先日 当代きっての蕎麦名人の一人、阿部孝雄氏の箱根の竹やぶへいきました。
竹やぶ箱根店にいくのなら、まず、阿部孝雄氏と柏本店について少し触れたいと思います。
蕎麦好きならば知らない人はいない、当代きっての名人の一人、阿部孝雄氏。「手挽き、手打ち、石臼挽き自家製粉」を世に定着させた方で、亀有「吟八亭 やざ和」、明治神宮「玉笑 」、東長崎「手打蕎麦 じゆうさん」など数多くのお弟子さんを輩出され、まぎれもない現代蕎麦の功労者です。
20歳の時に池之端藪蕎麦で修行し、なんと22歳で柏駅前に「竹やぶ」を開店、当時、皆無に等しかった手打ちそばの打ち方を学び、また、柚子切り、芥子切り、蓬そばをはじめ五百種類以上の変わりそばを創作し、ただひたすらにそば職人としての道を猛進。
一時期、店を閉めた機会を利用して日本各地の旨いそばを訪ね歩いたそうですがそれがかなり勉強になったとか。
私が竹やぶを知ったのは、今から34年前。東京に住んで新規アパレルを立ち上げた年です。千葉県柏市に「竹やぶ」という凄い蕎麦屋があるというので、蕎麦好きとしては“行かなければ”と、時間を見つけて電車とタクシーを使って出かけました。
「竹やぶ」は、手賀沼を一望する小高い丘の上にあり、竹林に抱かれた大きな日本家屋。近くへ行くと大きなキノコや動物、色とりどりの置物やモザイク画が並び、見ているだけで面白く、お店に入る前から店主のおもてなしがはじまっている感じで、阿部孝雄氏の手作りの和と不思議な摩訶不思議なパラレルワールドです。
フランスのオートリーブという村にあるシェバルの城をモチーフにしたという古瓦を葺き、割れた皿やビー玉を埋め込んだアプローチや店の内装にいたるまで意匠のおもしろさに驚きました。
(シェバルの城はフランス リヨン。そこから、車で約1時間30分ほど南に下った場所に、「シュバルの理想宮(Palais ideal du facteur Cheval)」と呼ばれるたった一人の郵便局員が33年という長い年月をかけて作った「理想宮」という素晴らしい建造物があります。
そこは、先日私が訪れた三重県の山奥の広大な陶芸彫刻空間 「虹の泉」にも似た不思議な場所にも似ています。)
竹やぶの特別変わった建物や店内ですが、食べる蕎麦はとても美味しい。
しかし建築やオブジェの主張が強すぎて何を食べたかは斬円ながら記憶の中には残っていません。
美味い蕎麦で蕎麦通もよく通った「竹やぶ」と店主の阿部孝雄氏は、当時メディアでもよく取り上げられていました。
そして1993年 恵比寿店オープン(2003年に閉店)。蕎麦屋らしからぬ素っ気ないコンクリート外觀と、外からの光をシャットアウトした店内、前衞的なオブジヱの飾られた店内はとても変わった空間でしたが、恵比寿というロケーシヨンに合つているのか雜誌等のメデイアでよく取り上げられていました。
2003年六本木ヒルズオープンでは「竹やぶ」は破格の賃料で誘致されとても話題になりました(2011年に閉店)。
柏本店、恵比寿店、六本木ヒルズ店についてはそれぞれ数回行っていますが、2002年にオープンした阿部孝雄氏の手作り建築の箱根だけはまだ未到でした。
箱根店は広い敷地に店主「阿部孝雄」ワールドが広がっており、柏店同様に先代の店主「阿部孝雄」が割れた皿やビー玉を埋め込んだアプローチや店の内装にいたるまで意匠のおもしろさが感じられます。そして現在もまだ増殖中です。
次回 箱根竹やぶについて書きます。
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阿部孝雄氏
昭和19(1944)年、新潟県生まれ、十八歳の時、集団就職で上京。二年後、「池の端藪蕎麦」に入店。一年十ヵ月の修業の後、昭和41年、千葉県柏駅前に「竹やぶ」を開業。五年後、道路拡張のため移転を余儀なくされ、一年間休業。この間に手打ちを学ぶ。翌年柏駅前のビルのワンフロアで営業を再開。昭和57年、自然に囲まれた環境を求め、手賀沼を見下ろす丘へと店を移す。駅前時代から始めていた石臼による製粉をさらに深化させ、玄そばからの自家製粉に着手。その後も手挽きの田舎そばなど新たなそばの世界を打ち出してニューウェーブの旗手と評判を得る。平成5年に「恵比寿竹やぶ」を開店(平成15年3月閉店)、平成14年は三店目となる「箱根竹やぶ」をオープン。平成15年4月、六本木ヒルズに「六本木竹やぶ」を開店(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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蕎麦屋の歴史
蕎麦屋の発祥は豊臣秀吉の大阪城築城の時にさかのぼるといわれています。
江戸時代から現代まで続く老舗蕎麦屋の系列は、江戸そばの、「のれん御三家」と呼ばれる「藪」「砂場」「更科(さらしな)」があり、もうひとつ「長寿庵」の四系統あります。
その後、昭和になり蕎麦の世界を大きく開いて行った片倉康雄の足利・一茶庵、阿部孝雄氏の竹やぶ、高橋邦弘氏の翁グループ、服部隆氏の名古屋・沙羅饗などが時代の寵児となって蕎麦界をひろめました。
これらについては私のブログで「蕎麦の種類(2) 蕎麦屋の系列による分類」というタイトルで2016年7月10日に書いていますので、ご興味を持たれましたらご覧ください。
http://foo-d.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-829b.html
