11月12日 どしゃ降り。
私が楽しみしていたイベント「鶴岡食文化産業創造センター」が企画した、
「おもてなし講座」の第一弾。「感動!鶴岡焼畑ロードを学ぶ」に埼玉からかけつけ
参加してきました。
ちなみに、この企画の目的は人材育成です。
鶴岡にある伝統的な作物(在来作物)を自らが知り、それを求めて下さるお客様へ
正しく事実を伝えられるような人材の育成となります。
こちらのセンターはいつも面白い実のある企画をしてくれます。
すごく参加者、関係者の評価が高いセンターです。
さて、山形県の在来種のかぶは古くから焼畑で栽培されてきました。
また、タネは自家採種を行い先祖代々タネを伝承してきました。
その種類はかぶだけでも20種類を超え、山形県は全国的にかぶ王国として名高いです。
今回はその代表的な4つのかぶ畑を生産者とお逢いしながら巡ってきました。
■藤沢(ふじさわ)かぶ
「藤沢(ふじさわ)かぶ」は山形県鶴岡市藤沢地区で栽培されている在来作物のかぶです。
実は、このかぶは絶滅しかけていたかぶでした。
生産者がただ一人守ってきたタネを、必死でリレーし繋ぎました。
また、注目すべき点はこの作物をリレーするために民間の漬物屋や料理人の方々が
携わったことです。
この作物の文化財的な重要性を感じていた方々の手で、
今では一部に出荷できるほど収穫できるほどまで発展しました。
※写真は生産者の後藤さん。ジョークも上手な方でした。
「藤沢(ふじさわ)かぶ」の特徴は土の部分は白、そこから上は赤紫のツートンカラーです。
食味は上品。優しい甘みと辛みを備えています。
畑で試食させて頂きましたが、生食にも向いていると思いました。

※かぶ同様、葉も少し赤紫色をしています。
※焼畑によって焼け焦げた杉の切り株。そこにびっしりと藤沢かぶの緑が生い茂っています。
後藤さんの畑はとっても美しいです。
畑自体が作品でもり、アートのようでした。
■宝谷(ほうや)かぶ
「宝谷(ほうや)かぶ」は山形県鶴岡市旧櫛引町宝谷地区で
栽培されている在来作物のかぶです。
一見、「だいこん」のようにも見えますが、葉の形状が「うさぎの耳」のような形をしているので
これはかぶです。※だいこんはギザギザの葉になっています。
「宝谷(ほうや)かぶ」もまた絶滅しかけていたかぶでした。
「藤沢(ふじさわ)かぶ」は業者の方々が中心になって支えたのに対して
こちらは、『宝谷蕪主会(ほうやかぶぬしかい)』という機関を立ち上げ、
一般の方にも出資応援してもらうという手法をとり存続してきました。
この“かぶ主”は一般的な株主と違い配当金ではなく、収穫されたかぶが分配されます。
特徴として「宝谷(ほうや)かぶ」は白い長かぶ。
通常のかぶよりでんぷん質を多く含むため、火を通すと甘くなるそうです。
伝統的な食べ方は「タコ煮」といわれる鍋。
葉のついたままかぶを丸々一本鍋に入れます。
その姿が「たこ」に似ていることからそう呼ばれているそうです。
■温海(あつみ)かぶ
「温海(あつみ)かぶ」は山形県鶴岡市旧温海町で栽培されている在来作物のかぶです。
このかぶは温海地区では広く栽培されていますが、重要なタネ採り地域として
古くからそのタネを守り伝承してきたのが、一霞(ひとかすみ)地区です。
この地区は90%以上が「温海(あつみ)かぶ」を栽培しているという驚異的な
かぶ栽培地域です。
歴史的には山形県に現存する在来作物のかぶのなかでは
最も古い歴史を持つものの一つです。
今から300年~400年前の江戸時代にはすでにこの地域の特産物であったことが
記録に残されています。
また、その「温海(あつみ)かぶ」の価値は非常に高く、
かぶ18個が米一升に相当する価値がありました。
特徴としては、赤い丸かぶで肉質が良くしまり、甘さと辛さを持っています。
今回、見た焼畑のなかで最大の傾斜と規模でした。
この広大な焼畑を、なんと阿部さん夫婦二人で作業をこなすそうです。
とても、信じられません。
■田川(たがわ)かぶ
「田川(たがわ)かぶ」は山形県鶴岡市田川地区少連寺で栽培される在来作物のかぶです。
このかぶは先述の「温海(あつみ)かぶ」を選抜して育成した在来作物です。
本格的に「田川(たがわ)かぶ」として集荷販売するようになったのは昭和53年。
特徴は「温海(あつみ)かぶ」よりも皮がやや厚く、平べったい形状をしており、
色も赤色が強い赤紫色をしています。
この「田川(たがわ)かぶ」ももちろん焼畑で栽培されるのですが、
そのこだわりはものすごいものがあります。
「田川百年かぶ」といわれ、焼畑に採用される土地は100年に一回のペース
で使用されます。
これは杉の植林が大きく関わっているからです。
当然、その土地は杉の腐葉土が多く栄養度が高い「田川(たがわ)かぶ」を育みます。
食味は辛みが強く、パリッと歯触りがある強い食感。
味に深みがあります。
例えるなら「かぶを凝縮」した感じです。
※山深いところで栽培される「田川(たがわ)かぶ」。今年は高温障害にも悩まされたそうです。
生産者の長谷川さんは「田川(たがわ)かぶ」が一番うまいと語っていました。
栽培へのこだわり、「田川かぶ」への愛着がとても感じられた印象的なワンシーンです。
その後、かぶの加工所へ行き、加工工程と生の「温海(あつみ)かぶ」を頂き、
コミュニティーセンターで写真左の江頭先生の在来作物のかぶの現状の話しを聴いた後に
今日のまとめを参加者約20名全員で行いました。

それぞれが今回のツアーで感じたことを一人一人が言葉にし発表しました。
■見えてきたこと(まとめ)
~在来作物のパラダイム~
今回のツアーを通して、在来作物のかぶの凄さを改めて実感しました。
急こう配な斜面で作られる栽培地、栽培方法、土から顔を出す作物の美しさ、生産者の情熱。
しかし、同時にすぐにでも行動しなければいけない大きな問題も感じました。
実は焼畑かぶは共通して、2つの大きな問題を抱えています。
1、高齢化問題
2、林業問題
1は生産者がどんどん高齢化しています。
どの在来作物のかぶを見ても、中心となっている方々は60歳前後の方々です。
これは、そのあとを継ぐ者たちがいないということを表しています。
また、2に関しては経済事情ともいえる外的要因がかぶの栽培を阻害しています。
今回のツアーでも美しい焼畑の傍らに利用価値が見出さなかった杉の木が
山積みされていました。
本来であれば、その木が材木として利用されるはずが、十分に利用されていません。
これは、杉の価格が木材の自由輸入化によって暴落し、国内の杉価格が
二束三文になっているからです。
そのため、焼畑地となるはずである杉林は伐採されず、かぶを作付けすることができない
という状況にあります。
つまり、循環型であったかぶ栽培は一転して負の連鎖に陥っているのです。
こういったことも重なり、後継者はどんどん減少し、高齢化しています。
このまま、何も手を打たなければどうなるのでしょうか?
答えは簡単です。
作物は絶滅します。
この在来作物のかぶ達は短くなった今にも消えそうなろうそくです。
今はかろうじて火をともしていますが、
別のろうそくにその火を移さなければその火は消えてしまうのです。
私は、このツアーで一番心に残った言葉としてこれをあげました。
これは、「宝谷(ほうや)かぶ」の当時最後の生産者であった畑山さんの言葉です。
当たり前の言葉かもしれませんが、これがとても重要だと感じました。
在来作物は現代の貨幣経済という仕組みの中では通用しない作物。
大量生産もできないですし、育てるのも難しい作物です。
つまり、大量生産、大量消費の原理の中では完全な負け組です。
しかし、「多様性」という価値ではどうでしょうか?
一代限りのF1種には多様性はほぼ皆無です。
自家採種を繰り返す、在来作物は古くから選抜育成され多様な種を育んできました。
つまり、このパラダイムのなかでは在来作物こそ食の未来を担っているのです。
また、歴史にも大きくかかわってきた在来作物は「文化財」という価値も備わっています。
文化は学びを与えます。
「食育」という観点からもこの在来作物達は大きな可能性を秘めているのです。
では、在来作物を継承させるための具体的なアクションは何になるのでしょうか?
私はそのヒントが今回の「4大かぶらツアー」にあったと思います。
1、在来作物の価値を見出す
2、在来作物を「食べ支える」仕組みを構築する
1に関して必要なのは、まずは在来作物に対して知ることです。
地元の人などがもっと興味を持ち、知り、発信することが必要です。
このベースがあるからこそ、客観的な価値が付加されるのだと思います。
2に必要なのは、前述した貨幣経済ではない、社会的意義がある仕組み作りです。
それは、自分たちの未来のためにタネをみんなで守るという価値観です。
そして、作物を守りながら学ぶというスタイルの確立も同時に行うことで
お金では買えない食べるという以外の第三の価値を創出するのです。
これはまさに、「宝谷(ほうや)かぶ」は2つを満たした成功モデルでした。
誰かがその価値を見出し、食べ支える仕組みを構築したのです。
ここから得るものは非常に大きいです。
第二回の座学研修で、在来作物の第一人者である江頭先生は今必要な作物に対しての
価値観をこう言葉にしました。
「お金のための作物」
ではなく
「命のための作物」
私は、これが在来作物の正しいパラダイムだと確信してます。
このパラダイムを理解し、「食べ支える仕組み」を構築していきたいと思います。
■あとがき
とても、学びの多かったこのツアー。(二回目の座学も)
生産者さん、江頭先生、一緒に参加した仲間達、企画して下さった
鶴岡食文化産業創造センターさんに感謝!
イェイ!