(第7回)臭し!棒便系
慣れない土地に行くと、なぜか便秘になりがちである。僕が大学時代、一ヶ月ほどネパールに貧乏旅行に出かけた時のこと。
「フッ」と記憶をたどると、かれこれ十日ほど用を足していないことに気付いた。毎日ちゃんと食べているのに、便が出ない。腹が重くて苦しいし、無理矢理にでも出してやろうと、僕は便器にまたがった。
ネパールでは一泊二百円ほどの安ホテルに泊まっていたので、便所もお粗末なものだった。
和式の便器と同じ形をしていたが、ウンコさんはカンカンにくんだ水で流すという、半水洗みたいな便器だった。トイレットペーパーなどという高級なものはなく、これもカンカンの水で手洗いする。いわゆる不浄の手(左手)で直接お尻を洗うのだ。インドと同じである。こういうトイレが待っているのだから、抵抗感から便秘になるのもうなずけるが、やはり十日もしないのは具合が悪い。
僕は真っ赤っかな顔をしながら、きばりにきばった。
出て来たもんが「おぎゃぁ」とかいいだすんじゃないかと思うほどきばりきった末に、やっとウンコさんが出た。これが人のものかと思えるほどゴツかった。丸太ん棒ほどもあるその太さを見て、自分はケツの穴の小さな男ではない、としみじみ思った。
さて、お腹はすっきり牛若丸のように身軽になって、いざビッグな彼を流そうとしたが、あまりのボリュームのため、便器の穴にフンづまってしまった。十日も腸につまっていたかと思いきや、今度は便器につまるとは、
「なんとつまるのが好きな奴だ」
と、つまらぬことを考えながらも、はて、どうしたものかと、便器をまたいで立ち往生…。
このままトイレを出てしまってもよかったが、やはり自分のケツは自分で拭こうと、何度も水を流したが、根元がガッチリつまっているので、便器内は洪水のようになってしまった。
ええい、ままよ。こうなりゃ自分の手で穴を通してやる!
本来なら不浄の左手を使わなきゃならなかったが、その時左手には切り傷があったので、バイキンが入ってはたまらんし、思い切って右手をウンコさんの中に突っ込んだ。ウオーっと、やけになって引っ掻き回したら、ズボッといって穴があき、彼は見る間に流れ去った。さらばウンコさん・・・。
そのあとすぐにシャワーを浴び、これでもかというほど体を洗ったが、どうしてもにおいが取れない所があった。
右手首に巻いたミサンガである。
ミサンガというのは、当時若者の間で流行った、願いをかけて結ぶ、紐を編んで作られた腕輪のことである。ミサンガが自然に切れた時、願いごとが叶うのだ。が、あまりに臭いため、結局自分で切って捨ててしまった。
当然、願いごとは叶わなかったが、自分の運命は自らの手で切り開かなければならないということを、僕は学んだ。
2002年2月16日号掲載

武蔵坊弁慶
鎌倉初期の僧。源義経に従い、安宅(あたか)の関での難を救い、
衣川の戦で全身に矢を受けて立ちながら息絶えたと伝えられる。
| 追記・・・当時片想いをしていた女の子と結ばれますように!…とミサンガに願いをかけていたのですが、自分で切ってしまったので当然、叶わず…(泣)。臭し!棒便系 = くさし、ぼうべんけい = むさしぼうべんけい = 武蔵坊弁慶…。強引なダジャレですが、一部でかなりウケました(笑)!! 牛若丸、立ち往生、といったところで弁慶に関連づけています。 |
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