染めと織の万葉慕情97   竹取の翁の衣 | foo-d 風土

foo-d 風土

自然や芸術 食など美を 遊び心で真剣に

染めと織の万葉慕情97

  竹取の翁の衣

   1984/03/09 吉田たすく

 

 二年もの間染め織りの歌を読んで来ましたが、染め織り品を使って恋や

愛を詠(うた)っている事がおわかりいただいた事と思います。 

 

 今日は自分の着用した衣服をつきつぎに詠って自分の生活レベルをひけらかした歌を取りあげてみましょう。

 「竹取の翁(おきな)」という歌です。 平安時代に作られた「竹取物語」のとはちがいますが、平安以前に竹取りといって竹を取り、箕(み)、ざるから、おさなどを作ることを業として、村から村をわたり歩いた職業集団の人であったであろにうといわれています。

 

 昔ありき。 号(な)を竹取の翁といひき、というはじまりで、この翁、春三月岡に登り遠くを望むときに、春の野菜の吸い物を煮ている九人の乙女に会いました。今でいえば春のピクニックでバーベキューをしている九人の女の子といったところです。 百嬌(ひゃっきょう) たぐいなく、花止無し。

 愛くるしく、なまめかしさかぎりなく、花の如くうるわしい顔、姿、言葉で言い尽くすことができないといっています。

 時に乙女らを呼んで、「ここに来て菜をたくたき火の火をふいてよ」という。「よしよし」といって近づき、乙女らの座にまじわりました。ところがややしばらくして、乙女らは皆共に咲(え) み合っていうには、「たれがこの翁を呼んだの」、と言うのです。

 とまどった翁は「思いがけず、たまたま神仙に逢(あ)い、美しい麗人に逢いましたが、なれなれしくしすぎまして、あいすみません。歌をもって罪をつぐないましょう」と歌をよみました。

 ばかにされた翁は、自分の若いころにこんなにすばらしい衣服を着て乙女たちにもてた事を歌でしめすのです。 この歌の中にたくさんの染め織り品が詠われているのには驚きます。

 大変長い長歌ですので三回にわけて読んでみましょう。

 

 緑子の 若子(わくご) が身には たらちし 母の懐(うだ)かえ 襁 (ひむつき)の 平生(はこ)が身には 木綿肩衣(ゆうかぎぬ 純裏(ひつら)に縫ひ着 頚着(くびつき)の 童児が身には 結類(ゆいはた)の 袖着衣 着しわれを---

 

 みどりごの時分には、母にだかれてかわいがらこうぞ織りの袖無しを

、総裏つきに縫って着せてもらい、髪を頭までたらした年に達すると、返しぼり染め(正倉院に残る染色品と同じ染め方)の袖のついた着物を着ていた私ですよ。

 

 これから青年期の衣服の歌が続きますが来週にまわします。

 

          (新匠工芸会会員、織物作家)