旧居の掃除 | After15-20 years

旧居の掃除

夕方に来た突然の電話。


「ごめんなさい。
 でも、頼れるのはあなたしかいないから。」
掃除グッズを持って、
 すぐに飛んでいった。


たぶん大半が、
 楽しくて仕方のなかった日々。

この部屋で10年間も営まれてきた、
 彼女の日々。


「僕の特殊技能を見せるいい機会だから。」
「あなたは、何でもできるのね。」

知らない人が見ると、
 まるで恋人か夫婦のように、
笑いながら、
 手を動かしていた。




その後は、
 いつものように深夜のドライブ。


あと何回、
 こうして手を繋ぎながら、
 甘い言葉をささやきながら、
 この道を走れるのかなと思いながら運転していた。


途中で車を駐め、
 懸命に走り続け、
 疲れすら感じなくなっている彼女を、
 胸に抱き寄せ、
 頭を優しく撫でていた。
時折キスをしながら。


「お願い。
 もう少しだけ、私を支えて。
 本当は、
 1人で全てやらないといけないこと、
 分かっているけれど、
 もう少しだけ、あなたが必要なの。」 
「期間を限定なんかしなくていいんだよ。
 いつまでも支えるって言ったでしょ?」


彼女の揺れ動く心が伝わって来た・・・。