そのまま2人は向かい合って座り、
正面から改めて浩之を觀ると美奈は身体を固くした。
それを観た浩之はニヤリと笑い、
「そう固くなんなって。
俺はただ美奈に会いたかっただけなんだからさぁ。」
「うそよ。貴方がそんな理由で別れた女に連絡するとは思えないわ。
お金?だったら無駄よ。私はただの主婦なんだから。」
「ひでぇ。久しぶりに会った元恋人にそんな事よく言えるな。
そんなんじゃねぇよ。」
美奈は浩之の言葉を信じなかった。
いつもその手で財布からお金などを抜き取られていたからだ。
どうせ、今回もお金の事だろうと、
こっそりと美奈はへそくりを銀行から下ろして来ていた。
そうしたら浩之から思いもよらない言葉か出てきた。
それは美奈を震え上がらせるのに十分な言葉だった。
「香ちゃん。いや、『香』と呼ぶべきかな?あの子俺の子だろ。」
「…・!」
何故判った?顔立ちから?それとも父親としての直感?
いや、この男に父性などあるはずがない。
美奈はどう答えればいいか迷った。