梅の花にて 想う | foo-d 風土

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 恋に病み

  けふ死ぬほどに

   いと熱き

  をとめにふらせ

     紅梅の露

 

あなた恋しさのあまり

 今日死ぬかも分からない私に

  どうか紅梅の露をください  

 

せつない恋心ですね

 

山川登美子の21歳の時の歌です。

 

 山川登美子と与謝野晶子は友人同士で共に歌誌「明星」を代表する詩人であり、2人は詩だけではなく、共に与謝野鉄幹に恋心を抱く、恋のライバルでもありました。

鉄幹が明星を立ち上げて二年目。登美子21歳 晶子22歳 鉄幹27歳

  紅梅は鉄幹の好む花

恋の歌と言ったら「乱れ髪」の与謝野晶子を超える人はいないと言われますが、この山川登美子の歌も負けてはいません。

上の歌を作る前に下記の歌を作ります。

 

 髪長き

  少女(おとめ)とうまれ

   しろ百合に

  額(ぬか)は伏せつつ

   君をこそ思へ

 

 髪の長い少女として生まれた私は

  白いユリの花に額を当てて

   あなたのことを思っています

 

 長い黒髪の少女が、下を向いて咲く白百合の様に、恥じらいながらうつむき加減で好きな男性のことを想い焦がれている様に感じました。

 百合はとても香りの強い花ですし、純潔などの比喩としても使われますから、若くて清潔な匂い立つ官能という印象さえ感じさせます。

 その激しい恋心を「額は伏せつつ」と恥じらいながら「君をこそ思へ」と心に秘めた恋の情熱を感じさせます。

 すごく情熱的で魅力的な女性だったのですね。 

 与謝野晶子ほど赤裸々ではなく、しっとりと恋を歌い上げる。

 僕はこちらの方が好きです。

 

 登美子は、与謝野鉄幹にこの詩を見せ、その後 「白百合の君」 と呼ばれますが、その「君」というのを鉄幹は気付いていたのでしょうか。

 気づいても女性遍歴の凄い鉄幹はのらりくらりと恋遊びを続けたことでしょう。

 僕など単純ですから、こんな歌を渡されたらすぐに恋してしまいそうです。

 

やがて。

 

 それとなく

  紅き花みな

   友にゆづり

 そむきて泣きて

   忘れ草つむ

 

 登美子は、与謝野鉄幹を自分の方に振り向かせようと晶子と争ったのですが、 紅き花である鉄幹を友人の晶子に譲ろうとする。

登美子は悲しみながら二人に背中を向けて、 ひとり自分は忘れ草を摘むというものです。

 

 そして晶子は鉄幹と結婚。

 

 傷心の登美子は別の相手に嫁ぎ やがて肺結核で29歳で亡くなります。

 …………………………

 

 花をみると

  様々な思いが浮かんできます

   花が誘っているのですね

 

 花というと奈良平安初期迄は、寒中に耐えて静かに咲き優しく香ぐわう梅のことでした。

 平安中期になると大きく煌びやかな桜に変わっていきますが、香りは微か。

万葉集には梅の歌がたくさん出ていますが、桜は少ないです。

 

 さあどちらが皆様 お好みでしょう。

 

 花よ咲け

  深き想いの

   熱き恋

  花びらに乗せ

   かの君のもと

       周之介