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Formula Beginner

初心者向けのF1解説ブログです。
多くの人がF1に興味をもって、好きになってもらいたい。
そのきっかけの一部になれたら・・・
そう願って毎回書かさせて頂いています。

2011年、第18戦F1アブダビGP

マクラーレンのルイス・ハミルトンが第10戦ドイツGP以来、今期3勝目をあげた。

予選1位スタートの2011年のF1チャンピオン、セバスチャン・ベッテルがスタート直後にスピン。そのままリタイヤをする中、直後の予選2位からしっかりとこのチャンスをものにしたハミルトン。

しかし、ベッテルが目の前から消えてのレースは2位でレースを終えたフェラーリのフェルナンド・アロンソとの激しいバトルで、決して楽な展開ではなかったように見えた。バトルといっても、今回は抜きつ抜かれつのものではなく、2秒から3秒後方にアロンソは常につけ、プレッシャーをかけ続けてるというものだ。

今年のハミルトンの勝利する姿を見ていて、ついにアブダビGPで表彰台の中央に立ったという印象を受けた。

それも過去2年間、ハミルトンとマクラーレンチームはこの地では常に優勝できるだけの速さ、パフォーマンスを見せていたからだ。

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アブダビでのF1は2009年の最終戦として初開催され、今年で3年目を迎えたF1で唯一のトワイライトレースである。


2009年、前年度のチャンピオンとして臨んだシーズン、新しいマシン規定となったF1で、マクラーレンのマシンは序盤から出遅れ、早々チャンピオン争いから脱落、しかし中盤以降、徐々にまき開始の兆しをみせ、2勝を挙げて最終戦を迎えていた。

そしてアブダビGPでも速さを見せ、予選もこの年4度目の予選1位を獲得した。

スタートも無難に1位をキープし、レースをリードした。しかし、予選で2位につけていたレッドブルのベッテルが後方放させずについて来ていた。予選でのタイム差を考えれば、もう少しタイム差を稼げるように予想されていたが、思ったほどベッテルを引き離せない。

そして1回目のピットストップで逆転されてしまう。しかし、その前後からハミルトンにはマシントラブルの兆しが見えており、1位を逆転された直後、トラブルにより再度ピットイン、そのままリタイヤしてしまった。予選の全セッションでトップタイムを記録。優勝できる速さは十分示しており、非常に残念なマシントラブルだった。

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2010年、この年も最終戦としての開催。そして4人のドライバーにチャンピオンの可能性があった非常に緊迫したレース。この最終戦を前にハミルトンはポイントリーダーから24点差のランキング4位。可能性は確かにあるが、ほぼ絶望的に近い状況。(レースの優勝は25点獲得)

ハミルトンは予選で2位、レースも予選1位のベッテルに離されずについていく、前年とは逆のレースを見せていた。しかし1回目のピットストップ直後、異なるレース作戦をとる、ルノーのロバート・クビサの後方でレースに復帰してしまう。1位のベッテルはクビサの前でコース復帰していた。

ここからハミルトンは直線スピードの速いセッティングのクビサに捕まってしまう。1周のラップタイムはクビサよりも速く走れるだけのマシンはあるが、追い越しを仕掛ける直線ではクビサに追いつけない。10周で10秒近く、最終的には13周捕まっている間に、ベッテルはあっという間にハミルトンを突き放し、レースを制するのに十分んなマージンを稼いでしまった。

このままレースはベッテルが優勝し、他のチャンピオン争いのライバルの順位も影響し、史上最年少での獲得となった2010年チャンピオンを劇的な形で決めるレースとなった。

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過去2年間をハミルトンを中心に振り返り、2011年のレースを見ると、やっとアブダビGPで勝てたという一つの見方がわかると思う。もちろん今期中盤からの不調からの復活っという印象の方がこの勝利からは圧倒的に強いのだが。


3年連続の予選1列目、そして3年連続の優勝争い。ハミルトンとの相性が良いサーキットともとれるが、マクラーレンのマシンも相性が良いように思える。3年とも前戦のレースは予選、決勝とも優勝を狙える、また争うような成績やマシン戦闘力はお世辞にもあるとは言えないのだが、このアブダビに来ると急にマシンが速くなるように見える。

もちろん来年もシーズン終盤戦の舞台として開催される。仮にチャンピオン争いの中にハミルトンが入れば、マクラーレンとハミルトンとしては有利に、そして優勝を狙える一つのレースと計算できるのではないだろうか。もちろん来年のマシン次第なのは明らかだが。


しかし、ここで忘れてはいけないのは3年連続予選1列目の顔合わせが同じ、そして優勝者は必ずそのいずれかであるということ。

つまりはハミルトンよりもアブダビで成績の良いドライバーがいるということを。


過去のレースが次の年に影響を及ぼすことなどなにもないのだが、来年もこの2人がアブダビGP1列目に並んでいるのかもしれない。

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2011年、最終戦ブラジルGP

今期の勢力図を象徴するようなレッドブルの2台の完璧なワン・ツーフィニッシュでシーズンは締め括られた。

ただ、いつもと異なるのは、今期11度あった史上最年少の2年連続ワールドチャンピオン、ベッテルの優勝ではなく、ここまで未勝利のチームメイト、ウェバーの今季初優勝だったことだ。

2位で2011年の最後のレースを終えたベッテルだが、レース序盤からギアトラブルを抱え、ウェバーにこそ1位は譲ったものの、トラブルを抱えたマシンを労わり、時よりペースダウンを強いられる中、2位をしっかりと堅持し、マシンをゴールまで運んで行った。


このベッテルのギアトラブルを抱えながらの走り、そしてこの場所、インテルラゴスサーキットでのブラジルGP。一昔前、同じような状況で、いや、ベッテルよりも苦しく、悪条件の中、しかも優勝したドライバーがいた。


そう、あのアイルトン・セナだ。


1991年、近年のシーズン終盤開催とは異なり、開幕第2戦の舞台だったインテルラゴスでのブラジルGP

マクラーレン・ホンダを駆るセナが、序盤この年の最大のライバルとなるマンセルのウィリアムズ・ルノーのプレッシャーに、中盤から後半は徐々に失っていくギアトラブルに、最後は雨の降り始めた難しいコンディションの中、6速のみ走りきる神業を見せ、セナのF1での最大の悲願とも言っても過言ではない母国ブラジルGPの初優勝を掴んだのだった。


しかし2011年のブラジルGPで、この場面以上に、考え深い気持ちにさせ、昔を思い出させてくれる場面があった。

レース序盤に数周に渡って続いたブルーノ・セナ対ミハエル・シューマッハの9位争いだ。

もちろん、優勝やレースに影響を与えるようなバトルでは決してなかった。その結末も1コーナーで接触し、2台ともポイント圏外でこのレースを終えている。


ではなぜこれが考え深い気持ちにさせるのか。それはこのブラジルGP、インテルラゴスで、逃げるセナをシューマッハが追う、という場面だったからだ。


アイルトン・セナの母国初優勝の翌年、1992年のブラジルGPでもその場面は訪れるのだが、今回の話はそのもう少し後、1994年のブラジルGPでの話だ。

当時、ブラジルGPは開幕戦の舞台。前年よりF1マシンは大きく変化し、前年のチャンピオンは引退しサーキットを去った。勢力図は、唯一のチャンピオン経験者セナ対フル参戦3年目の若きシューマッハ。この対決がこれからのF1の間違いなく中心、そして最大の注目点でもあった。そんな年の第1戦だった。


当然の様に予選1位はセナ、2位にシューマッハが続く。レーススタートから序盤はセナがレースをリードし、シューマッハがそれを追う展開。

開幕戦から下馬評通り、またファンが望む2人の接近戦のバトルだった。

ただ、セナは1位こそキープしているものの、マシンはバンピーな路面に手を焼き、苦しそうな走りに感じられた。

対するシューマッハ。スタートでこそ若干出遅れるものの、すぐに遅れを取り戻し、セナの真後ろまで迫ってきた。彼のマシンにアドバンテージがあるのは走りからすぐに見て取れてわかった。


そして1回目のピットストップ。2台は同じ周に同時にピットに入り、給油とタイヤ交換を行う。

この年より再導入されたレース中の給油。この給油作業、そしてその作業時間がどのようになるのかにもこの年の注目の一つだった。


先にピット作業に入り、この時点での最短静止時間で給油とタイヤ交換作業を終え、再発進するセナ。

しかし、そのセナがコース復帰を目指すその前方には、さらに短い時間で作業を終えたシューマッハが、もうピットレーンを走っていた。

鮮やかな同時ピットストップ作業での逆転劇だった。


そしてこのピットストップ以降、立場が変わり、逃げるシューマッハと追うセナとなった。中盤以降、やはりこの日のシューマッハは速く、セナはどんどん置いていかれてしまった。

そしてレース終盤、セナはスピンをしてリタイヤしてしまう。


レースはそのままシューマッハが圧倒的な速さで優勝。セナ離脱もあり、2位以降全車周回遅れのとにかく圧倒的な速さで1994年の開幕戦を制した。


セナは確かにこのレースでの速さはシューマッハに及ばなかったが、まだ開幕戦を終えたのみ、

残りまだ15戦。必ず巻き返してくる。

なにより前年度チャンピオンチームと3度のワールドチャンピオン・セナ。この当時チャンピオン候補ナンバー1の最強の組み合わせ。勝って当然のセナが開幕戦母国でリタイヤ、シューマッハにも敗れた。

これは第2戦以降、そしてシーズンを通して面白くなっていくに違いない。


なによりブラジルGP序盤のようなセナ・シューマッハ接近戦バトルを1994年シーズンはまだまだ見れる。

今振り返れば、世代交代の新旧チャンピオン対決をファンは存分に期待し、見ることができるはずだった。「音速の貴公子」対「皇帝にとなる前のF1ターミネーター」。キャッチコピーを使えばこのような感じだろうか。


しかしそれはこのブラジルGPが、ほとんど最初で最後となってしまうのだった。

続く第2戦パシフィックGP、セナはスタート直後の1周目の1コーナーで他車に追突され、リタイヤ。

そして、第3戦、5月1日のサンマリノGPを迎えることとなってしまう。


当時のファンが期待し、見たかったレースは、ほとんどたった1戦のみで終わってしまった。

いや、今でも見たかったと感じるファンは多いんではないだろうか。



そして結果的にこのレースがセナにとっての最後のブラジルGPとなってしまったレースだった。


あれから16年後、マシンやレースは変わった。セナが再びF1を走っていると言っても、もちろんアイルトン・セナではない。甥のブルーノ・セナだ。

チームやマシン、順位はたとえ異なっていても、セナ対シューマッハ、インテルラゴスサーキットでのブラジルGPで、逃げるセナ、それを追うシューマッハ。


一昔前の、あのシーズン開幕の期待感をなんだか懐かしく、再び思い出させてくれる、考え深い2011年のブラジルGPでのワンシーンだった。


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1994ブラジルGP(左:A・セナ 右:シューマッハ)    2011ブラジルGP(左:シューマッハ 右:B・セナ)

2010年、シューマッハがF1に復帰して以来の彼を皆さんどうみていますか。


成績をみればこの2年間、優勝はおろか表彰台すらなし、2年連続でチームメイトに年間ポイントで下回り、度重なる他のドライバーとの接触。それによる数多くのペナルティー。


ただ接触に関しては、彼が限界を攻めている証ともとれる。昔から勝負所の限界ギリギリのバトルでは接触が少なかったドライバーではなかったのだから。


とはいえ、3年間のブランクの影響、年齢による限界なのか。再度引退すべき、若い世代にシートを譲るべき等々、厳しい意見は少なくはなかった。



これも7度のチャンピオンの現役復帰というF1ファンが心待ちにしていた期待がいかに大きいものだったかが良くわかる。


誰もがたとえ3年間のブランクがあったとしても、どこかでフェラーリでの全盛期の走りを期待してしまうのも仕方がないのかもしれない。なぜならそれは他の誰でもなく、シューマッハなのだから。


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もちろん今の成績では物足りない気持ちは当然感じる。





ただ徐々にファンが期待しているレースを彼は見せ始めているように今シーズンは感じた。


カナダGPでの天候変化による難しいコンディションの中での表彰台争い。


最後尾スタートからの追い上げで、5位になったベルギーGP


続くイタリアGP、マシンのトップスピードを活かしてハミルトンを徹底的に押さえ込んだバトル。





僕にはこれだけでも彼の復帰はF1にとっての成功だと思う。もちろんチャンピオンを争ってる姿を再び見たいが、そうでなくても、こういった一戦一戦の存在感、若いドライバーとのバトル。


残り長くはないであろうF1での彼の姿、たとえ優勝できなくても、表彰台に上がれなくとも、年に数戦でも良い、これぞシューマッハの走りを見せてほしい。





そもそも今ファンに見せてくれている彼のレースが如何に貴重なのもなのか考えてもらいたい。





彼がサーキットから去った2007年シーズン以降を振り返ってみよう。


F1ドライバーは大きく変わった。若いドライバーが増え、年齢層も下がった。


新しいチャンピオンもたくさん出た。


F1マシンの形やレースの戦略も大きく形を変えた。





たしかに若いドライバーたちの台頭、活躍が、自然と彼の穴を埋めていったように感じる。


ただ同時にそんな変化したF1で、実際に彼とのレースを見てみたい気持ちもないわけではなかった。





そんなところへの2010年のシーマッハの復帰。


F1にとって彼の復帰ほど大きなニュースはなかったと思う。


なんといっても歴代最多7度のチャンピオンのレースをまた見ることができるのだから。


それだけでも本当に嬉しいことだが、それだけではない。





この3年後というのがとても良いタイミングに感じた。


彼が不在の間に、彼を破って最年少チャンピオンとなったアロンソの記録を、さらに破った2人の史上最年少チャンピオン経験者、ハミルトンとベッテルの登場。シューマッハの引退後にF1デビューしたドライバーたちだ。そしてロズベルグやクビサのようなシューマッハとは共にレース経験はあっても、直接バトルまで見る機会はほとんどなかった世代がチームのエースになっており、チャンピオン獲得以降、確実に成長し、若い世代とは異なる強さと速さを得たバトン。


ついにフェラーリドライバーとなった、現役最高のドライバーと評価されるアロンソ。2006年、シューマッハ・アロンソの対決の続きを期待させてくれる。


2012年はこれにライコネンも加わる。2006年ブラジルGPのラストバトルの再現なるか。





どのドライバーとのバトルやレースを見たいと思ったことのあるファンは少なくないんじゃないだろうか。もし彼が復帰をしなかったら、これらの対決図式は全て想像や空想でしかなかったのだから、彼がF1に今いることは本当に貴重で、ファンにはありがたいことなのだと思う。


彼が真のレーサーであることに本当に感謝したい。








この先の彼の契約が更新されるかどうかは現時点ではわからないが、もしかしたら2012年が最後になってしまうかもしれない。2010年より2011年は確実に良い走り、良いレースを見せてくれたと思う。


年齢的な問題は確かにあっても、現代のF1マシン、新しいチームでのF1レースといった現代のF1には十分慣れたと思う。この2年間で彼自身ができることは全て整ったような気がする。





そして迎える2012年シーズン。ライコネンの復帰で6人のチャンピオン経験者が揃う。


アグレッシブ差は1番、良くも悪くもいつもなにかしてくれそうなルイス・ハミルトン。


一皮も二皮もむけて、速く、強くなったジェンソン・バトン。


帰ってきた、フェラーリ・シューマッハの後継者、キミ・ライコネン。


フェラーリドライバーとしての勝負の3年目、シューマッハを破ってタイトル連覇したフェルナンド・アロンソ。


そして史上最年少の2年連続チャンピオンのセバスチャン・ベッテル。





役者は揃い、舞台はついに整った。


もちろん彼の活躍には彼のマシンの出来にも大きく左右されてしまうのかもしれないが、たとえ優勝争いができなくとも、いいレース、いいバトルを一戦でも多く見せてほしいと思う。





彼以外のトップドライバーたちのレースはまだ数年見ることが出来るだろう。


しかしそんな彼らとシューマッハのレースは残り長くないと思う。





7度のチャンピオンがライバルたちと見せてくれるレースを、2012年は是非期待して、楽しんでいただきたい。



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