森本FP事務所のQ&Aブログ

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資産運用・保険・住宅ローンの疑問・質問にお答えしています。

【設例】 住宅購入予定の30代・夫婦です。
住宅ローンは、変動金利で組む予定ですが、頭金は、必要最小限にして、できるだけ借入を増やして、手元に残る資金を新NISAで運用しようと考えています。
具体的には、近頃人気の米国株投信を考えています。

この選択について、どう思われますでしょうか。

【回答】 ご質問にお答えします。
住宅ローンの変動金利は今年3月の日銀マイナス金利解除後、わずかに引き上げた金融機関がありますが、今のところは、まだ超低金利といえます。

考え方として、借入金利を上回るリターンを得られる前提であれば、借入をしたまま、手元資金を資産運用にまわすのが有利です。

ただし、仮に米国株投信のみで運用するとした場合に、当然ながら、値動きは大きいです。

医薬品に例えるなら、米国株投信は、効果は高いが副作用の強い薬といえます。

ここ数年、米国株投信は、一方的に右肩上がりを続けていますが、いつ副作用(下振れの動き)がでるか、わかりません。

米国株価指数(S&P500)の長期データを見るとわかりますが、一時金で投資を始めてから10年後の時点で元本割れをしているケースも実際にあります。

今回のご質問は、つまり、どこまで資産運用のリスクを取れるのかというご質問と思います。

なお、仮にインデックスファンドと呼ばれるコストの安い商品を選んでも、リスク(副作用)があるのは同じです。

「コストが安い=リスクが低い」ではないので、間違えないようにしてください。

大切なことは、それぞれの家計の健康状態を見て、副作用に耐えられるかを判断することです。

具体的には、将来のお金の流れを試算するキャッシュフロー表(以下、CF表)を作成して、家計の健康状態を見ます。

副作用の強い薬(米国株投信など)を使う場合は、できれば経験のあるFPや投資アドバイザーと相談しながら取り組んでいただくのがベターです。

ちなみに、日本FP協会では、FPを「家計のホームドクター」として紹介しています。

「家計のホームドクター」は、日本FP協会の登録商標とのことです。

とはいえ、本気で家計のホームドクターとして活動しているFPもいれば、金融商品(薬)の販売が目的化してしまっていると思われるFPや投資アドバイザーも一部に見受けられます。

利用者として、安心して相談できない、見分けがつかない、といった声を聞くことも少なくありません。

見分け方は、実はそれほど難しくなく、まずは、そのFPの相談料や顧問料がいくらなのか確認し、顧客以外から間接的に受取る報酬(例:商品の販売手数料)があるようであれば、その概算や料率なども聞くことです。

そこが分かれば、おかしな誘導をされていないか判断がつくと思います。

もっとも、新NISAで選べる投資信託であれば、副作用や依存性の強すぎるものは、一定基準のもと、除外されているので、少額の資産運用なら、市販薬のようにご自身の判断で使用する選択も現実的です。

少額を具体的に提示するのは、リスク許容度等に個人差があるため、難しいのですが、概ね総額で300万円程度までのイメージです。

FPに相談しないで取り組む場合も、なるべくなら、Excel等のツールを利用し、CF表をご自身で作成した方がよいと思います。

CF表は、住宅購入予定の方には特に役立つ表です。

そのうえで、仮に10年後に投資信託が元本割れをしていたり、住宅ローンの変動金利が上昇していても、問題ない家計なのか、具体的な数字で判断されることをおすすめします。
 

【設例】 45歳会社員、妻と子1人を扶養しています。
定額減税で一人あたり4万円の減税があると聞きました。
ただ最近は、物価の高騰で出ていく方も増えています。
トータルで見ると、実質増税のようにも感じます。
今後、暮らしや家計をどう守っていけばよいでしょうか。
何かアイデアがあれば、教えていただけると幸いです。

【回答】 ご質問にお答えします。
仰る通り、近頃は、物価が高騰しており、定額減税が実施されても家計の改善効果はあまり実感できないかもしれません。

仮に世帯で12万円の減税を受けても、1年間で考えると、1か月あたり1万円なので、光熱費や食費、外食費などの値上がりで消えてしまいそうです。

しかも定額減税は、毎年ではなく1回限りの実施となる模様です。

また、物価の高騰に対して、賃金の上昇が追いついていないため、国の統計で実質賃金は25か月連続のマイナスとなっています。

約10年前から日銀が物価目標2%と定めて金融緩和政策を進め、その間、国債をたくさん発行し、政府が使えるお金も増えましたので、物価の上昇は、ある意味、実質的な増税と捉えても間違いではないかもしれません。

他にも、インボイス制度の導入や健康保険料に子ども・子育て支援金の上乗せなど、見えにくい形の実質的な増税もあります。

いわゆるステルス増税です。

では、このような大増税の流れの中で暮らしや家計をどう守っていけばよいかです。

まず1つ目は、金融資産の一部を外貨で運用するという視点があります。

物価の上昇は、円安傾向も少なからず影響しています。

仮にさらに円安が進んだ場合に備えて、金融資産を外貨に分散させる対策です。

もちろん為替リスクについての理解は必須ですが、円と米ドル等の外貨には、金利差があります。

外貨運用の利回りの高さに着目することがポイントになると思います。

ただし、外貨運用は、余裕資金を長期の視点で運用することが前提になります。

そんな余裕資金はないよという場合は、2つ目の家計の見直しをおすすめします。

最初のステップは、家計全体の状況把握です。

仮に資金管理口座が、国内の銀行預金のみであれば、単純に預金通帳の数字を追いかけていけば、大まかな状況を把握できます。
(注:他に証券口座等がある場合は、口座間の資金移動の把握も必要)

具体的には、1年間の集計期間を各自で決めて、例えば、昨年5月末時点の残高(1)と今年5月末時点の残高(2)をメモします。

銀行口座が複数ある場合は、(1)と(2)の残高は、口座ごとに拾った数字の合計です。

そして、下記の通り足し算、引き算をすると、年間の総支出額がわかります。
(1)+手取年収-(2)=総支出

総支出額の内訳は、食費、被服費、日用品費、水道光熱費、通信費などの基本生活費の他、住居費、保険料、車両関連費、交通費、教育費、教養娯楽費、小遣い、交際費、医療費など個別の状況による支出、このほか、例えば、家具や家電の購入、旅行や帰省など、臨時の支出があります。

預金通帳やカード明細等から出来る限り数字を拾い、電卓をたたいて、費目ごとの概算の年間支出額を推理で埋めていきます。

詳細にこだわらず、ざっくりと家計全体の状況を把握することが目的です。

数字を拾いきれず使途不明となる金額は、いったん費目を「その他」に分類しておきます。

この作業は、預金通帳などの明細が揃っていれば、1時間程度で出来ると思います。

テレビの1時間番組の視聴を1回見送れば、捻出できる時間です。

そのうえで、数字とにらめっこしながら見直しを考える流れです。

もちろん、ただ削減するだけではなく、ご自身やご家族の学びや経験、成長のために必要と考えるお金があれば、惜しまない方がよいと思います。メリハリが肝心です。

これならできそう、と思ってもらえるようでしたら、ぜひトライしてみてください。
 

【設例】 45歳会社員の女性で一人暮らしです。
65歳時に定年退職を迎える予定です。
住宅ローンの返済があり、貯蓄は少なく、積立投資を行う余裕もほとんどありません。趣味の旅行にもお金を使いたいです。
65歳から公的年金だけで暮らせるのでしょうか。

なお仕事は楽しく、やりがいもあるので、長く続けられたらいいなと思っています。どう考えたらよいでしょうか。

【回答】 ご質問にお答えします。
結論から言うと、仕事が好きなら、何らかの形で75歳まで働く計画を今から立てておくことをおすすめします。

公的年金制度は、少子化と長寿化が進み、正直、現行のまま維持するのが難しくなっています。

制度自体が無くなることは考えにくいですが、あくまで家計を補助するものになるということです。

無理に高い給付水準を維持しようとすると、消費税の税率をものすごく上げなければなりません。

また、年金保険料を上げると、現役世代の負担が重くなり過ぎます。

なので、65歳から公的年金だけで悠々自適の暮らしができるというシナリオは、政府として、早めに撤回した方がよいのではないかと個人的には思っています。

江戸っ子は宵越しの銭を持たない、といいますが、ある世論調査(※1)によると、貯蓄なしと回答した世帯が全世帯の4分の1ほどあります。

政府を信じて、私的年金の準備をまったくせずに65歳を迎え、結局、働かなければ生活できないとなると、ハシゴを外される形になります。

一時期、老後2000万円問題が大きな騒ぎになったのも、世の中用意周到な人ばかりではないことを示しています。

とはいえ、公的年金の問題に薄々気付いている人は多いです。

漠然とした不安から消費を抑える人が増え、企業もお金を内部にため込むので、不景気が続くという悪循環に陥っています。

日本は、本来は経済的に豊かな国で全体として見れば、それほど悲観的な状況にありません。

年金問題の解決策のひとつは、個人的には、65歳をリタイア時期の標準としないことだと考えています。

少子化と長寿化は、必ずしも政府の責任ではなく、ある意味自然に起きたことなので、問題点を正直に伝えるたびに、ネットで炎上してしまうのは少し気の毒です。

要するに、公的年金を支える人と受取る人のバランスが変化する以上、受取る側の給付を減らさないと、制度として成り立たないということです。

もちろん、65歳でリタイアしたい、お金のために働きたくない、心の余裕を持ちたい・・と考える場合は、ご自身で必要な資金をしっかりと計算して、私的年金を準備すれば大丈夫です。

問題は65歳時にリタイアを予定しているのに私的年金を準備できていないケースです。

その場合は、例えば、65歳から74歳まで手取り200万円程度の仕事を継続できれば、インフレや運用率などは考慮せず、200万円×10年で老後2000万円問題は解消します。

また、制度上は、繰り下げ受給の選択もあります。

75歳まで受給開始時期を繰り下げると、現行のルールでは、65歳時からの受給開始に比べ、年金額は+84%の増額となります。
(但し、年金に所得税・住民税が課税されてしまう等の注意点がある)

職種にもよりますが、75歳まで働くのは非現実的な話ではないと思います。

実は、私自身も75歳までFPの仕事を継続する計画です。

健康であることが大前提ですが、65歳以降もお元気で働いている方は、直近の統計データ(※2)でも4人に1人の割合でいらっしゃいます。

また、65歳から69歳に限ると、2人に1人が就業しているとのこと。

もちろん、個人差はあるので、健康上の理由で働けなくなってしまった場合は、公的な支援を受けてもらう選択なども想定されます。

まとめますと、
・65歳から公的年金だけで暮らすのはおそらく難しい
・75歳まで働くのがこれからの基本と理解した方がよい
・趣味などに使える余暇も確保しつつ、健康で長く楽しく働ければ、年金の不安は解消する
というアドバイスになります。

※1 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」
※2 総務省統計局「労働力調査」