フットハットがゆく! -112ページ目

(第33回)見よ、ジャンケン児

 
 現在の地球の人口は約62億人。そこでふと、しようもないことを考えた。この人数でジャンケンの勝ち抜き戦を行ったとすると、いったいどんな人が優勝するのだろうか?

 だいたい三十二、三回連勝すれば、地球上でただ一人の負け無しの人物となる。まぁ実際に62億人で勝ち抜き戦を行うのは無理であるが、逆をいえば、出会った人にジャンケンを申し込み、三十三連勝したら、地球一の強運者と同等の運の持ち主ということになる。

 ということで今日、自分の中だけで「ジャンケン世界選手権」を開催してみた。仕事場で一緒になった人をつかまえて、ジャンケンを申し込む。相手は何故のジャンケンかは知らないのだが、僕の中では自分の「強運度」を量る大事な大会である…。

 一人目は見事に勝った。

 が、次の人にあっさり負けてしまった。けっこう気合を入れていたのだが、二人に一人位の運しか自分にはなかったのだと思うと、少しショック…。


 まぁ実際には、ジャンケンというのは運だけでは決まらない。

 小学校五年か六年の頃、クラスの男子で誰が一番ジャンケンが強いか、というのを決めたことがある。その頃僕のいた学年では、昼休を利用して毎日のようにクラス対抗の野球が行われていた。試合は休み時間の終了とともに終わってしまうので、先攻が圧倒的に有利であった。先攻を取るためには、代表者がジャンケンで勝たねばならず、そのために、クラス一ジャンケンの強い奴を決定する選手権が開かれたのだ。その時も、僕は二回戦か三回戦で負けた気がする。

 優勝したのは、運動音痴のガリ勉君…。それ以来ジャンケンのためだけにグランドにかり出され、試合が始まると教室に戻って本など読んでいた。ガリ君はかなりの高確率で勝った。彼のジャンケン法によると、相手の性格や過去のデータを参考に、自分の出し手を考えるのだそうだ。奥が深いね。
 ガリ君は頭脳派ジャンケニストとして、我がクラス中の尊敬を集めることとなった。勉強が出きるだけなら単なる嫉妬の対象にしかならないが、それが人々の役に立った時、嫉妬は尊敬へと変化するのだ。

 しかし、試合に出ない奴がジャンケンだけするのはおかしいと、他のクラスから苦情が出た。かなりもめた結果、コイントスで決めようというところに落ち着き、注文の多かったジャンケン児の栄光の時は、風のように去ってしまった。

 ジャンケンの癖を自分に当てはめて考えてみると、僕はたいがいグーを出す。グーはパンチを突き出した形なので、勝負ごとにおいて、とても勇ましい感じでよいから好き。チョキを出すとツキユビしそうだし、パーはなんかクルクルパーみたいで音感が嫌い。だからグーばかり出す。相手がカニかエビなら、連勝街道まっしぐらなのだが…。

2003年3月16日号掲載 


宮沢賢治
宮沢賢治
岩手県出身の詩人・童話作家。童話「注文の多い料理店」「風の又三郎」など。

追記・・・見よ、ジャンケン児 = みよじゃんけんじ = みやざわけんじ = 宮沢賢治。宮沢賢治のダジャレ登場は「(第12回)みな騒げ、ぢ!」以来二度目。あなたも、自分が世界一かどうか試したければ、ジャンケン33連勝目指して頑張って下さい!


注文の多い料理店 (講談社青い鳥文庫—宮沢賢治童話集 (88‐1))注文の多い料理店 (講談社青い鳥文庫—宮沢賢治童話集 (88‐1))
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