き応えのある演奏でした!私はマーラー/交響曲第9番ニ長調はレナード・バーンスタインの5種類(ニューヨーク・フィル/ウィーン・フィル/アムステルダム・コンセルトヘボウ/ベルリン・フィル/イスラエル・フィル)の演奏、レニーの思い入れたっぷりの濃密な演奏を愛聴しているので、今日は必ずしも好みの演奏ではありませんでしたが、それでも、カンブルランさんの構築する独自のマーラーの世界にはとても魅入られました!もちろん、一般参賀でも拍手を惜しみません。素敵な演奏を、本当にありがとうございます!

 

 

 

(写真)マーラーが交響曲第9番ニ長調を作曲した、トブラッハ(現在はイタリアのドビアコ)の作曲小屋。シュタインバッハ、マイヤーニッヒの作曲小屋と異なり、情報が全然なく、Google Mapで場所を確認して何とか辿り着いたのはいい思い出です(笑)。

 

なお、上の写真にて、マーラーの作曲小屋シリーズ完結です。作曲家が実際に作曲をした場所を訪れ、周りの風景を体感してみると、何かしらの発見があるもの。私がその手間暇(&お金)を惜しまないのは、曲への理解を深めたい思いと同時に、作曲家への尊敬の念に他なりません!

 

(参考)シュタインバッハのマーラーの作曲小屋

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12367427791.html

 

(参考)マイヤーニッヒのマーラーの作曲小屋

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12352077938.html