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「わかりました。じゃ、失礼します」
賢治は私の手を取るとソファから立ち上がった
私もつられる様に立ち上がったけど部屋を出る間際振り向いてお辞儀をした
「だけど良かったな。さっきの電話の時、社長すっげ~怒ってたもんな
こんなにあっさり奈々子と付き合う事を許してもらえるとは思ってもいなかった」
それは私にも言える事だった
人気アイドルの彼女がただのOLだったら怒られると思ってたから
アイドルって大変なんだなぁ 誰と付き合っても周りを気にしないといけないんだから
「遅くなったし、送るよ」
「いいよ、終電までまだあるから」
「俺が送りたいんだよ」
「いいってば。さっき社長さんも言われたでしょ。大っぴらにするなって」
私と賢治が送る、送らないでもめてるとビルの前に1台の車があった
誰かと思ったら谷口さんだった
谷口さんってわかった途端私は身構えてしまった
「あっれ~。どうしたの?こんなとこに」
「先細、社長から電話がありました。賢治さんと橋本さんが事務所に来るから
帰りは送ってくる様にって」
谷口さんはそう言うと車の後部座席のドアを開けた
「せっかくだから送ってもらえよ」
「でも谷口さん、私のマンション知らないでしょ」
「大体の道は知ってるよ。奈々子が簡単に案内してくれたらそこらへんのタクシーより詳しい
それに大っぴらにしちゃダメなんだろ。二人でタクシーに乗るよりいいと思うんだけど」
そんな私達の会話を運転席で谷口さんは無言で聞いていた
「じゃぁお願いします。あの…。新宿駅の東口にお願いします。そこから歩いて
15分位ですからそこからは歩いて帰ります」
「それじゃ意味ないじゃんか。マンション前まで送るよ。東口まで来たら細かいとこ
谷口に言えば?」
煙草を呑気に吸いながら賢治は半分呆れながら私に言った
「では新宿の東口まで行きますからその先は教えて下さい」
谷口さんの言葉を合図に車は走り出した