昨年11月のメシアン/アッシジの聖フランチェスコが素晴らし過ぎたシルヴァン・カンブルランさんと読響。今日はプログラムに没後100周年のドビュッシーがあったので、それを目当てに聴きに行きました。モーツァルトのクラリネット協奏曲も併せて、ポール・メイエさんのクラリネットも楽しみです。

 

 

読売日本交響楽団第611回名曲シリーズ

(サントリーホール)

 

指揮:シルヴァン・カンブルラン

クラリネット:ポール・メイエ

 

チャイコフスキー/バレエ音楽<くるみ割り人形>から

モーツァルト/クラリネット協奏曲イ長調

ドビュッシー/クラリネットと管弦楽のための第1狂詩曲

ストラヴィンスキー/バレエ音楽<春の祭典>

 

 

1曲目はチャイコフスキーのくるみ割り人形。チャーミングな曲ですが、カンブルランさんの手にかかると、とても色あざやかな演奏になります。行進曲のワクワク感、花のワルツのイキイキ感、いいものですね。

 

2曲目はモーツァルト。金曜の夜にこの素晴らしいクラリネット協奏曲を聴く愉悦!美しくかつ心地良いモーツァルト。ポール・メイエさんは見事なテクニックですが、それを感じさせないとても優しいクラリネットでした。

 

この曲は本当にいいですね。晩年のモーツァルト。ピアノ協奏曲第27番変ロ長調と同じ雰囲気を感じます。

 

 

後半1曲目はお目当てのドビュッシー。この曲は、ドビュッシーがパリ音楽院のクラリネット科の卒業試験の課題曲として作曲した「クラリネットとピアノのための狂詩曲第1番」を、オーケストラ用に編曲した8分くらいの曲です。これがポール・メイエさんの素晴らしいクラリネットと相まって絶品!

 

浮遊感満載の魅惑的な音色、憧れや儚さを随所に感じさせる響き、いろいろな楽器が次々と明滅していく、非常に魅力的な曲です。牧神の午後への前奏曲を想わせるものも感じます。クラリネットは転がるような、かなりテクニカルな旋律を吹きますが、ポール・メイエさん、もうお見事の一言!

 

いまピアノでドビュッシー/喜びの島を絶賛練習中なので、相通じるものを大いに体感できますが、ドビュッシーの音楽の醸し出す浮遊感というのは、病みつきになりそうなくらい、素晴らしいものがあります。

 

 

最後はストラヴィンスキー/春の祭典。基本的にはバレエで観たい曲ですが、カンブルランさんの手にかかって、どんな演奏になるのでしょうか?

 

冒頭からテンポを揺らさず、音の強弱で勝負の演奏。バレエで踊ることのできる春祭、という印象です。私はこの曲をコンサートで聴く場合は、以前に聴いたゲルギエフ/マリインスキーのような強烈な演奏の方が好きですが、カンブルランさんの指揮で聴くと、昨年9月に観たモーリス・ベジャール振付の東京バレエ団のバレエの情景が自然と浮かんできます。

 

(参考)2014.10.15 ワレリー・ゲルギエフ/マリインスキー歌劇場管弦楽団のストラヴィンスキー

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11940583043.html

 

(参考)2017.9.8 東京バレエ団の春の祭典

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12308990811.html

 

などと、安心しきってバレエの情景を思い浮かべていたら、カンブルランさん、第2部の「いけにえの賛美」の前の太鼓の連打をテンポを落としてゆっくりずっしり響かせたり(多分、これまでライヴを聴いた中で最遅!)、「いけにえの踊り」の冒頭で大胆にルフトパウゼを入れたり、突然揺さぶられて焦りました(笑)。ただ、やはり全般的には一言で言うと「バレエを踊ることのできる春祭」という印象でした。読響の素晴らしい演奏もあって、これはこれで楽しめました。

 

 

ところで、今日のプログラムはどうしてチャイコフスキー→モーツァルト→ドビュッシー→ストラヴィンスキーなのでしょうか?最後の春祭を聴きながら、つらつら考えましたが、同じバレエ音楽とクラリネットの曲の組み合わせで、前半は調性のあるオーソドックスな音楽、後半はあやしい調性や斬新なリズムの新しい音楽、こういうコンセプトなのかな?と思いました。

 

さらに、後半の2曲については、実は作曲年代がほぼ同じなのです。春の祭典はその斬新性や初演が大スキャンダルになったことから、新しい音楽の代表格と見なされていますが、実は、現代音楽は、ドビュッシーの牧神の午後への前奏曲から始まった、という説もあります。

 

その牧神の午後への前奏曲をも彷彿とさせる今日のドビュッシー。カンブルランさんが、そのドビュッシーの先進性を強調するために、敢えて春の祭典の前に持ってきて、春の祭典をオーソドックスに振りつつ、ドビュッシーの斬新さを浮き立たさせた、というのは考え過ぎでしょうか?

 

さらに、来週20日(金)、カンブルランさんと読響はアイヴズとマーラー9番を演奏しますが、何と、作曲年代が今日の2曲とほぼ同じなんです!何やら、カンブルランさんの週またぎの絶妙なプログラミングの匂いがプンプン香ります。そんなことを思わせる、とても興味深いコンサートでした!来週のアイヴズとマーラーもとても楽しみです!

 

 

 

 

(写真)素晴らしいドビュッシーを聴いたら、いてもたってもいられなくなり、金曜の夜ですが、飲みに行くよりもまずはピアノだピアノ!、ということで、真っ先に家に帰って1時間ドビュッシーを練習しました。コンサートの夜に練習ができたのは本当に大きい。

 

そして、今晩は自宅でゆっくり飲むことにしました。なんだ、結局は飲むんだ(笑)。今日はドビュッシーの魅惑の響きから、響17年にしました。私は山崎12年を愛飲していますが、響17年もめちゃめちゃ美味しい!