共同体感覚 ~ 健全な絆を結ぶために ~
長い間黙殺されてきた共同体感覚アドラー心理学の理論は、どれも革新的で衝撃的なものばかりです。この「共同体感覚」は一際目立つ存在で、当時アドラーを支持していた多くの人々も、これによって彼のもとを離れていったといいます。それほど、一般的な価値観では受け入れがたいものです。やっと今、時代が追いついてきていると言われているので、当時の人々の衝撃はいかほどだったでしょうか。共同体感覚とは共同体感覚は、ひとことで表すならば、「仲間意識」のことです。自分以外の仲間に関心を持ち、他者の幸福を願い、全体の一部として自分をとらえ、共同体全体の発展や利益に貢献しようとする感覚。単純に「愛」といえるかもしれません。自分の利益を超えて、すべてに与える心を持つこと。これだけなら共感を得られそうな理論に思えますが、アドラーが世間にまったく相手にされなかった理由は、他にあります。宇宙の果てまで広がる共同体感覚多くの人は大切な家族や友人、地域社会に関心を持ち、貢献していく意識を持っていますよね。でもアドラーのいう共同体感覚は、人間社会だけにとどまりません。動物や植物、果ては無機質まで、すべてのものを内包していきます。そして地球を飛び出して、宇宙全体に広がります。ここまでくると、心理学というよりは、宗教や哲学の感覚になりますよね。こういう部分が、世間に受け入れられなかった最たる理由だと思います。共同体感覚はなぜ必要かそもそも人間は、ひとりでは生きられません。完璧な人間なんていませんし、足りないものがたくさんあります。お互いの劣等性を補い合い、生産的に生きていくためには、共同体が欠かせません。でも、和を乱す人というのは、どこにでもいるものです。「自分ひとりだけなら」という軽い気持ちでとる行動が、共同体を崩壊させる一因になります。共同体を健全に維持するためには、仲間意識や思いやりが必要です。心理学風にカタく書いていますが、「自分勝手せずに仲良くしましょう」ということであり、小学校で教わるようなことですよね(笑)基本的なことでも、つい忘れてしまうんですよね。共同体感覚を持って生きる「全体の一部としての自分」という感覚が高まるほど、その共同体は健全に発展します。他者の幸せが自分の幸せとしてとらえられるようになると、個人の利益だけを追求するよりも、大きな視点を手に入れられます。能力や才能は、他者貢献を通じて開花していくのではないでしょうか。宇宙の果てまで愛することはできなくても、まずは身近な人と建設的な関係を築いていきましょう。