(第26回)志や、楽…
皆さんは「ストリートダンス」をご存知だろうか?
簡単にいえば、「若い人が踊る今風のリズミカルなダンス」である。ヒップホップ、ブレイクなど分野は多岐にわたり、NYなどの街頭パフォーマンスから発生したことから、ストリートダンスと呼ばれる。
このストリートダンス専門のスタジオが京都の十条通りにあり、百人以上の生徒さんがそこでダンスを習っている。
若い人、特に女の子が多い。が、客観的に見てこの不況の時代、もっとも将来に役立たない習い事…ともいえるだろう。ある程度の瞬発力と体力を要するので、年をとってまで続けられる趣味にはなりにくい。八十歳のおばぁちゃんがブレイクダンスを踊ったら、直後に病院行きだろう。
また、仮にダンスを極めてプロになったとしても、ダンサーのみの仕事で食べていけるのは、日本全国を見渡してもほんの一握りである。ではいったい、この浮世離れしたダンスを、
「何ゆえに踊るのか?」…。
「そこにリズムがあるからさ…」
と、クサいことをいう若者はいない。答えはだいたい予想通り、
「楽しいから。」
である。
踊ると楽しいから、踊る…そう聞くと、何となく安易で軽薄な気もするが、実際にダンサー達の練習風景を見ると考えは変わる。特に今は、十二月の八日に京都会館で行われるダンスイベントに向けて、必死に練習を繰り返している最中でもあるので、その内容も厳しく、鬼気迫る時もある。(ちなみに僕は、そのイベントの映像担当として、最近毎日、生徒さん達を撮影しているのだ。)
ダンスの内容は、選曲から始まり、踊りの統制、構成のしっかりしたものが多い。と同時に、「踊りを楽しむ」感覚に至るまでには、かなりの努力を要すると想像させる。最近の若者はドライな表現を好むので、「努力」「苦労」などという暗いイメージの言葉を嫌うが、やはりそれはそこにある。
冬のスタジオがサウナ化するほどにレッスンで汗をかき、夜遅くまで自主練…やっとこさ踊りの型を覚える。しかし型通りに踊るだけならロボットにも出来ると、自らが踊りを楽しみ、それを見る人に伝える工夫を追究する。
怒られて泣き、壁にぶつかって泣き、それを越えて嬉し泣き。そうして「舞台」に立ち、客の拍手をもらい、ようやく「踊る楽しさ」を感じるのである。これは、勝利を得たスポーツ選手、作品を完成させたアーチストにも通ずる感覚である。
楽しては得られない、お金にはかえられない何かのために、若い力をぶつけるのであり、その真剣な姿には素直に感銘を受ける。
ちなみに京都のストリートダンス界を引っ張り、今回のイベントの主催者でもある人物は、なぜ踊るのか?の質問に、
「それが自分を表現できる唯一の手段だから」
と答えた。
彼の踊りを見ていると、僕も楽しい気分になる。どうせなら、八十歳まで踊れるストリートダンスを開発して、この体育会系アートを幅広い層に普及させて欲しいものである。
2002年12月1日号掲載

写楽
江戸後期の浮世絵師。生没年未詳。
| 追記・・・ストリートダンスを習うと「リズム感」と「バランス感覚」が養えると僕は見ています。さらには音楽センス、ファッションセンスがアップし、それら全てがダンスを辞めた後でもその人のスキルとして残ると思います。…10年間このダンスグループにつきあってみてそう思います。(2008/7月) |
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