フットハットがゆく! -115ページ目

(第30回)食うや!?

 
 最近はスランプだ…。文章を書く事に対する、疑問や恐怖がまとわりつく。万人に受けるのは無理と分かりつつも(そもそも何人くらいの人が「フットハット」を読んでいるのだ?)、一部の人には期待もされているので、やはり真剣にアイデアを練る。
 所詮、無償の書き物だし、そんなに神経をすり減らすことも無かろうにと自分で思う時もあるが、そこはけっこう根が真面目なので、やはり真剣に悩む。

 悩みに悩んで結局、原稿の締め切り日を遅らせてしまう。これはよくないことだ。不真面目なことである。真面目が生んだ、不真面目といえよう。


 話は変わるが、「真面目」といえば、僕は食べ物を残すのが嫌いだ。皆でご飯を食べた場合など、だいたい僕が余ったものを平らげる。
「こいつは何でもよく食べる、量さえあれば味はどうでもいいのだ」
 …みたいに思われがちだが、単にもったいないと思って無理から食っている場合が多い。定食のご飯を「大盛り」で頼んだくせに、そのご飯を残すやつの性格がうらやましいよ。

 もったいないのが嫌いな真面目な僕であるが、冷蔵庫のものはよく腐らせてしまう。たまに自炊するが、余った食材の存在をすっかり忘れてしまうのだ。これは不真面目だ。バチあたりだ。

 腐ったなら捨てればいいのだが、これをなかなか捨て切れない。カレーに使った残りのニンジンなど、二、三ケ月くらい経ったものは、ひからびてご老人のちんちんみたいになってしまう。到底食べられそうにない。
 しかし、食の世界では腐ったもの、発酵したものから新しい飲食物が生まれることは多いし、「寝かす」ことにより、味が熟成することもある。このちんちんも我慢して一年くらい放っておけば、新手の化学反応を起こして、意外と美味になるかもだ。

 そうして一年経ったものは、黒ずんで何かの糞の様に…これ食うや?食わざるや?…「南無阿弥陀仏…」と念仏を唱えながら、それを口に入れてみる(酒に酔って変な勢いが付いている時を利用する)。
 このように、自身の好奇心を大切にするという点では、僕はたいへん真面目だ。

 翌日下痢になり、約束事をキャンセルしたりするという点では、とても不真面目だ。


 とにかく自分の中には、真面目と不真面目とが同居している。

 真面目がゆえに人一倍ストレスが溜まり、必要以上に酒を飲む。その結果、泥酔して裸踊りをしたりゲロを吐いたりするのは、どうみても真面目な姿ではない。

 この「フットハット」の文章にしても、表面的にはとても不真面目な内容、アホな表現方法だったりするが、当の本人はいたって真面目…真剣に考えた末の文章なのである。

「てめぇの文は裸踊りと一緒か?」
 といわれると、そういうつもりはない。

 …言い訳がましいところが、スランプの証拠でもあったりする。

2003年2月1日号掲載 


空也
空也
平安中期の僧。空也念仏の祖。諸国を巡歴して南無阿弥陀仏を唱える。

追記・・・かなりバカげたエッセイですが、割と気に入っています(笑)。ちなみに冷蔵庫の中に色々なものを放置する癖は、いまだに治っていません…。(2008/8月)


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(2003/11)
石井 義長

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