トマ・ピケティ『21世紀の資本』について――格差是正のための税制とその現代における意味③ | MMエッセイズ 増田満のブログ

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「サングラハ教育・心理研究所」の会報誌、「持続可能な国づくりの会」の学習会などで発表したエッセイ等を掲載します

ただし、富の格差は税金が増えさえすれば抑制されるということではありません。税金がどのような階層に対しても同じような税率で課されたのだとすると、結局はr>gの効果で富の格差は拡大さえしかねません。富の集中が、第一次世界大戦以前のような状況になるのをくいとめたのは、課税が累進課税の形で行われ、より裕福な者により高い税率が課されたからだとピケティは指摘します。いくつかの国の1970年、1980年、1990年、2000年、2010年の所得税と相続税の最高税率を彼の本にあるグラフから読み取って表1と表2にしてみました。

 

1 富裕諸国の最高所得税率 (.521のグラフより目分量で読み取って作成しました)

 

1970

1980

1990

2000

2010

アメリカ

77

70

28

40

35

イギリス

90

75

40

40

40

フランス

62

66

56

61

47

ドイツ

53

55

53

51

45

 

2 富裕諸国の最高相続税率 (.525のグラフより目分量で読み取って作成しました)

 

1970

1980

1990

2000

2010

アメリカ

77

70

55

55

35

イギリス

85

75

40

40

40

フランス

20

20

40

40

40

ドイツ

15

35

35

30

30

 

1970年ごろのアメリカ、イギリスでは最高税率は77%―90%にも達しており、最も大きな所得あるいは相続には、没収に近い税率が課されたわけです。参考までに今年、2015年の日本の場合、所得の最高税率は4千万円越えの所得に対しての45%、相続の最高税率は6億円越えの相続に対しての55%です。所得の最高税率としては2010年のフランス、ドイツと同じ程度で、2010年の英米よりは高めです。相続の最高税率としては2010年の欧米富裕国よりは高めです。そのようなことから、現在日本は、アメリカ、イギリスはもちろんですが、フランス、ドイツに比べても、富の格差が若干低い状態にあるのではないかと推測します。

 いずれにしろ累進課税の結果、今日のヨーロッパではトップ十分位(上位10)の富のシェアは60%ほどまで高まりはしたものの、ベル・エポック期(第一次世界大戦前)のような極端なシェア90%に比べれば抑制されたものになっているのです。では、トップ十分位が失ったシェア30%はどこに行ったのでしょうか。