『知ってはいけない薬のカラクリ』 谷本 哲也・著

 

 製薬会社にとって処方薬はかなり儲かる商品です。

年間の市場規模でみても、OTCと呼ばれる一般用医薬品、要指導医薬品が約8000億円に対し、処方薬、すなわち医療用医薬品は約10兆円です。

そのため、多くの製薬会社が市場で熾烈な競争を繰り広げています。

新たな特効薬が開発されたとしても、1社のみがその薬を販売して長い期間にわたって大儲けできるほど甘くはありません。

競合する他社が、類似の同種同効薬を作って競争に参入してきます。

第1章でご紹介したノーベル賞の技術が使われたオプジーボも同様で、他の会社が類似の薬を作って、薬を使う患者の奪い合いが製薬会社の間で始まっているのです。

 新薬には特許期間があり、ある程度の期間は先発薬として技術が保護されます。

しかし、薬が市場に出てから平均で10~15年経つと特許切れになります。

その結果、ジェネリックと呼ばれる後発薬品が、先発薬の半分以下の値段で発売されるようになるのです。新薬を販売する製薬会社がお金儲けをする戦略は、特許期間で守られているうちに、いかに市場を広げてたくさんの患者に薬を使ってもらうかがカギになります。

(略)

 製薬会社のコマーシャルの常套手段として行われるのが、「新薬」イコール「素晴らしい薬」という刷り込みです。

患者の治療を進めるのに、本当は昔ながらの安い薬で十分な場合もめずらしくありません。

しかし、それでは製薬会社の儲けがほとんどなくなってしまいます。

そのため、古くても安い薬がどれほど素晴らしいか、お金をかけて宣伝する奇特な会社はまず見かけないのです。

 以上のような製薬会社の宣伝活動スタイルは、日本に限らず世界中で行われており、もちろん合法的なものです。

また、専門性の高い医学知識を、一部の専門家から一般の医師に講演会を通して普及させること自体は必要であり、なくすわけにも行きません。

 製薬会社が、新薬の臨床試験のスポンサーになり、今までにないよい薬を作り、よい研究結果を出し、診療ガイドラインや学会、大学教授に影響を与えて、よい薬を世界に広める。

製薬会社のそうした一連の活動は、医療や経済を発展させ、医学を進歩させる原動力にもなるという側面も確かに無視はできません。

 そうかと言って、製薬会社の宣伝活動が行きすぎると、患者の人権を無視し、商業主義が優先して、効果のない薬や副作用の多い薬がお金儲けだけのために使われてしまう危険性も出てきます。

 

製薬会社と言うと、患者を救うために薬を作っているイメージが強い。

 

でも、薬を売ることで利益を得るという面では、他の産業と何ら変わらない。

 

利益を上げるには、消費者を増やす必要が出てくるなガーン