何事もなかった様な朝食の時、
夫の武が香ににこやかに突然聞いた。
「香は兄弟が欲しいかい?」
「うん。お兄ちゃんがいい。」
無邪気に答える香に武は笑いながら、香の頭をなで、
「それは無理だなぁ。弟か妹だな。な、母さん。」
美奈は昨晩の事もあり、
武を凝視しながら箸を置きしばらく答えなかった。
「ママ。香にも弟か妹が出来るの?」
子供を使ってまで子供を作ろうとする武の心がわからなかった。
だが、香が袖を引っ張りながら聞いてくるので、
無理やり笑顔を作りながら、
「そうね。香が良い子にしてたら出来るかもね。」
「うん。香、良い子にしてるっ。
だから弟か妹が欲しいなぁ。ねぇったら。」
「わかったからお行儀良く、ご飯を食べなさいね。」
義母はくすくすとその様子を見ていたが
義父は憮然とした表情で黙々と朝食を取っていた。