『骨盤にきく』 片山 洋次郎・著
足腰が丈夫な人は健康だ、腰の据わっている奴は決断力があるなど、腰というのが人間にとって要になる部分だというイメージはあると思います。
骨盤の動き方は、身体全体の健康はもちろん、心の状態とも密接につながっています。
私は三十年近く、整体を通じて数多くの人を観てきたわけですが、現代人の疲れは慢性化して抜けにくい。
仕事や生活の質が、肉体労働より頭脳労働に偏っていることもあるのでしょう。
何か特定の疾患があるというよりは、何となく体調がすぐれない、気分が重いという人が多いのです。
もちろん、はっきりとした痛みや症状を持っている人もたくさん来るのですが、総じて思うのは、”骨盤の弾力”が失われてきているということです。
ここ十年、その傾向は加速度的に強まっている。
それは若い人や子どもにも言えることで、ちょっとみていて驚くくらいです。
「骨盤が動く」と言うとびっくりするかもしれませんが、本来骨盤というのは、かなり開いたり閉じたり、上がったり下がったり、前後に傾いたり、ねじれたりもします。
朝と夜では違うし、季節によっても変化する。生理の前と後ではかなり違いますし、集中しているときと気が散っているときでは状態がまったく異なります。更年期や思春期にも大きく変化します。
身体は体内のリズムや環境の変化に応じて、常に自分で自分を調整しようとします。
それが一番端的に現れるのが骨盤の動きなのです。
私たちの骨盤の機能がどんどん落ちているいま、身体の内側の声をきいてみよう、骨盤の声に耳を傾けてみようという提案をしたいのです。
骨盤が本来のしなやかな弾力を取り戻すと、ずっと生きやすくなります。
身体の健康面においても、心の面においてもそうです。
身体に意識を向けることが少ないと、変化が起こっていても気付きにくい。
思っているよりも、身体ってその時々で変化している。
それが、今の現状を知ったり、良い方向に変えていくヒントになったりする