染めと織の万葉慕情43   酒の歌(2) | foo-d 風土

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染めと織の万葉慕情43

  酒の歌(2)   1983/02/04 吉田たすく

 先週、大伴旅人の酒の歌を二首のせましたが、万葉巻三に酒をほむる歌が十三首ならんでいるうちの二首だったのです。

ほかにも、おもしろい歌があります。

 

昔、禁酒の法律を出した国がちょいちょいありました。 中国でも、魏の国の太祖が禁酒令を出した事があったそうです。酒好きの人たちは大変困った事でしょう。ところが、頭のいい人もいるもんで、酒という名前を変名して濁酒を賢人と呼び、黒酒を聖人といって酒をのんだ故事があるのです。 この故事をもとにして、旅人が詠んでいます。

 

 酒の名を

  聖と負(おほ)せし

   古(いにしえ)の

  大き聖(ひじり)の

     言のよろしさ

 

 酒の名を聖といって飲んだ、昔の大聖人の言葉の何とよいことよ、というのです。飲むなといってもだめだよ、なんとしてもごまかしても飲んじゃうから。

また、同じく中国の故事で、魏晋のころ七人の賢人が竹林に入って酒を飲み、琴を弾じ清談をした。 竹林の七賢といわれる故事にならって。

 

 古の

  七の賢(さか)しき

   人どもも

  欲(ほ)りせしものは

   酒にしあるら

 

 旅人は、ずい分の酒飲みだったのでしょう。 中国の賢人も酒ずきだよ、おれもそうだぞ、と歌っているようです。

もっときびしい歌があります。

 

 あな魏(みにく

  賢(さか)しらをすと

   酒飲まぬ

  人をよく見れば

    猿にかも似る

 

 ああ、みっともないやつ。偉そうにすまして酒を飲まない人をよく見ると、猿に似てるがな。 とうとう、飲まない人を猿にしてしまいました。

酒ってうまいです。 また、ほろ酔い気分のよい事ってありません。

 

 今(こ)の世にし

   楽しくあらば

    来む世には

   虫に鳥にも

    われはなりなむ

 

 今、飲んでいる。 こんなに楽しいんだもの。 来世は虫でも鳥でもなってもいい、もっと飲め飲め、俺はかまわん。調子よくなってまいりました。

 

 

 生者(いけるもの)

  ついにも死ぬる

   ものにあれば

  今(こ)の世なる間()

    楽しくをあらな

 

もう死んでもよい、酒を飲んで楽しければ・・・。

 

 大伴旅人はよほど酒が好きで、大変に酒のよさを謳歌したものです。 私のような酒好きは大賛成です。 旅人の気持ちがよくわかります。

 酒を飲みながら、こんな歌を読んでいるとやめられません。

      (新匠工芸会会員、織物作家)

 …………………………

 

いかにも 酒を飲んで微笑みながら話している時の 親父らしい文でした。

 

 私が子供の頃、毎晩来られる様々な客人と台所で円形の卓袱台を皆で囲み、楽しく酒を酌み交わす父の情景が甦ります。いつもこんな楽しい話を交えながら遅くまで談笑し、時には下手なマンドリンを弾きながらお客様や皆でロシア民謡やシャンソン、童謡等を歌いました。

 ちょっと飲み過ぎた日はそこで寝てしまい、寝室まで運んで行った事も何度か。

   遠く温かい 思い出です。