After15-20 years -3ページ目

繋いだ手を離さない

ベッドに入り、
 彼女を優しく抱き寄せ、
 お互いの温もりを確かめ合うように、
 優しく抱き合いながら、
数えきれぬほどの愛の言葉をささやくたびに、
 唇を優しく軽く重ね合った。


いま何が大切なのかを、
 これから何が大切になっていくのかを、
置かれている立場や、
 絡みつくようなしがらみを気にすることなく、
想いのままに伝え合った。


お互いの名前を何度も呼び合い、
力一杯に抱き合い、
ほどけぬほどに、
 心だけが絡みあった夜。

模索

いつも通りに、
 朝から何通ものメールをやり取りをし、
いつも通りに、
 仕事のアドバイスを求め合い、
いつも通りに、
 プライベートなことを話し、
最後には
 おやすみコールの毎日。


表面的には何も変わらない日々。


ただ、
休みの日に朝から晩まで、
 2人っきりで過ごしたり、
お酒を飲みながら、
 甘い言葉をささやきあったり、
湧き起こる感情に押されて、
 唇を求め合うことは、
きっと、しばらくは、

いや、

たぶん、もう、

 ない・・・だろう。


仕事では、
 今まで以上に深い信頼が生まれ始めているけれど。

手探りで、
 新しい関係を模索し始めている・・・。

弱い自分

彼女の一言一言に、
 一喜一憂し動揺している自分。


夜になると、
 不安定になっている自分。


彼女の存在が、
 自分をいかに支えていたのか、
改めて気がつく。



こうしていると、
 はっきりと見えてくる自分の弱さ。



これからは、
 どっしりと構えていよう。
どんなことがあっても、
 動揺しないように、
しっかりと、
 両足で踏ん張っていよう。


見えないものを、
 自分の感性だけを根拠に信じ続けることが、
 こんなにも辛いということも、
初めて知った・・・。

改めて気づいたこと

人を好きになることが、
 こんなにも自己中心的な思考回路に陥るのかを、
この歳になって、
 改めて気づいた。


離婚と同時に
 僕と、距離と時間をおくという、
彼女の辛い決心を、
 敢えて選んだ気持ちを、
理解しながらも、
 尊重できないでいる。


なぜなら、
 彼女にとって僕が必要であると、
 信じているから。


それ以上に、
 僕にとって彼女が必要だから。




必要なら、
 奪えばいい・・・。


何もかも失っても、
彼女が必要だというのなら、
全てを投げ捨ててでも、
 彼女を奪えばいい・・・。


たとえ、
 その行動が彼女に受け入れられなくても・・・。

自信はないけれど・・・

「あなたを包み込めるのはきっと僕だけだよ。」と、
 抱きしめてささやくと、
「すごい自信だぁ。」と、
 意地悪い眼をして言うけれど、
自信なんかではないんだ。


何度も言うけれど、
 あなたに逢うために生きてきたから。
そして、
 あなたを包み込むために生きているから。


あなたの自己分析は、
 勝ち気で、
 自己中で、
 わがままで、
 気分屋で、
 泣き虫で、
 甘えん坊で、
 依存心が強くて、
 感情の起伏が激しくて、
 昨日と今日では言っていることが違っていて、
 それからそれから・・・
でもね、
 こんな事は、
  僕には全然関係ない。

確かに、
 そうかもしれない。

でもね、
 僕が大切にしているのは、
  そんなことではないから。
それ以上の魅力をたくさん持っているから。




だから、
 あなたの全てを包み込めるのは・・・僕だけ。

お買い物

朝から、
 新居で使うものを、
 一緒に買いに行って来た。


僕の車の方が、
 荷物をたくさん積めるから。
特に電化製品は、
 何がいいのかわからないと言うから。


午前の買い物が終わり、
 居間で2人きりの昼食。
僕が落としたコーヒーを、
 落ち着いて飲むのは初めて。


夕方の買い物は、
 細々した日常品がメイン。


その後しばらく、

 片付けを手伝っていた。




あっさりした別れに耐えきれなくて、
 彼女を抱きしめて、
 たくさんの想いを伝えた・・・。
心を閉ざしかけている彼女に。

旧居の掃除

夕方に来た突然の電話。


「ごめんなさい。
 でも、頼れるのはあなたしかいないから。」
掃除グッズを持って、
 すぐに飛んでいった。


たぶん大半が、
 楽しくて仕方のなかった日々。

この部屋で10年間も営まれてきた、
 彼女の日々。


「僕の特殊技能を見せるいい機会だから。」
「あなたは、何でもできるのね。」

知らない人が見ると、
 まるで恋人か夫婦のように、
笑いながら、
 手を動かしていた。




その後は、
 いつものように深夜のドライブ。


あと何回、
 こうして手を繋ぎながら、
 甘い言葉をささやきながら、
 この道を走れるのかなと思いながら運転していた。


途中で車を駐め、
 懸命に走り続け、
 疲れすら感じなくなっている彼女を、
 胸に抱き寄せ、
 頭を優しく撫でていた。
時折キスをしながら。


「お願い。
 もう少しだけ、私を支えて。
 本当は、
 1人で全てやらないといけないこと、
 分かっているけれど、
 もう少しだけ、あなたが必要なの。」 
「期間を限定なんかしなくていいんだよ。
 いつまでも支えるって言ったでしょ?」


彼女の揺れ動く心が伝わって来た・・・。

荷造り

全然片付かない・・・の、
 メールですかさず電話。


「よければ手伝うよ。」
「お願い・・・。」


ゆっくりできないであろう彼女を思って、
 途中でお茶を買っていく。


ざっと見ると、

 彼女1人では、
 とうていまとめられない量。


段ボールを組み立てて、
 ガムテープで補強して、
大切な食器を新聞紙でくるみ、
 丁寧に段ボールに入れていく。


「さすがだね。
 手際がいいね。
 私1人なら、
 二時間以上掛かることなのに・・・」と驚く彼女。


それから、
 台所に立ち、
 キッチン周りの掃除。


「もう大丈夫だから。
 後は1人でできるから・・・」と彼女。


別れ際は
 「おやすみなさい」のキス。

優しい口づけ

彼女がバツイチとなって、
 新たな生活を始め、
誰とでも恋愛ができるようになっても、
 1人寂しい夜を過ごそうとも、
 どんな生活を送ろうとも、
そんなことで、
 僕達の関係は変わらない。


もし、
 僕達の愛が実を結ばなかったとしても、
その原因は、
 彼女の環境の変化ではなく、 
僕の修行不足。
 男としての魅力不足。


彼女が結婚生活を継続させていたからといって、
 この愛が続くとは限らないから・・・。
僕もシングルに戻ったからといって、
 この愛が続くとは限らないから・・・。




「口では、
 一生かけて守り抜くから・・・と言っても、
 こんな弱さでは、
  大切なあなたを守りきれないってわかったんだ。
  自分の弱さに改めて気づいたんだ。
  まだまだ子供だっていうことにもね
  だから、もっと強くなるね。」と言ったら、
「うん、お願い。
 それなら、もっと強くなって、私を守って。」と
彼女は、
 微笑んで口づけをしてくれた。


 とけていきそうなほどに優しい口づけを・・・。

新居の掃除

会社帰りに、

 掃除機と雑巾を持って、
 2人で掃除に行った。


広くて、
 築年数の割にはとても綺麗な部屋。


これが僕達の部屋になるのなら、
 もっとウキウキしたのかも知れないけれど、
冷静に、
「1人ここで住む、
 彼女に優しくしてね!」と心の中で思いながら、
掃除機をかけていた。


掃除が終わると、
 部屋の灯りをすべて消して、
 薄暗い部屋の壁に寄り掛かり、
抱き合っていた。




その後・・・
 2人きりになれる場所に行き、
お互いの体温に包まれて過ごした。


僕の胸に顔を載せる微笑む彼女を見ながら、 
 彼女の髪を優しく掻き上げ、
  ささやくような静かな口調で、
   お互いの偽りのない想いを伝えながら、

抱き合っていた。

やがて、

 抑えきれない想いのように、
 お互いの名前を何度も呼びながら、
 「愛している」と何度も叫びながら、
                激しく愛し合い求め合った。