美奈は夏が嫌いだった。
ギラギラと照りつける太陽が
自分を溶かしてしまいそうな錯覚を覚えるのと、
すでに過去の男となった『彼』の事を思い出すから。
つばのひろいしろい帽子で
太陽の光から視線を避ける様な仕草をすると、
ため息をつき美奈は今の夫の実家へ向かう為車へ乗り込んだ。
自宅から夫の実家までは高速を使えば
1時間で到着するはずだった。だが、お盆ということもあり、
高速は渋滞しており予定より遅く到着する事になりそうだった。
美奈は一旦、SAへ車を入れると飲み物を買いに売店へ足を向けた。
ほとんどが家族連れで、美奈も
娘の香を夫と先に行かせるのではなかったと
後悔した。だが義父や義母が香に早く会いたがっていたのは
知っていたのでしょうがないと心の中で首を振った。