大野和士さんと都響のマーラー/交響曲第3番の公演を聴きに行きました。

 

 

東京都交響楽団第853回定期演奏会Bser.

(サントリーホール)

 

指揮:大野和士

メゾソプラノ:リリ・パーシキヴィ

児童合唱:東京少年少女合唱隊

女性合唱:新国立劇場合唱団

 

マーラ-/交響曲第3番ニ短調

 

 

マーラー3番は、マーラーの交響曲の中で9番と双璧で好きな交響曲です。ライヴで全曲を聴くのは2010年のマリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の公演以来。ただ、2月のハンブルク・バレエ団の「ジョン・ノイマイヤーの世界」では、ラストの曲がマーラー3番第6楽章でした!またあの感動に包まれる喜び!と、大いなる期待感を持って聴きに行きました。

 

 

第1楽章。この楽章は1楽章で30分以上もかかる巨大な楽章で、長いという意見も聞かれますが、私は全くそう思いません。こんなにいろいろな要素が複雑に混ざって、心踊る楽章はないように思います。

 

久しぶりにライヴで聴いて、都響のいつもながらの素晴らしい演奏に聴き惚れながら、マーラーがこの3番を書いた、アッター湖畔のシュタインバッハにあるマーラーの作曲小屋を訪ねた時に、小屋の中で流されていた第1楽章を丸々聴いたことを思い出しました。(作曲小屋のことは記事の最後に)

 

最後のマーチの決めの場面で大野さん、オケをぐっとスローにして、音量を下げ、ドレ~シ~ラソファ~ミファラ~ソファレ~ドレ♪は見得を切ってたっぷり。ラストは爆発的に加速して、雰囲気たっぷりの素晴らしい演奏でした!

 

第2楽章。大野さんはポイントとなる楽章と言われています。どこら辺がポイントなのかはよく分かりませんでしたが(笑)、最後の方で弦をゆっくりひきずって弾いて、その後の魅惑の音色、最後は甘いソロ。「花が私に語ること」ですが、植物の花というよりは、花の精の存在を感じた演奏でした。

 

第3楽章。冒頭のピッコロが非常に印象的。高く抜ける音色で歌い方は敢えて直線的。この楽章は「森の動物たちが私に語ること」ですが、途中でポストホルンが出てきたり、奥行きを感じる響き、そして、マーラーが実際に見たアッター湖周辺の山々の印象から、私は「山の動物たちが私に語ること」のように感じているので、冒頭のピッコロはそれにぴったりの印象でした。

 

それに続く木管群も見事。都響のハイレベルな演奏を堪能できます。大野さん、第1楽章と第2楽章は比較的オーソドックスだったと思いますが、この楽章はポストホルンの最後の旋律の前でヴァイオリンのトレモロを山の光のきらめきのように強調して、ゆっくり沈めたり、随所で非常に意欲的な指揮で唸りました!今日最も印象に残った楽章でした。

 

第4楽章。リリ・パーシキヴィさんの独唱は幻想的、神秘的というよりは、ツァラトゥストラの真夜中の歌の歌詞にあるように、やや警告的な歌、という印象です。途中のオーボエやイングリッシュホルンの音色がとても印象的。最後の方のヴァイオリンのリズムを変えた刻みもよく聴こえて、ぐっときました。

 

第5楽章。ビム、バム、ビム、バムの少年合唱から始まる一見楽しげな楽章です。この楽章を聴くと、バーンスタイン/ウィーン・フィルの映像を思い出します。レニーが歌いながら、ウィーン少年合唱団とのやりとりを楽しみながらの指揮、後半の”Liebe nur Gott”を「行け~!」とばかりに強調を入れたり、最後は笑顔で晴れやかになったり、本当に楽しそう。今日の東京少年少女合唱隊も、楽しげで天国的な合唱で良かったです!

 

第6楽章。この楽章は本来涙なくしては聴けない楽章のはずです。大野さんと都響は美しくて見事な第6楽章でしたが、比較的あっさりした演奏で、もちろん感動はしましたが、涙涙までは行けませんでした…。これは直近に観た2月のハンブルク・バレエ団があまりにも凄すぎた反動かも知れません?(その後、その時の音源を確認したら、指揮はやっぱりバーンスタインで、ニューヨーク・フィルとの旧盤の演奏でした。)

 

いずれにしても、美しい秀演。さすがはマーラー・オーケストラこと都響の実力を体感できた、素晴らしいコンサートでした!

 

 

(参考)2018.2.7 ジョン・ノイマイヤーの世界(ハンブルク・バレエ団)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12351244724.html

※第6楽章のバレエは一番最後に出てきます。

 
 
 

 

 

(写真)マーラーが交響曲第3番を書いた作曲小屋(シュタインバッハ)

交響曲第3番ニ短調は、自然の豊かなオーストリアはザルツカンマーグートで創作されました。ザルツブルクから東へ50kmほどにある美しいアッター湖畔のシュタインバッハ。写真はマーラーが交響曲第3番を書いた作曲小屋。マーラーは毎朝6時~お昼くらいまで、この小屋で作曲したそうです。

 

 

(写真)ホテル・フェッティンガー

作曲小屋のそば、マーラーが宿泊したホテル・フェッティンガー。マーラーはここのホテルのコックの料理を絶賛したり、けなしたりしながら、妹のユスティーネと友人のヴィオリスト、ナターリエ・バウアー=レヒナーと楽しく夏を過ごしたそうです。

 

 

(写真)ヘレンゲベルクの岩山とアッター湖

シュタインバッハに来訪したブルーノ・ワルターが、あたりの風景、切り立ったヘレンゲベルクの岩山の美しさに驚くと、マーラーは「私はすべてそれらを作曲してしまっているから(おそらく第3楽章のこと)見る必要はない」と言ったそうです。私の第3楽章のイメージはこの写真の山です。アッター湖はザルツカンマーグートの美しい湖の中でも、最もエメラルド・ブルー色の美しい魅力的な湖です。