7月24日、F1ドイツグランプリがニュルブルクリンクサーキットで開催された。
F1世界選手権は第10戦を向かえ、いよいよここドイツグランプリから後半戦に入った。
予選1位は2戦連続でレットブルのウェバー。2番手はマクラーレンのハミルトン。予選終了間際、快心のアタックを見せレットブル2台の一列目独占を阻止、2台の間に割って入った。よって3番手は選手権リーダー、レットブルのベッテル。10戦目にして今期初めて予選一列を逃した。これにフェラーリ勢2台が続き、4番手がアロンソ、5番手がマッサの順位となった。
スタート10分前、小雨が降り始めた。事前の予報では雨も予想されていたがスタート直前にはその小雨もやんでおり、路面もほぼ乾いている。気温13度、湿度75%、サーキット上空は依然として雲で覆われており、雨が絡む要素も残しつつ、今年一番の低気温の中レースが始まっていく。
そして午後1時レッドシグナルが消え、60周のスタート。
予選1位スタートのウェバーがスタートミス。あっさりと2番手スタートのハミルトンに1コーナートップを奪われてしまった。
その後方で好スタートをきったのはフェラーリ2台。特に5番手スタートのマッサの動き出しは非常に良かったが、前方3位スタートのベッテルに進路を塞がれてしまい、コースのアウト側の進路をとらされてしまう。
そして1コーナーにベッテルを2台のフェラーリが挟み込み3台が並んで飛び込む。アロンソはベッテルをかわし3位へと順位を上げたが、3台の中で一番外側にいたマッサは逆に順位を6位に落としてしまう。
2周目、3位アロンソが2コーナーをオーバースピードでコースオフ。すぐにコースへと復帰するが、その間にベッテルにかわされ4位へ後退してしまう。
序盤、上位4台はある程度の間隔を保ち走行していたが、次第に1位と2位、3位と4位の間隔がそれぞれ詰まり始めた。
8周目、1コーナーで4位アロンソがベッテルをかわし、3位へと上がっていく。2周目にコースオフはあったもののアロンソのレースペースは悪くなく、さらに上位を追撃していく。4位へ落ちたベッテルだが9周目に単独スピン、4位はキープしているもののトップとの差は10秒以上に開いてしまった。
12周目、スタート直後2秒近くまであった、トップハミルトンと2位ウェバーとの差が0.5秒まで縮まってきた。そしてこの周、最終一つ手前のコーナーでハミルトンがミス、立ち上がりの加速が鈍る。すぐ後方にいたウェバーに最終コーナーでインをさされ、2位へ落ちてしまう。
しかしすぐに次のホームストレートでウェバーの真後ろにつけ、1コーナー手前で再逆転に成功した。ハミルトンはトップをキープしているものの、2位ウェバー、さらには3位アロンソも迫ってきており、トップと3位の差が1秒以内と接近戦が続いていく。
15周目、ハミルトンに詰まっていた2位のウェバーがピットイン、タイヤ交換を済ませていく。ウェバーを含め上位のマシンがタイヤの消耗による性能低下でタイムを落としてきており、ここでニュータイヤを履き、タイムを上げて、すぐに来るであろうハミルトンのタイヤ交換までにタイム差を縮め、逆転を狙う作戦に出た。
17周目、ハミルトンとアロンソがピットイン。
2台がコースに戻るとウェバーはすでにその前方にいた。前の周、ウェバーは他の2台よりも1秒以上速く、相手の見えないところで差を詰め、トップを奪うことに成功した。
上位が1回目のタイヤ交換を終えると、ウェバー、ハミルトン、アロンソ、マッサ、ベッテルとなった。ここから10周、上位3台は1秒から1秒半の間隔をそれぞれ保ちながら周回していく。しかし次第に間隔が詰まり始める。
29周目、各差が1秒を切り始める。3台とも1回目のタイヤ交換前同様にタイヤの性能低下でタイムを落とし始めていた。特にタイヤ交換が1番早かったウェバーはその分今のタイヤでの走行が他の2台よりも長く、一番タイムも落としている。
30周目、前の周のタイムがガクンと落ちたのを見てか、ウェバーがピットイン。トップを走っていたとはいえ、これ以上のこのタイヤでの走行は我慢できなかったのか。また、後方の2台に先に入られて、逆転されるのを警戒してか、またしても3台の中では一番にタイヤ交換を済ませた。
31周目、ハミルトンがピットイン。ピットに要した時間が前の周に入ったウェバーよりも約0.8秒早かった。ちなみにお互いのピットストップ前の差も約0.8秒。計算上では2台がピット出口で並ぶこととなる。
そしてハミルトンがピットアウトするとウェバーより前で1コーナーに入ることが出来た。しかしウェバーもハミルトンのすぐ後方につけており、1周前にタイヤ交換を終えている分、タイヤもしっかり温まっており、スピードに乗っている。そのまま2コーナーで外側からハミルトンをかわそうとするが、ここはハミルトン。タイヤがまだ完全に温まっておらず苦しいながらウェバーをブロック。トップを死守、ウェバーをコース外へはみ出すまで寄せていった。
32周目、3台では最後にアロンソが2回目ピットイン。
ハミルトンとの比較で、約0.5秒ピットストップは早く、ピット前のハミルトンとの差は約0.6秒。またしてのピット出口で並ぶ確立は高い。さらにハミルトンはウェバーとのバトルで少なからずタイムはロスしており、逆転の芽もある。
そして一周前のリプレイのようにアロンソがハミルトン一歩前でコースに復帰する。さらに前の周同様、先にピットを済ませているハミルトンに勢いがあり、これまた同様に2コーナーでハミルトンがアウトからしかけていく。
しかしここでアロンソはそれほどブロックするような動きを見せず、ハミルトンがオーバーテイク。トップを再度奪い返した。
ここからハミルトンは最速タイムを連発して、2位アロンソ、3位ウェバーを突き放しにかかる。36周目でアロンソに対して3秒以上、ウェバーに対しては6秒以上の差を築いた。しかしここからアロンソもペースを上げ、3秒以上は離されず、ハミルトンへついていく。
そして1回目、2回目同様に同じタイヤでの走行が10周前後を過ぎると、トップの2台のタイムは落ち始めた。しかしウェバーのタイムは落ちない。43週目には最大9秒近くに広がっていたハミルトンとの差がここに来て徐々に縮まり始めている。
これにはタイヤの使い方の違いが大きく影響していた。
2回目のピットストップ後を例に挙げると、ハミルトンは交換直後から最速タイムを連発するほどペースを上げ、タイヤを使用した。対するウェバーは一周辺り1秒から1秒半遅かった。当然、差は9秒近くにはなっているが、その分、ハミルトンよりもタイヤのライフが残っており、実際一週多く使用しているタイヤにも関わらずハミルトンよりも良いタイムが刻めている。先ほどまでのウェバーは遅かったのではなく、タイヤを労わって走行していたとみることもできる。
またもう一つ、F1ではレース中にハードタイヤとソフトタイヤ、それぞれの種類をレース中に使用しなくてはならないというルールがある。今回の低温レースに限っては特にこのハードタイヤがソフトタイヤに比べて、ペースは1秒半から2秒近く遅くなることがレース前からいわれていた。したがって、どのドライバーもこのハードタイヤでの走行を短くしたいと考えるはずだ。しかし、もう片方のソフトタイヤもそれほど寿命が長くはなく、多くの周回を安定したペースで走れず、タイムが落ちてしまう。ハードタイヤで走る周回を少なくしたいが、ソフトタイヤも長く持たない。ちなみに上位はスタートからソフトタイヤのみを使用してきており、最終ピットインではハードタイヤに交換しなければならない。
このことを踏まえると、現時点ウェバーは離されていても、ハミルトンのソフトタイヤが性能低下、タイムが落ちれば差は詰めることは可能。そして例えすぐにハードタイヤへ交換してもタイムは上がらない。その時に差を詰められるようこの自分のソフトタイヤをウェバーは大切に使用している走りのようだ。
そして51周目、ハミルトンが最後のピットイン。当然ハードタイヤに交換する。ハミルトンも飛ばしてきたとはいえ、ハードタイヤに関しては意識しており、現に16周、15周の間隔でタイヤ交換してきたのを20周まで延ばしてきた。ここからのハミルトンのタイムによってはレース展開が大きく変わってくると思われた。
しかし予想に反してハミルトンのタイムは良く、走り初めから、ウェバーよりも速かった。
こうなると2位アロンソ、3位ウェバーは苦しくなり、53周目にアロンソ、56周目にウェバーがそれぞれピットイン。順位そのままでコースに復帰。ハミルトンとの差もそれぞれピットストップ前よりも開いてしまった。さらにハードタイヤでのハミルトンは他2台よりも安定して常に速く、タイヤのみでなく、マシン特性、セッティングも含めてハミルトンが一枚上手だったようだ。
そして60周目、ハミルトンがトップでチェッカーを受け、今期2勝目、通算16勝目の優勝。2位にアロンソ、3位にウェバーが続いた。
4位には選手権リーダーのベッテル。序盤のスピンでトップ争いから遅れ、その後はずっとフェラーリのマッサの後方5位に押さえ込まれていたが、最終周で、マッサとベッテルは同時にピットイン。フェラーリのマッサがタイヤ交換に若干遅れ、その隙に4位を奪った。
この2台も最終周までソフトタイヤを履き、ハードタイヤの走行はたった1周のみ。この極端さからもいかにハードタイヤを意識して避けていたかが良くわかる。
そんな中、ハードタイヤでペースの良かったハミルトン。
たしかにハードタイヤを警戒はしていたが、他チームに比べてれば少し余裕があったのか。もしそうだったとしたら先にハードタイヤへの交換ができ、他チームよりもソフトタイヤでの走行が短くできる。そうなれば交換直後から攻めた走行もできる。振り返ると、ハミルトンは他と比べると非常に良い流れにレース展開を持っていけていたように見えた。
しかしこれが逆にハードタイヤが予想通り、タイムがでなければ、アロンソ、ウェバーはもしかしたら2位や3位ではなかったかもしれない。
今回のレース、このハードタイヤを十分に使えるか使えないかがこの3台の接近戦では勝敗を大きく左右させたように見えた。そしてその点をハミルトンとマクラーレンチームが上手く押えて掴んだ今回の勝利だったのだろう。