フットハットがゆく! -104ページ目

(第85回)寄り道

 
 トイレに行くと、最近おなかの調子が悪かったせいもあり、ずいぶん便器が汚れていた。用を足した後、トイレクイックルを買おうと思って近所のコンビニに行ったがその店には置いていなかったので、何も買わずに出た。
 僕はけっこう気が小さいので、何も買わずに店を出るのが苦手である。目的のものがなくても、何かしら買ってしまう。それでも今日は何も買わずに出た。レジのバイトの女の子がとても無愛想な子で嫌いだったので、その子の時に買い物をしたくなかったのである。
 
 レジの子が僕好みのカワイコちゃんだったりすると、いらぬものまで買ってしまう。

 昨日など歯磨き粉を買いにいった時、そのカワイコちゃんがいたので、モンダミンからハンドソープ、デオドラントや洗顔フォーム(普段は買わない)まで買ってしまった。
 カワイコちゃんといっても、とびきり可愛いわけではない。いつも眠そうなスッピン顔で目をこすっていて、髪も真っ黒。でも僕はお化粧の濃い茶髪さんが嫌いなので、その子はおおいに「あり」なのである。
 かたことの日本語をしゃべる。そのかたことさと、おっとりめの眼が、なんとなくキュンとさせるのだ。

 たとえ料金どおりの小銭が財布の中にあっても、おつりをもらうようにお札を出す。いつもその子は僕の目を見て
「ありがとうございました」
 といってくれるので、おもわずこっちも
「ありがとう」
 っといってしまう。その子がレジにいる時には、並ぶ時にこつがいる。下手に列の後ろに並んでしまうと、隣のレジに不細工ねーちゃんが来て、
「コチラのレジどんぞ!」
 と無愛想な声でめんどくさそうにいうのである。
「わしはお前のレジでは買いたくない。たとえ並んで待たされても、こちらのカワイコちゃんのレジで買いたいのだ!」
 と、いうほど気は強くないので、すごすごと不細工ねーちゃんの方で会計する羽目に…。そういう時は買った物まで憎らしくなってしまうから要注意だ。そんなねーちゃんから買った洗顔フォームでは、顔を洗う気になれん。

 ということで、カワイコちゃんのレジに並ぶタイミングを計っている場合と、エッチな雑誌を買うか買うまいか悩んでいる場合の男は、店内でとても挙動不審になる。

 さて、トイレクイックルを求めて今度はスーパーに向かったが、途中で気が変わり、銀閣寺の土産物店街の方へ向かった。前から「孫の手」が欲しかったので、それを探した。
 なぜ急に孫の手のことを思い出したかというと、無性に背中がかゆくなって来たからだ。ついでに耳かきも買った。いろんな種類があったが、柄の部分にお地蔵さんの人形がくっついたものにした。人形の表情はそれぞれ微妙に違ったので、十本ほど取り出して真剣に吟味した上、ひとつを選んだ。お店のおっちゃんは最初全部買うのかと思ってニコニコしていたが、一本しか買わないとわかってがっかりしているように見えた。

2005年5月16日号掲載 


藤原頼通
藤原頼通 992~1074
藤原氏全盛時代を築いた平安時代の公卿。平等院鳳凰堂を造営。

追記・・・「寄り道」という副題で、寄り道的脱線話題の内容としたが、人物との掛け合わせがありません。いわゆる「ひとやすみ」=一休…と同じパターンで「よりみち」を展開させようと思っていたのですが、結局この回以降「寄り道」パターンは登場しませんでした…。


藤原頼通の時代—摂関政治から院政へ (平凡社選書)藤原頼通の時代—摂関政治から院政へ (平凡社選書)
(1991/05)
坂本 賞三

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