F1世界選手権は前戦ドイツグランプリから2週連続開催で、第11戦ハンガリーグランプリを迎えた。このハンガリーグランプリ後、F1は3週間の夏休みに入り、うち2週間はファクトリーも閉鎖される。どのチームも今回のグランプリを良い結果で締めくくり、夏休みを迎えたいところだ。
土曜日の予選で1位を獲得したのは3戦ぶりにレッドブルのベッテル。しかし、今期の中では一番苦しい状況下での予選1位獲得だったように見えた。金曜日の練習走行からレッドブルはライバルのマクラーレン、フェラーリに終始リードされていたからだ。そして迎えた予選、序盤からフェラーリとマクラーレンがトップタイムを記録、今回こそはレッドブルの昨年から続いている14戦連続予選1位が途絶えるかと思われた。しかし予選終了間際、ベッテルが暫定トップのハミルトンのタイムを0.16秒上回り、辛くもトップを奪い取ってみせた。
2番手はそのハミルトン。終了間際の最終タイムアタックでミスをしてしまい、自身のタイムを更新することができず、今回こそはと思われた予選1位は獲得できなかった。しかし、今回のハミルトンの競争力は十分。3位にチームメイトのバトンがつけていることからも、今回のマクラーレンのマシンは好調である。4位、5位はフェラーリの2台。今回はマッサが今期初めてチームメイトのアロンソを破っての4位。アロンソは週末を通して好調だっただけに少々物足りない予選5位だった。6位はレッドブルのウェバー。予選でトラブルに見舞われ、満足なアタックが出来ず、チームメイトのベッテルに差をつけられる形となってしまった。
迎えた7月31日、決勝日はハンガリーグランプリでは非常に珍しい雨。過去25回のレースを合わせても今回で2回目のウェットレースである。その前回、2006年の雨のレースを自身初優勝で飾ったのがバトンであった。そしてそのバトン、今回のレースで200戦目のメモリアルレースを迎えていた。そして、奇しくも初優勝時同様の雨。雨絡みのレースでは昨年、今年と強さを見せているだけに、メモリアルウィンを狙うバトンにとっては絶好のコンディションとなった。
スタート直前、サーキットには小雨が降っており、路面も濡れている。全車雨用のタイヤを選択している。
そして70周の決勝はレッドシグナルが消え、始まっていった。
全車まずまずのスタートを切って、1コーナーはベッテルが取った。ハミルトン、バトン、アロンソが続いた。1コーナーの立ち上がりで、2位ハミルトンと3位バトンが並んでいくが、ここはバトンが引き、順位変わらず。またアロンソが1コーナー立ち上がりで加速が鈍り、6位まで順位を落としてしまう。
1周目、ベッテル、ハミルトン、バトンの順で通過。アロンソは一つ順位を上げ5位、ウェバー8位で通過した。
コースは予想以上に滑りやすく、随所でマシンがスライドしながら走行している。
そんな難しいコンディションの中、2位ハミルトンは序盤からトップのベッテル攻略に取り掛かる。何度もマシンを滑らせながら、ベッテルの後方にぴったりつけて隙を狙っていく。
すると5周目、2コーナーを2台が並んで進入するが、ここでベッテルが滑りコースオフ。労せずしてハミルトンがトップを奪取。また2位に落ちたベッテルのすぐ後方にはもう3位バトンが迫っており、マクラーレン勢2台は雨でも好調のようである。
8周目、トップのハミルトンと2位ベッテルとの差は5.4秒まで開いた。雨はすでに止んでおり、路面もコース後半は乾き始めている。しかし依然として滑りやすいコンディションに変わりはなく、フェラーリ2台はそろって滑り、コースオフ。順位を下げている。
10周目、6位を走行していたレットブルのウェバーがピットイン。晴天用タイヤに交換していく。
次の周には3位バトン。毎度ながら、コンディション変化のためのタイヤ交換には早めに動いてくる。
12週目、先にタイヤを交換したウェバーの区間タイムが良いのを見て、ハミルトン、ベッテル、アロンソもピットイン。コースに戻った時点では、ハミルトン、ベッテル、バトン、アロンソ、ウェバーの順。しかし、先にタイヤを交換したウェバー、バトンはタイヤが完全に温まり勢いがあり、14週目バトンは2位ベッテルを、ウェバーは3位アロンソをそれぞれかわし、順位を上げていく。たった1周、2周ではあるが、タイヤ交換のタイミングの差がはっきりと現れた。
15周目、ハミルトン、バトンのマクラーレン1、2体制、3位がベッテル、4位がウェバー、5位がアロンソの順である。
ここからハミルトンは快調な走りを見せて、20周目には2位バトンに9秒以上の差をつけてトップを直走る。
24周目、コース脇ではあるが一台マシンがトラブルでストップ、炎上した。
この状況を見て、セーフティーカーの警戒、また同時にタイヤ交換の時期も迎えており、この後上位全車タイヤ交換のためピットインをする。
29周目、しかし結局セーフティーカーは導入されず、マシンは撤収された。
タイヤ交換後も順位は変わらず、ハミルトン、バトン、ベッテル、ウェバー、アロンソ。
上位3台は7秒、5秒と間隔を置いて走行しているが、4位争いが激しくウェバーの直後に5位アロンソが迫っている。アロンソの方に勢いはあるようだが、ウェバーに並ぶことは出来ても、抜くことまではできないでいる。
ちなみにこの時点まで上位は全車、スタート時こそは雨天用を使用し、その後は2種類の晴天用タイヤのうちソフトタイヤのみを使用してきている。ソフトタイヤはやはり耐久性が低く、ドライバーによって差はあるものの15周前後にはタイヤ交換が必要になるほど、タイムが悪くなる。
また、少々ややこしいルールではあるが、雨天用のタイヤを一度でも使用すると、2種類の晴天用タイヤ使用義務はなくなる。よって今回はこのルールは当てはまらない。
36周目、アロンソが上位では一番に3回目のタイヤ交換のためピットイン。ウェバーに押えられていたのを嫌って、さらにニュータイヤでのスパートで逆転を狙ってだろう。
38周目、アロンソはウェバーよりも3秒以上早い最速タイムを記録していく。ちなみにアロンソは3回目でもソフトタイヤを選択した。一番にタイヤ交換を済ませたこと、さらには再度ソフトタイヤを選択したところを見ると、残り周回数からアロンソはもう4回目のタイヤ交換が必要になりそうだ。
39周目、ウェバーが3回目のピットイン。ウェバーはハードタイヤを選択してピットアウト。
40周目にはハミルトンがピットイン、ソフトタイヤでピットアウト。
41周目にはベッテル。チームメイトウェバー同様、ハードタイヤを選択。
42周目、上位では最後にバトンがピットイン。ハードタイヤを選択。
アロンソ、ハミルトンはソフトタイヤ、バトン、ベッテル、ウェバーはハードタイヤを3回目のタイヤ交換で選択し、ここでタイヤ戦略が分かれた。
この時点で順位はハミルトン、バトン、アロンソ、ベッテル、ウェバー。
47周目にアロンソが4度目のタイヤ交換。早めのタイヤ交換とスパートが功を奏し3位まで順位を上げてきたが、その代償に早々タイヤの性能低下が始まり、タイヤ交換が必要になってしまった。ここではハードタイヤを選択して5位で戦列に復帰していく。
またこの周、トップのハミルトンがスピン、コース上に逆を向いて止まった。この期に2番手を走行していたバトンがトップへ上がっていく。ハミルトンもすぐざまコースへ戻り、バトンの直後につける。さらには3位のベッテルも接近しており、上位3台の差が一気になくなった。またこの前の周辺りから再度小雨が降り始め、各車ペースダウンを強いられている。
雨の中を晴天用タイヤで走行する難しいコンディションの中、チームメイト同士のトップ争いが激しくなっていく。バトンにトップを譲ったものの、ハミルトンは序盤同様真後ろにつけ、仕掛けるチャンスを伺う。
51周目、ここまでハミルトンを押えてきたバトンだか、濡れた路面で滑り、コースアウト。ハミルトンが再度トップに立つ。しかしバトンもすぐにコースへ復帰。そして、最終コーナーでハミルトンに再接近すると、ホームストレートの直線を活かして次の1コーナーで再々逆転。序盤とは違い、バトンもここは譲らない。さらに次の2コーナーでバトンがやや外へ膨らんだインをハミルトンがつき、またしても逆転。雨の中マクラーレンの2台がすごいバトルを演じている。そして先ほどまでの小雨がやや強くなり始めていた。
同周、4位ウェバーがピットイン。雨がやや強くなってきたのを察しピットイン、雨天用タイヤに交換した。
翌週、トップのハミルトンも雨天用タイヤに交換する。しかし、バトン、ベッテル、アロンソはピットに入らない。
すると今度は先ほどまでの雨は止み、タイムも雨天タイヤのハミルトン、ウェバーよりも、晴天用タイヤのバトン等の方が速くなってきた。こうなると先手を打ってタイヤ交換した2台の作戦は大失敗となった。
さらにハミルトンにはペナルティーが下り、制限速度のあるピットレーンを通過する義務が課せられた。原因は47周目のスピンに関係していた。スピンしてコース上に止まった際、直後に周回遅れのマシンが数台迫っている中、すぐさまコース上で急発進のスピンターンをして復帰した。非常に危ない場面だったが周回遅れのマシンが接触を避け、コースアウトして通過したため接触は免れた。しかしこれが他車をコース外へ押出す危険なコース復帰と見なされ、今回のペナルティーに至った。再度晴天用のタイヤへの交換と合わせて計2回のピットイン、踏んだり蹴ったりの状況とはまさにこのことである。これで優勝争いからも完全に脱落していくこととなる。
53周目、ウェバーがピットイン。晴天用のハードタイヤに交換した。
54周目にはハミルトンも晴天用のハードタイヤへ交換。
そして56周目、本日6度目のピットインでハミルトンはペナルティーを消化した。
ハミルトンがコースへ戻ると奇しくも同じように作戦を失敗したウェバーの直後につけており、4位争いが始まっていく。しかし接近はしているがなかなか抜くチャンスを見出せないようだ。
63周目、2台が周回遅れの集団に追いついた。4位ウェバーが周回遅れのマシンを交わすのに手間取る。直後につけていたハミルトンはこの隙を見逃さず、ウェバーを周回遅れとともに交わし、4位へあがった。
小雨による難しいコンディションの間を利用し、2位ベッテルに6秒近くの差をつけたトップのバトン。その後もその差を保ち周回を続けていく。2位のベッテルも一回タイヤ交換の多かった3位アロンソとは15秒近い差があり、上位は各車単独走行でレース終盤を迎えた。
そして70周、バトンがトップで今期2勝目のチェッカー。出走通算200戦目をメモリアルウィンで飾った。またしてもと言いたくなる雨絡みの勝利。事実チャンピオンになった2009年以外の優勝は初優勝を含め、不思議なことに全て雨。コンディション変化への判断、その勝負所を見据えた走り方は健在、今回のレースでも十分に見せてくれた。次戦も雨天レースになる確率の高いベルギーグランプリなだけに、バトン連勝の可能性も期待できるパフォーマンスだった。
2位にはベッテル。今週末の苦しい流れを考えればその中での2位は満足できる結果だろう。3位はフェラーリのアロンソ。マシンの戦闘力は悪くなかっただけに、3位は少しもの足りないような結果だったかもしれない。タイヤ戦略も良いとは言えず、優勝したバトンに比べ1回多かった。さらにスピンやコースオフが多く、雨絡みのレースがマイナスに働いてしまったようだった。4位はハミルトン。レース中盤まで、勝利に一番近かった男のまさかの失速劇だった。しかし、仮にスピンや雨天タイヤへの交換が中盤になかったとしても、3回目のタイヤ交換でソフトタイヤを選択していたため、おそらく4度目のタイヤ交換はあっただろう。そうなった際に果たして3回タイヤ交換のバトンに勝てたのだろうか。たらればではあるが、そちらの争いも見てみたかったレース展開だった。
バトンの勝利で幕を閉じたハンガリーグランプリ。これから夏休みに入ってしまうのが惜しいくらい、レッドブル、マクラーレン、フェラーリ、上位3チームの実力が拮抗してきている。選手権ポイントこそ、レットブルのベッテルが2位以下に大差をつけてはいるが、シーズン序盤のレッドブルとベッテルの圧倒的な速さはもうない。選手権がこれほど一方的な展開ではあるが、そうは感じさせないほど、シーズン終盤に向け毎レース、楽しみは増すばかりだ。