トマ・ピケティ『21世紀の資本』について――格差是正のための税制とその現代における意味② | MMエッセイズ 増田満のブログ

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「サングラハ教育・心理研究所」の会報誌、「持続可能な国づくりの会」の学習会などで発表したエッセイ等を掲載します

両大戦を中心とする時期における格差の縮小とその後の復活

 

しかしながら西欧の超格差社会は、二つの世界大戦を経験することで大きく変化することになります。ピケティは次のように述べています。

 

二度の世界大戦による破壊、大恐慌が引き起こした破産、そして何よりもこの時期に成立した公共政策(家賃統制、国有化、そして国債からの不労所得生活者がインフレにより消滅したこと)がもたらしたショックだ。こうした各種の要因で、1914年から1945年にかけて資本/所得比率は激減し、資本所得が国民所得に占めるシェアも大幅に下落した。(p.285)

 

その結果、「白紙状態からの社会始動」(p.285)が可能になったのだと彼は述べています。しかし戦後50年以上も経過すると、民間の財産は二つの世界大戦以前のように復活してきます。ですが富の集中が同じような高水準に戻ろうとはしていないと彼は指摘し、その原因について分析しています。要因の一つとして彼は、第二次世界大戦後の30年間の例外的成長によって、歴史上初めて純粋な資本収益率が経済成長率よりも低いという事態が生まれたことを挙げています。しかしながら、彼が「最も自然かつ重要な説明」(p.388)とするのは、「20世紀の政府が資本と所得に高い税率で課税を始めたこと」(p.388)です。ピケティによれば、欧米の主要国では、19世紀から第一次世界大戦にかけて、税収は国民所得の10パーセント以下だったそうです。それが次の引用文のように大幅に増えたと述べています。

 

1920年から1980年にかけて、富裕国が社会支出にあてようとする国民所得の割合は大幅に増えた。たったの半世紀で、国民所得に占める税のシェアは、少なくとも3倍か4倍にはなった(北欧諸国だと5倍以上)。だが1980年から2010年の間に、税金の比率はどこでも横ばいになった。横ばいになる水準は、国ごとに違った。米国では国民所得の30パーセント強、イギリスでは40パーセントぐらい、ヨーロッパ大陸は4555パーセントだ(ドイツは45パーセント、フランスは50パーセント、スウェーデンでは55パーセント近く)(.494)

 

そしてその税収は、おもに「社会国家」、つまり福祉国家の構築に使われたというのです。結果として、特に税率の高かった北欧諸国は、潤沢な税収を、目標に向けてきちんと使い、19701980年代には史上最も福祉が発達した国々になりました。

 
(続く)
©mitsuru masuda
 
以上は「サングラハ第141号」(2015年5月発行)に掲載したものの一部とほぼ同じです。