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Formula Beginner

初心者向けのF1解説ブログです。
多くの人がF1に興味をもって、好きになってもらいたい。
そのきっかけの一部になれたら・・・
そう願って毎回書かさせて頂いています。

7月10日、F1第9戦イギリスグランプリがシルバーストンサーキットで開催された。

週末を通じてシルバーストン地方は不安定な天候が続いており、ここまでF1の走る全セッションが雨絡みで進んできていた。



決勝日もスタート時刻の午後1時に軽い雨との予報が出ていた。しかし予報よりも早く、正午過ぎに大粒の雨がコースを濡らし始める。20分程度で雨は上がったが、これでほぼ完全なウェットコンディションでレースも迎えることとなってしまった。



雨絡みのとなった予選。1、2位はレッドブルの2台。ウェバー、ベッテルの順。3、4位にアロンソ、マッサのフェラーリ2台。地元イギリスチームでイギリス人の元チャンピオン2人を擁するマクラーレンは予選で振るわず、バトンは5番手につけたものの、ハミルトンは今期自己ワーストの10番手に沈んだ。しかし地元の大声援を背にどこまで追い上げてくるか、楽しみである。



スタート直前、雨は降ってはいないが、コース上は先ほどの雨で依然として濡れており、全車雨天用タイヤを装着している。また、風は強くはないが、風上には依然黒い雲が見えており、雨という一波乱も十分考えられる。いずれにせよ、予断を許さない展開になりそうだ。



5つのレッドシグナルが灯り、消え、52周のレースがスタート。



予選1位のウェバーのスタートが悪く、ベッテルに交わされ2位で1コーナーへ。

また上位では5番手スタートのバトンも4位へと順位を上げた。

コース上、場所によってはかなり水が溜まっており、各車慎重な立ち上がりをみせ、接触等のアクシデントは起こっていない。

しかし驚くべきは10番手スタートのハミルトン。スタートこそ特に良くはなかったが、レースが落ち着く前のこのオープニングラップで4台を抜き、1周目を6位で戻ってきた。さらにこのウェットコンディションをチャンスと見てかペースの上がらないチームメイトのバトンを交わし、5番手へ。さらに前方のフェラーリ2台を追撃していく。

4周目、その4位マッサを攻めるハミルトンが勢い余ってコースアウト。すぐにコースへと復帰し、5位は守っている。

この時点で、トップはベッテル、ウェバー、アロンソ、マッサ、ハミルトン、バトンの順。



9周目、他車との接触でマシンにダメージを負ったシューマッハがピットイン。マシンの修復と共に、タイヤを晴天用へ交換しピットアウトしていく。

事実、この時点でコース上は乾き始めており、晴天用タイヤへの交換時期を迎えつつあった。ともあれ、これで全チームが、雨天用、晴天用のタイヤ比較のためにシューマッハのタイムを注目することとなった。



コース上では、トップベッテルはやや単独で走行しているものの、2位のウェバーにアロンソ、4位のマッサにハミルトンがそれぞれ接近、バトルになっていく。特に4位争いは激しく、ハミルトンはどこでも仕掛ける構えを見せている。



12周目、先ほどタイヤ交換を済ませたシューマッハのタイムが雨天用の他車と遜色ないのを確認して、上位では6位のバトンが最初にピットイン。晴天用タイヤへ交換してピットアウトしていく。

バトンはこのようなコンディション変化への対応は積極的で非常に上手い。今回も積極的に動いてきた。

この直後、シューマッハがトップベッテルより1秒速い、最速タイムを叩き出した。



こうなると、このタイムを見て全チームがタイヤ交換を行いだす。


13周目にウェバー、アロンソ、ハミルトン。

14周目にベッテル、マッサがタイヤ交換を行った。



上位のタイヤ交換が終わると、ベッテル、ウェバー、アロンソ、ハミルトン、マッサ、バトンの順となった。マッサはなんとかバトンの前、5位でコース復帰したが、先にタイヤ交換を済ませたバトンの方がすでに勢いがあり、直後の高速コーナーのアウト側から並ばれてしまう。しかしここはマッサも譲らず粘り、2台は並んで次のコーナーへ。ここで、イン・アウトが入れ替わり、バトンがインをつき、5位へあがった。シルバーストンらしい素晴らしい高速バトルだった。



地元マクラーレンの2台が順位を上げ、ここからスタンドのファンは盛り上がり始める。

さらにピットストップ後、4位へ上がったハミルトンはペースを上げ、前方アロンソに肉迫していく。


すると15周目、ハミルトンが濡れた路面にタイヤを落としながらアロンソを交わし、3位へ。こうなるとスタンドは大盛り上がりである。

4位へ落ちたアロンソだが、ここからはペースを上げ、ハミルトンには離されずにしっかりついていく。

23周目、アロンソが最速タイムを連発し、ハミルトンとの差が一気に詰めてきた。すると24周目アロンソがハミルトンをあっさりと交わし逆転。再度3位を奪い取った。



25周目、上位では最初にハミルトンが2回目のタイヤ交換のためピットイン。直前にアロンソに先行され、さらにはタイヤの消耗によりペースが落ちてきており、ここでニュータイヤを使うことで、なんとしても離されないという形振り構わない積極的な姿勢がうかがえた。



27周目、2位ウェバー、4位バトン、5位マッサがピットイン。ウェバーのピット作業が若干遅れ、3台ともハミルトンの後方でコースに復帰となった。



28周目、トップのベッテルとアロンソが同時にピットイン。アロンソはスムーズなタイヤ交換でピットアウトするが、レッドブルはタイヤ交換に再び手間取り、ベッテルはすぐに発進できず、アロンソに交わされる形で、ピットアウト。コースへ復帰すると、早めのタイヤ交換で飛ばしていたハミルトンにも交わされ、あっという間に3位に落ちてしまった。



29周目、2回目のタイヤ交換を終え、アロンソ、ハミルトン、ベッテル、ウェバー、バトン、マッサの順に変わった。ハミルトンはレッドブルのミスと作戦が功を奏し、ここまでは素晴らしい追い上げ劇となっている。さらにトップアロンソの真後ろへつけており、チャンスを伺っている。


とにもかくにも状況が序盤とは一変し、レッドブルの3、4位へ後退し、地元のハミルトンがトップに迫る位置につけており、サーキットの13万人を超える観客は今日一番の盛り上がりを見せている。非常に面白い展開になってきた。



しかし観客の期待とは裏腹に、ここからトップアロンソは最速ラップを出し、ハミルトン以下後方を突き放しにかかる。レース序盤はペースを抑えていたかのように感じるほど、トップに立ってからは圧倒的なスピードの差を見せ付け始めた。



35周目、アロンソは、2位ハミルトンが3位ベッテル以下を押さえている間に9秒以上のリードを築いた。一方、ここまで素晴らしい挽回を見せて2位まで上がってきたハミルトンだが、またしてもタイヤからくるペースダウンが始まっていた。それでもなんとかベッテルの猛攻を凌いでいる。



37周目、3位のベッテルが先に3度目のピットイン。前回のピットからまだ10周も経たない、早めのピットイン。押さえ込まれていたハミルトンを嫌って、そして逆転を狙って、大胆な作戦を見せてきた。



38周目、当然すぐざま2位ハミルトンもピットイン。ニュータイヤを履くベッテルにタイムを稼がれ、逆転される前に、その前をなんとしても押さえたいところだ。しかし、ピットアウトするとベッテルの後方でコース復帰。ベッテルの大胆な作戦が成功した形となった。



39周目、ウェバーがピットイン。40周目にはトップアロンソとバトンがピットイン。しかし、ここでバトンのマクラーレンチームがタイヤ交換でミス。タイヤを止めるナットがうまく締まらず、交換しようとしている間にバトンが発進してしまった。当然、タイヤは固定されておらず、ピット出口でタイヤが外れかかり、バトンはコース脇にマシンを止め、リタイヤする事となった。



42周目にマッサがタイヤ交換を終え、この時点の順は、アロンソ、ベッテル、ハミルトン、ウェバー、マッサの順となった。

アロンソはここでも最速タイムを出し、2位ベッテルとの差を12秒以上に広げ、いよいよセーフティーリードになってきた。


ピットストップの作業ミスでバトンを欠いたマクラーレン。さらに今度はハミルトンにペースダウンの指示が無線で出ている。どうやら燃料が最後まで持たないようだ。ここまでレースを盛り上げてきたマクラーレン勢だが、ここにきてトラブルが相次いで発生している。

さらに後方には4位ウェバーも迫っており、表彰台を確保するのも苦しくなってきた。



46周目、ペースを落として走行するハミルトンはウェバーに交わされ、4位へ後退してしまった。マクラーレンの後退で、観客はやや静かになってきている。



残り3周、アロンソは2位ベッテルに19秒以上の差をつけた。注目は2位以下の争い。ベッテルは2位をキープしているが、3回目のタイヤ交換が早かった分、タイヤを消耗しペースが落ち始めている。3位ウェバーとの差は約3秒。またペースの上げられない4位のハミルトンをマッサが3秒近く早いペースで猛追している。



残り2周、ついにウェバーがベッテルに追いついた。すぐざまマシンを右に左にねじ込もうとするが、ここはベッテルも押さえて抜かせない。



そして、ファイナルラップ。アロンソが余裕の走りをする後方、2位争いのレッドブル2台の接近戦は続く。3位ウェバーがベッテルのインを狙うが、決定打に欠けて仕掛けられない。

その後方の4位争いはさらに激しい、4位ハミルトンについにマッサが追いついた。前のレッドブル2台のバトル同様、マッサがハミルトンのインを伺うが、ここも防がれ抜けない。今日のハミルトンは攻めに守りに本当に忙しいレースになっている。


そして、アロンソがトップでチェッカー、昨年の韓国グランプリ以来の今期初優勝を上げた。通算27勝は歴代4位タイである。



2位争いはベッテルが辛くもウェバーを抑え、順位そのままでゴール。


そして注目の4位争い、最終一つ前のコーナーでマッサがアウト側から並びかけて、半車身前に出てコーナーへ飛び込む。しかし内側にいるハミルトンも当然譲らず、2台は軽く接触。ハミルトンのパーツが飛ぶ。接触はしながらも、マッサはなんとか前に出るが接触の影響で挙動をやや乱し、最終コーナーを外側にはらんでしまう。その内側をハミルトンに再度つかれてしまう。ほぼ2台は並んでホームストレートを迎えるが、僅差でハミルトンが再逆転の4位。マッサが5位でチェッカーを受けた。



4位とはいえ、ハミルトンもレース内容に満足してか、すぐさまコースサイドのスタンドへ手を振り、地元の大声援に応えて見せた。また観客も、4位という順位以上に、10位から一時はトップに迫る位置まで追い上げ、苦しい中でも素晴らしいバトルを最後の最後まで存分に見せてくれた地元のヒーローに満足しているようだった。昨年の同グランプリ、ハミルトンは2位であったが、その時よりも今年はスタンドの盛り上がり方は上だったように感じた。チャンピオンのいる国のレースはこういうものだ。そう強く感じさせてくれた今年のイギリスグランプリだった。

F1世界選手権は前戦ドイツグランプリから2週連続開催で、第11戦ハンガリーグランプリを迎えた。このハンガリーグランプリ後、F1は3週間の夏休みに入り、うち2週間はファクトリーも閉鎖される。どのチームも今回のグランプリを良い結果で締めくくり、夏休みを迎えたいところだ。


土曜日の予選で1位を獲得したのは3戦ぶりにレッドブルのベッテル。しかし、今期の中では一番苦しい状況下での予選1位獲得だったように見えた。金曜日の練習走行からレッドブルはライバルのマクラーレン、フェラーリに終始リードされていたからだ。そして迎えた予選、序盤からフェラーリとマクラーレンがトップタイムを記録、今回こそはレッドブルの昨年から続いている14戦連続予選1位が途絶えるかと思われた。しかし予選終了間際、ベッテルが暫定トップのハミルトンのタイムを0.16秒上回り、辛くもトップを奪い取ってみせた。


2番手はそのハミルトン。終了間際の最終タイムアタックでミスをしてしまい、自身のタイムを更新することができず、今回こそはと思われた予選1位は獲得できなかった。しかし、今回のハミルトンの競争力は十分。3位にチームメイトのバトンがつけていることからも、今回のマクラーレンのマシンは好調である。4位、5位はフェラーリの2台。今回はマッサが今期初めてチームメイトのアロンソを破っての4位。アロンソは週末を通して好調だっただけに少々物足りない予選5位だった。6位はレッドブルのウェバー。予選でトラブルに見舞われ、満足なアタックが出来ず、チームメイトのベッテルに差をつけられる形となってしまった。

迎えた7月31日、決勝日はハンガリーグランプリでは非常に珍しい雨。過去25回のレースを合わせても今回で2回目のウェットレースである。その前回、2006年の雨のレースを自身初優勝で飾ったのがバトンであった。そしてそのバトン、今回のレースで200戦目のメモリアルレースを迎えていた。そして、奇しくも初優勝時同様の雨。雨絡みのレースでは昨年、今年と強さを見せているだけに、メモリアルウィンを狙うバトンにとっては絶好のコンディションとなった。

スタート直前、サーキットには小雨が降っており、路面も濡れている。全車雨用のタイヤを選択している。

そして70周の決勝はレッドシグナルが消え、始まっていった。


全車まずまずのスタートを切って、1コーナーはベッテルが取った。ハミルトン、バトン、アロンソが続いた。1コーナーの立ち上がりで、2位ハミルトンと3位バトンが並んでいくが、ここはバトンが引き、順位変わらず。またアロンソが1コーナー立ち上がりで加速が鈍り、6位まで順位を落としてしまう。

1周目、ベッテル、ハミルトン、バトンの順で通過。アロンソは一つ順位を上げ5位、ウェバー8位で通過した。

コースは予想以上に滑りやすく、随所でマシンがスライドしながら走行している。

そんな難しいコンディションの中、2位ハミルトンは序盤からトップのベッテル攻略に取り掛かる。何度もマシンを滑らせながら、ベッテルの後方にぴったりつけて隙を狙っていく。


すると5周目、2コーナーを2台が並んで進入するが、ここでベッテルが滑りコースオフ。労せずしてハミルトンがトップを奪取。また2位に落ちたベッテルのすぐ後方にはもう3位バトンが迫っており、マクラーレン勢2台は雨でも好調のようである。


8周目、トップのハミルトンと2位ベッテルとの差は5.4秒まで開いた。雨はすでに止んでおり、路面もコース後半は乾き始めている。しかし依然として滑りやすいコンディションに変わりはなく、フェラーリ2台はそろって滑り、コースオフ。順位を下げている。


10周目、6位を走行していたレットブルのウェバーがピットイン。晴天用タイヤに交換していく。

次の周には3位バトン。毎度ながら、コンディション変化のためのタイヤ交換には早めに動いてくる。


12週目、先にタイヤを交換したウェバーの区間タイムが良いのを見て、ハミルトン、ベッテル、アロンソもピットイン。コースに戻った時点では、ハミルトン、ベッテル、バトン、アロンソ、ウェバーの順。しかし、先にタイヤを交換したウェバー、バトンはタイヤが完全に温まり勢いがあり、14週目バトンは2位ベッテルを、ウェバーは3位アロンソをそれぞれかわし、順位を上げていく。たった1周、2周ではあるが、タイヤ交換のタイミングの差がはっきりと現れた。


15周目、ハミルトン、バトンのマクラーレン1、2体制、3位がベッテル、4位がウェバー、5位がアロンソの順である。

ここからハミルトンは快調な走りを見せて、20周目には2位バトンに9秒以上の差をつけてトップを直走る。


24周目、コース脇ではあるが一台マシンがトラブルでストップ、炎上した。

この状況を見て、セーフティーカーの警戒、また同時にタイヤ交換の時期も迎えており、この後上位全車タイヤ交換のためピットインをする。


29周目、しかし結局セーフティーカーは導入されず、マシンは撤収された。

タイヤ交換後も順位は変わらず、ハミルトン、バトン、ベッテル、ウェバー、アロンソ。

上位3台は7秒、5秒と間隔を置いて走行しているが、4位争いが激しくウェバーの直後に5位アロンソが迫っている。アロンソの方に勢いはあるようだが、ウェバーに並ぶことは出来ても、抜くことまではできないでいる。

ちなみにこの時点まで上位は全車、スタート時こそは雨天用を使用し、その後は2種類の晴天用タイヤのうちソフトタイヤのみを使用してきている。ソフトタイヤはやはり耐久性が低く、ドライバーによって差はあるものの15周前後にはタイヤ交換が必要になるほど、タイムが悪くなる。

また、少々ややこしいルールではあるが、雨天用のタイヤを一度でも使用すると、2種類の晴天用タイヤ使用義務はなくなる。よって今回はこのルールは当てはまらない。


36周目、アロンソが上位では一番に3回目のタイヤ交換のためピットイン。ウェバーに押えられていたのを嫌って、さらにニュータイヤでのスパートで逆転を狙ってだろう。


38周目、アロンソはウェバーよりも3秒以上早い最速タイムを記録していく。ちなみにアロンソは3回目でもソフトタイヤを選択した。一番にタイヤ交換を済ませたこと、さらには再度ソフトタイヤを選択したところを見ると、残り周回数からアロンソはもう4回目のタイヤ交換が必要になりそうだ。


39周目、ウェバーが3回目のピットイン。ウェバーはハードタイヤを選択してピットアウト。

40周目にはハミルトンがピットイン、ソフトタイヤでピットアウト。

41周目にはベッテル。チームメイトウェバー同様、ハードタイヤを選択。

42周目、上位では最後にバトンがピットイン。ハードタイヤを選択。


アロンソ、ハミルトンはソフトタイヤ、バトン、ベッテル、ウェバーはハードタイヤを3回目のタイヤ交換で選択し、ここでタイヤ戦略が分かれた。

この時点で順位はハミルトン、バトン、アロンソ、ベッテル、ウェバー。


47周目にアロンソが4度目のタイヤ交換。早めのタイヤ交換とスパートが功を奏し3位まで順位を上げてきたが、その代償に早々タイヤの性能低下が始まり、タイヤ交換が必要になってしまった。ここではハードタイヤを選択して5位で戦列に復帰していく。

またこの周、トップのハミルトンがスピン、コース上に逆を向いて止まった。この期に2番手を走行していたバトンがトップへ上がっていく。ハミルトンもすぐざまコースへ戻り、バトンの直後につける。さらには3位のベッテルも接近しており、上位3台の差が一気になくなった。またこの前の周辺りから再度小雨が降り始め、各車ペースダウンを強いられている。

雨の中を晴天用タイヤで走行する難しいコンディションの中、チームメイト同士のトップ争いが激しくなっていく。バトンにトップを譲ったものの、ハミルトンは序盤同様真後ろにつけ、仕掛けるチャンスを伺う。


51周目、ここまでハミルトンを押えてきたバトンだか、濡れた路面で滑り、コースアウト。ハミルトンが再度トップに立つ。しかしバトンもすぐにコースへ復帰。そして、最終コーナーでハミルトンに再接近すると、ホームストレートの直線を活かして次の1コーナーで再々逆転。序盤とは違い、バトンもここは譲らない。さらに次の2コーナーでバトンがやや外へ膨らんだインをハミルトンがつき、またしても逆転。雨の中マクラーレンの2台がすごいバトルを演じている。そして先ほどまでの小雨がやや強くなり始めていた。


同周、4位ウェバーがピットイン。雨がやや強くなってきたのを察しピットイン、雨天用タイヤに交換した。

翌週、トップのハミルトンも雨天用タイヤに交換する。しかし、バトン、ベッテル、アロンソはピットに入らない。


すると今度は先ほどまでの雨は止み、タイムも雨天タイヤのハミルトン、ウェバーよりも、晴天用タイヤのバトン等の方が速くなってきた。こうなると先手を打ってタイヤ交換した2台の作戦は大失敗となった。

さらにハミルトンにはペナルティーが下り、制限速度のあるピットレーンを通過する義務が課せられた。原因は47周目のスピンに関係していた。スピンしてコース上に止まった際、直後に周回遅れのマシンが数台迫っている中、すぐさまコース上で急発進のスピンターンをして復帰した。非常に危ない場面だったが周回遅れのマシンが接触を避け、コースアウトして通過したため接触は免れた。しかしこれが他車をコース外へ押出す危険なコース復帰と見なされ、今回のペナルティーに至った。再度晴天用のタイヤへの交換と合わせて計2回のピットイン、踏んだり蹴ったりの状況とはまさにこのことである。これで優勝争いからも完全に脱落していくこととなる。


53周目、ウェバーがピットイン。晴天用のハードタイヤに交換した。

54周目にはハミルトンも晴天用のハードタイヤへ交換。

そして56周目、本日6度目のピットインでハミルトンはペナルティーを消化した。


ハミルトンがコースへ戻ると奇しくも同じように作戦を失敗したウェバーの直後につけており、4位争いが始まっていく。しかし接近はしているがなかなか抜くチャンスを見出せないようだ。


63周目、2台が周回遅れの集団に追いついた。4位ウェバーが周回遅れのマシンを交わすのに手間取る。直後につけていたハミルトンはこの隙を見逃さず、ウェバーを周回遅れとともに交わし、4位へあがった。


小雨による難しいコンディションの間を利用し、2位ベッテルに6秒近くの差をつけたトップのバトン。その後もその差を保ち周回を続けていく。2位のベッテルも一回タイヤ交換の多かった3位アロンソとは15秒近い差があり、上位は各車単独走行でレース終盤を迎えた。


そして70周、バトンがトップで今期2勝目のチェッカー。出走通算200戦目をメモリアルウィンで飾った。またしてもと言いたくなる雨絡みの勝利。事実チャンピオンになった2009年以外の優勝は初優勝を含め、不思議なことに全て雨。コンディション変化への判断、その勝負所を見据えた走り方は健在、今回のレースでも十分に見せてくれた。次戦も雨天レースになる確率の高いベルギーグランプリなだけに、バトン連勝の可能性も期待できるパフォーマンスだった。


2位にはベッテル。今週末の苦しい流れを考えればその中での2位は満足できる結果だろう。3位はフェラーリのアロンソ。マシンの戦闘力は悪くなかっただけに、3位は少しもの足りないような結果だったかもしれない。タイヤ戦略も良いとは言えず、優勝したバトンに比べ1回多かった。さらにスピンやコースオフが多く、雨絡みのレースがマイナスに働いてしまったようだった。4位はハミルトン。レース中盤まで、勝利に一番近かった男のまさかの失速劇だった。しかし、仮にスピンや雨天タイヤへの交換が中盤になかったとしても、3回目のタイヤ交換でソフトタイヤを選択していたため、おそらく4度目のタイヤ交換はあっただろう。そうなった際に果たして3回タイヤ交換のバトンに勝てたのだろうか。たらればではあるが、そちらの争いも見てみたかったレース展開だった。


バトンの勝利で幕を閉じたハンガリーグランプリ。これから夏休みに入ってしまうのが惜しいくらい、レッドブル、マクラーレン、フェラーリ、上位3チームの実力が拮抗してきている。選手権ポイントこそ、レットブルのベッテルが2位以下に大差をつけてはいるが、シーズン序盤のレッドブルとベッテルの圧倒的な速さはもうない。選手権がこれほど一方的な展開ではあるが、そうは感じさせないほど、シーズン終盤に向け毎レース、楽しみは増すばかりだ。

7月24日、F1ドイツグランプリがニュルブルクリンクサーキットで開催された。

F1世界選手権は第10戦を向かえ、いよいよここドイツグランプリから後半戦に入った。


予選1位は2戦連続でレットブルのウェバー。2番手はマクラーレンのハミルトン。予選終了間際、快心のアタックを見せレットブル2台の一列目独占を阻止、2台の間に割って入った。よって3番手は選手権リーダー、レットブルのベッテル。10戦目にして今期初めて予選一列を逃した。これにフェラーリ勢2台が続き、4番手がアロンソ、5番手がマッサの順位となった。


スタート10分前、小雨が降り始めた。事前の予報では雨も予想されていたがスタート直前にはその小雨もやんでおり、路面もほぼ乾いている。気温13度、湿度75%、サーキット上空は依然として雲で覆われており、雨が絡む要素も残しつつ、今年一番の低気温の中レースが始まっていく。


そして午後1時レッドシグナルが消え、60周のスタート。


予選1位スタートのウェバーがスタートミス。あっさりと2番手スタートのハミルトンに1コーナートップを奪われてしまった。

その後方で好スタートをきったのはフェラーリ2台。特に5番手スタートのマッサの動き出しは非常に良かったが、前方3位スタートのベッテルに進路を塞がれてしまい、コースのアウト側の進路をとらされてしまう。

そして1コーナーにベッテルを2台のフェラーリが挟み込み3台が並んで飛び込む。アロンソはベッテルをかわし3位へと順位を上げたが、3台の中で一番外側にいたマッサは逆に順位を6位に落としてしまう。



2周目、3位アロンソが2コーナーをオーバースピードでコースオフ。すぐにコースへと復帰するが、その間にベッテルにかわされ4位へ後退してしまう。

序盤、上位4台はある程度の間隔を保ち走行していたが、次第に1位と2位、3位と4位の間隔がそれぞれ詰まり始めた。


8周目、1コーナーで4位アロンソがベッテルをかわし、3位へと上がっていく。2周目にコースオフはあったもののアロンソのレースペースは悪くなく、さらに上位を追撃していく。4位へ落ちたベッテルだが9周目に単独スピン、4位はキープしているもののトップとの差は10秒以上に開いてしまった。


12周目、スタート直後2秒近くまであった、トップハミルトンと2位ウェバーとの差が0.5秒まで縮まってきた。そしてこの周、最終一つ手前のコーナーでハミルトンがミス、立ち上がりの加速が鈍る。すぐ後方にいたウェバーに最終コーナーでインをさされ、2位へ落ちてしまう。

しかしすぐに次のホームストレートでウェバーの真後ろにつけ、1コーナー手前で再逆転に成功した。ハミルトンはトップをキープしているものの、2位ウェバー、さらには3位アロンソも迫ってきており、トップと3位の差が1秒以内と接近戦が続いていく。


15周目、ハミルトンに詰まっていた2位のウェバーがピットイン、タイヤ交換を済ませていく。ウェバーを含め上位のマシンがタイヤの消耗による性能低下でタイムを落としてきており、ここでニュータイヤを履き、タイムを上げて、すぐに来るであろうハミルトンのタイヤ交換までにタイム差を縮め、逆転を狙う作戦に出た。


17周目、ハミルトンとアロンソがピットイン。
2台がコースに戻るとウェバーはすでにその前方にいた。前の周、ウェバーは他の2台よりも1秒以上速く、相手の見えないところで差を詰め、トップを奪うことに成功した。
上位が1回目のタイヤ交換を終えると、ウェバー、ハミルトン、アロンソ、マッサ、ベッテルとなった。ここから10周、上位3台は1秒から1秒半の間隔をそれぞれ保ちながら周回していく。しかし次第に間隔が詰まり始める。


29周目、各差が1秒を切り始める。3台とも1回目のタイヤ交換前同様にタイヤの性能低下でタイムを落とし始めていた。特にタイヤ交換が1番早かったウェバーはその分今のタイヤでの走行が他の2台よりも長く、一番タイムも落としている。


30周目、前の周のタイムがガクンと落ちたのを見てか、ウェバーがピットイン。トップを走っていたとはいえ、これ以上のこのタイヤでの走行は我慢できなかったのか。また、後方の2台に先に入られて、逆転されるのを警戒してか、またしても3台の中では一番にタイヤ交換を済ませた。


31周目、ハミルトンがピットイン。ピットに要した時間が前の周に入ったウェバーよりも約0.8秒早かった。ちなみにお互いのピットストップ前の差も約0.8秒。計算上では2台がピット出口で並ぶこととなる。

そしてハミルトンがピットアウトするとウェバーより前で1コーナーに入ることが出来た。しかしウェバーもハミルトンのすぐ後方につけており、1周前にタイヤ交換を終えている分、タイヤもしっかり温まっており、スピードに乗っている。そのまま2コーナーで外側からハミルトンをかわそうとするが、ここはハミルトン。タイヤがまだ完全に温まっておらず苦しいながらウェバーをブロック。トップを死守、ウェバーをコース外へはみ出すまで寄せていった。


32周目、3台では最後にアロンソが2回目ピットイン。

ハミルトンとの比較で、約0.5秒ピットストップは早く、ピット前のハミルトンとの差は約0.6秒。またしてのピット出口で並ぶ確立は高い。さらにハミルトンはウェバーとのバトルで少なからずタイムはロスしており、逆転の芽もある。


そして一周前のリプレイのようにアロンソがハミルトン一歩前でコースに復帰する。さらに前の周同様、先にピットを済ませているハミルトンに勢いがあり、これまた同様に2コーナーでハミルトンがアウトからしかけていく。

しかしここでアロンソはそれほどブロックするような動きを見せず、ハミルトンがオーバーテイク。トップを再度奪い返した。


ここからハミルトンは最速タイムを連発して、2位アロンソ、3位ウェバーを突き放しにかかる。36周目でアロンソに対して3秒以上、ウェバーに対しては6秒以上の差を築いた。しかしここからアロンソもペースを上げ、3秒以上は離されず、ハミルトンへついていく。

そして1回目、2回目同様に同じタイヤでの走行が10周前後を過ぎると、トップの2台のタイムは落ち始めた。しかしウェバーのタイムは落ちない。43週目には最大9秒近くに広がっていたハミルトンとの差がここに来て徐々に縮まり始めている。


これにはタイヤの使い方の違いが大きく影響していた。

2回目のピットストップ後を例に挙げると、ハミルトンは交換直後から最速タイムを連発するほどペースを上げ、タイヤを使用した。対するウェバーは一周辺り1秒から1秒半遅かった。当然、差は9秒近くにはなっているが、その分、ハミルトンよりもタイヤのライフが残っており、実際一週多く使用しているタイヤにも関わらずハミルトンよりも良いタイムが刻めている。先ほどまでのウェバーは遅かったのではなく、タイヤを労わって走行していたとみることもできる。


またもう一つ、F1ではレース中にハードタイヤとソフトタイヤ、それぞれの種類をレース中に使用しなくてはならないというルールがある。今回の低温レースに限っては特にこのハードタイヤがソフトタイヤに比べて、ペースは1秒半から2秒近く遅くなることがレース前からいわれていた。したがって、どのドライバーもこのハードタイヤでの走行を短くしたいと考えるはずだ。しかし、もう片方のソフトタイヤもそれほど寿命が長くはなく、多くの周回を安定したペースで走れず、タイムが落ちてしまう。ハードタイヤで走る周回を少なくしたいが、ソフトタイヤも長く持たない。ちなみに上位はスタートからソフトタイヤのみを使用してきており、最終ピットインではハードタイヤに交換しなければならない。


このことを踏まえると、現時点ウェバーは離されていても、ハミルトンのソフトタイヤが性能低下、タイムが落ちれば差は詰めることは可能。そして例えすぐにハードタイヤへ交換してもタイムは上がらない。その時に差を詰められるようこの自分のソフトタイヤをウェバーは大切に使用している走りのようだ。


そして51周目、ハミルトンが最後のピットイン。当然ハードタイヤに交換する。ハミルトンも飛ばしてきたとはいえ、ハードタイヤに関しては意識しており、現に16周、15周の間隔でタイヤ交換してきたのを20周まで延ばしてきた。ここからのハミルトンのタイムによってはレース展開が大きく変わってくると思われた。


しかし予想に反してハミルトンのタイムは良く、走り初めから、ウェバーよりも速かった。

こうなると2位アロンソ、3位ウェバーは苦しくなり、53周目にアロンソ、56周目にウェバーがそれぞれピットイン。順位そのままでコースに復帰。ハミルトンとの差もそれぞれピットストップ前よりも開いてしまった。さらにハードタイヤでのハミルトンは他2台よりも安定して常に速く、タイヤのみでなく、マシン特性、セッティングも含めてハミルトンが一枚上手だったようだ。


そして60周目、ハミルトンがトップでチェッカーを受け、今期2勝目、通算16勝目の優勝。2位にアロンソ、3位にウェバーが続いた。

4位には選手権リーダーのベッテル。序盤のスピンでトップ争いから遅れ、その後はずっとフェラーリのマッサの後方5位に押さえ込まれていたが、最終周で、マッサとベッテルは同時にピットイン。フェラーリのマッサがタイヤ交換に若干遅れ、その隙に4位を奪った。


この2台も最終周までソフトタイヤを履き、ハードタイヤの走行はたった1周のみ。この極端さからもいかにハードタイヤを意識して避けていたかが良くわかる。


そんな中、ハードタイヤでペースの良かったハミルトン。
たしかにハードタイヤを警戒はしていたが、他チームに比べてれば少し余裕があったのか。もしそうだったとしたら先にハードタイヤへの交換ができ、他チームよりもソフトタイヤでの走行が短くできる。そうなれば交換直後から攻めた走行もできる。振り返ると、ハミルトンは他と比べると非常に良い流れにレース展開を持っていけていたように見えた。

しかしこれが逆にハードタイヤが予想通り、タイムがでなければ、アロンソ、ウェバーはもしかしたら2位や3位ではなかったかもしれない。
今回のレース、このハードタイヤを十分に使えるか使えないかがこの3台の接近戦では勝敗を大きく左右させたように見えた。そしてその点をハミルトンとマクラーレンチームが上手く押えて掴んだ今回の勝利だったのだろう。